Seminars (2017)
講義/ゼミナール
講 義
ヨーロッパ政治史(2018年後期)
●授業内容
ヨーロッパ各国の政治は様々な革命や体制変動を経験し、ファシズムや共産主義といった政治潮流を生み出した「実験報告の図書館」としての性格を持っている。また、その反省から戦後ヨーロッパが始まり、欧州統合という未曾有の政治的実験が着手されることになった。
 授業で主に扱うのは、ドイツ、フランス、イギリスを中心とする19世紀から20世紀後半までの政治史である。もっとも授業の目標は、歴史的な事件や人物を知ることだけではなく、様々な社会科学のツールを用いつつ、政治における断絶と連続を見極め、歴史的視点から現代はどのