Globalization & Governance
Globalization & Governance to English Version Toppage
トップページ
HP開設の言葉
学術創成研究の概要
研究組織班編成
メンバープロフィール
シンポジウム・研究会情報
プロジェクトニュース
ライブラリ
研究成果・刊行物
公開資料
著作物
Proceedings
Working Papers
関連論考
アクセス
リンク
ヨーロッパ統合史
史料総覧

「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告
 

 このサイトは、2002年度〜06年度に行われた、文部科学省科学研究費学術創成研究「グローバリゼーション時代におけるガバナンスの変容に関する比較研究」(研究代表者:北海道大学教授 山口二郎)の研究内容・成果を記録したサイトです。
 アーカイブとして公開を継続いたしておりますが、各項の情報は掲載当時のままとなっておりますので、ご了承のうえご覧くださいますよう、お願い申し上げます。



プロジェクトニュース No.52
学術創成研究プロジェクトの終了に当たって
研究代表者 山口二郎
はじめに
 2002年度から5年間にわたって展開してきた学術創成プロジェクトも、2007年3月を持って終了しました。この5年間、本当に様々な分野にわたって研究活動を行ったことを振り返ると、様々な感慨がわいてきます。研究を終了するに当たって、このプロジェクトの特徴と成果を簡単に振り返っておきたいと思います。
 具体的な研究成果について語る前に、このプロジェクトの全体的な特徴について説明しておきたいと思います。当初の研究計画は、体系的網羅的な構想を示していましたが、このプロジェクトは、設計図に沿って建物を造るような形で研究を進めていったわけではありませんでした。現代政治を研究対象とする以上、同時代の政治の動きから刺激を得たり、新たなテーマを発見したりするという影響を受けることは不可避であり、むしろ、明確な問題意識を持ちながら、現実政治を観察する中で新たな問題を発見し、研究を進める中で研究計画自体を変容、展開させることがこのプロジェクトの特徴だったと思えます。
 特に、このプロジェクトが小泉政治の5年間とほぼ重なったことは、偶然かもしれませんが、研究の展開や方向付けに大きな影響を与えました。新自由主義やアメリカモデルの普及としてのグローバル化に対する対抗理念を構築するという問題意識がこのプロジェクトの基底にありました。実際に、新自由主義的な理念にもとづく構造改革が日本の経済社会を作り変え、自民党や官僚制の構造をも変化させました。2005年総選挙のインパクトも強烈でした。また、いささか遅かったとはいえ、新自由主義的政策にともなう弊害が国民的関心を集めたことは、我々の予想通りの展開でした。結果的にはこの5年間はきわめて刺激に満ち、また取り組むべき課題を次々と突きつけられた時期であり、その意味では、いささか皮肉な話ですが、小泉政治に感謝すべきかもしれません。このような時期にこのようなチームで、これだけの予算をもって研究を進められたことは大変幸運なことでした。
 以下、学界に対する貢献という観点から、本プロジェクトの特に重要な研究成果を紹介したいと思います。

1 リスク概念を鍵とした日本型福祉レジームの変容
 1990年代後半から21世紀にかけて急速に進んだ日本における政治変容を説明する中で、「リスクの社会化−個人化」と「普遍的政策−裁量的政策」という2つの軸を組み合わせることで、体系的な説明モデルを構築しました。これは、戦後日本の社会経済システムに関して比較可能な枠組みで特徴を説明するとともに、これがもたらした平等に対する政治的な攻撃が有効であった理由も明らかにするものだと考えています(詳しくは、山口二郎『戦後政治の崩壊』、岩波新書、2004年を参照してください)。
 戦後日本では、公共事業系の補助金や護送船団方式による業界保護など、裁量的政策によりリスクの社会化が図られており、そのことが結果的に、疑似福祉国家的効果をもたらしました。しかし、裁量的政策は腐敗や非効率ももたらし、90年代には市場原理の浸透や、透明性を求める市民社会の要求と齟齬を起こすにいたりました。こうした政治の潮流の中で裁量的政策と不可分に結びついていたリスクの社会化という理念まで否定され、新自由主義的構造改革が優勢となりました。
 このモデルは、そうした構造改革に対抗する政策理念についても示唆を与えています。即ち、裁量的政策からの脱却によるリスクの社会化政策の再構築が現実的課題となるのです。そのためには、市民参加や監視による政策形成・実施過程の管理を可能にするという観点から、地方分権が戦略的課題となります。

2 福祉国家から福祉ガバナンスへのパラダイムシフト
 このプロジェクトは、日本政治のみならず、広い視野で先進国における福祉国家体制の動揺と新たな福祉ガバナンスの必要性、可能性について考察を進めました。
 20世紀型の福祉国家は、相対的に安定した雇用と家族を与件として、産業社会に典型的なライフスタイルに典型的なリスクを抽出し、それを社会保険によって社会化し、社会保険でカバーできない層については公的扶助を展開するという、所得保障中心の体系でした。まさにナショナルな空間で全国一律の所得保障を展開するという点で、福祉国家は、集権的国家体制と密接に結びついていました。しかし、グローバル化にともなう労働市場の柔軟化と雇用構造の変化、女性の自己実現要求の高まりにともなう家族の変容や介護、育児のニーズの高まり、高齢化など大きな社会経済変動の中で、そのような与件も崩れ、リスクも多様化しました。ここにおいて福祉政策の課題は人々をいかに労働市場や地域社会に結び付けていくかという点に移ることとなりました。所得保障に代わって社会的包摂が福祉ガバナンスの目的となります。
 こうした福祉ガバナンスを担う主体は、中央政府の独占から市場、市民社会セクターなど多様化していきます。特に、社会的包摂という課題に対しては、人々の多様なニーズにこたえるという意味で市民社会セクターの重要性が高まります。また、国際機構、国家、リージョナル・ローカル政府という形でガバナンスの担い手の重層化も進みます。こうして福祉国家の揺らぎを乗り越えるために、西欧では福祉ガバナンスは統治ネットワークの重層的再編が進んでいます。「大きな政府−小さな政府」という単純すぎる、不毛な論争を超えて、人間の生活を支える福祉国家をどのように再建するかという課題を考える上で、ここで明らかになった福祉ガバナンスのモデルは、きわめて大きな意味も持つと考えます。
 また、これに関連して、市民が政治や政策に何を期待するかについて、2006年1月、東京と北海道において大規模な意識調査を行ないました。その結果、平等や公共サービスに関して、多少の地域差はあるものの、市民は格差の小さい社会を望み、充実した公共サービスを望んでいることが明らかとなりました(詳細は左のReferenceコーナーより「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告をご覧ください)。この点は、今後の日本の政党政治や福祉国家の再建を考える上できわめて重要な示唆をもたらしています。

3 マルチレベルガバナンスの実証、理論
 もう1つの重要な成果は、ポスト中央集権国家時代における多層的なガバナンスの仕組みに関する実態分析とモデル化です。1つの方向は、EUという超国家的なガバナンスシステムに関する歴史的、実証的な分析です。このプロジェクトの中から、ヨーロッパ統合の歴史過程に関する日本で最初の本格的な研究が生み出されました。もう1つの方向は、イギリスにおける地方分権を素材としたリージョナルガバメントと地方自治体の可能性に関する研究です。スコットランド地方分権を素材として、国家、リージョン、地方の各レベルの政府の役割分担や分権改革が成功する条件について分析し、日本の道州制論議にも大きな示唆を与えています。

4 社会に対する発信
 本プロジェクトは、関連するテーマに関して外部の著名な学者、専門家を招いて、数多くの公開シンポジウムや講演会を開催してきました。そして、その成果をブックレットという形で出版し、地域社会や自治体関係者などから好評を得ています。こうした活動は、先端的な研究と知を社会に還元し、広い意味での教育機能を担うという新しいモデルを切り開いたと自負しています。
  また、このプロジェクトの副産物として、人材育成による学界への貢献があげられます。本プロジェクトには、博士号を取得したばかりの若手研究者に研究支援員として参加してもらい、研究会での討論や調査に貢献してもらいました。そのことは研究を活性化しただけではなく、それらの若手研究者の自立にも大きく寄与し、次代の政治学を担う人材が育ったと考えています。

おわりに
 この5年間、様々な研究を展開できたことについて、プロジェクトの研究分担者の皆さん、さらに各種のシンポジウムや講演会に協力してくださった多くの研究者の方々に心から感謝したいと思います。また、事務局を担って我々の研究を支えてくれたスタッフである田中みどり、赤江橋直美、久保真理、谷川真弓子の各氏の献身的な働きに、心よりお礼申し上げます。
 なお、2007年度からは、新たに科学研究費基盤Sにより、「市民社会民主主義の理念と政策に関する総合的考察」というプロジェクトを立ち上げました。学術創成プロジェクトと同様に、積極的に社会に発信していきたいと考えています。
プロジェクトニュース No.51
2006年度発刊 学術創成プロジェクト企画ブックレットの紹介
 2007年1月〜3月、学術創成研究プロジェクトでは、本プロジェクト企画で行ったシンポジウム・講演会のとりまとめとして、5巻のブックレットを発行した(法学研究科附属高等法政教育研究センターブックレット No.19,20,22,23,24)。各々の内容は以下のとおり。
 
ACADEMIA JURIS BOOKLET
No.19 「グローバリゼーション時代のデモクラシー」

テッサ・モーリス−スズキ、萱野稔人、山口二郎、小野有五 著
※2006年6月26日開催のシンポジウム「グローバリゼーション時代のデモクラシー」の内容を収録。
 
No.20 「市民は格差をどう考えているか」
橘木俊詔、白波瀬佐和子、池上岳彦、宮本太郎、山口二郎 著
※2006年3月17日開催のシンポジウム「討論 市民は格差をどう考えているか ―東京都、北海道の世論調査にみる政府像・社会像―」の内容を収録。
 
No.22 「格差社会の人権」
斎藤貴男、猿田佐世、山口二郎 著
※2006年7月6日開催のシンポジウム「格差社会の人権」の内容を収録。
 
No.23 「私たちが政治家を“好き”と思うとき」
香山リカ 著
※2006年10月20日開催の講演会「私たちが政治家を“好き”と思うとき」の内容を収録。
 
No.24 「Japan and the UN in International Politics: Historical Perspectives」
Edited by Asahiko Hanzawa
※2006年12月10日開催の国際シンポジウム「Japan and the UN in International Politics: Historical Perspectives」の内容を収録。
 
いずれも『グローバリゼーション・ガバナンス研究プロジェクト事務局』(北大法学研究科612室)にて配布中。
学外でご希望の方は、送り先を記入した返信用封筒を同封し、郵便にて下記事務局までお申し込みください。着払いにて発送させていただきます。 ※冊子の大きさはA5版です。
MENU
このWEBサイトは、グローバリゼーションとガバナンスに関する大型プロジェクト
議論の素材提供のために設けられたWEBサイトです。広く皆様のアクセスをお待ちしております。
ホームページ開設の言葉 研究成果・刊行物
学術創成研究の概要
公開資料
著作物
Proceedings
Working Papers
関連論考
研究組織班編成
メンバープロフィール
シンポジウム・研究会情報
プロジェクトニュース アクセス
ライブラリ リンク
連絡先
  〒060-0809 北海道札幌市北区北9条西7丁目  [ アクセスマップ ]
  北海道大学大学院法学研究科 学術創成プロジェクト事務局
  ■TEL/FAX(011)706-3798   ■E-mail:globalg@juris.hokudai.ac.jp
このホームページに掲載されている全ての文章・画像の著作権は、当研究プロジェクト、もしくは、著作者にあります。無断転載は、ご遠慮ください。
このページは、Internet Explore6.0で動作確認をしています。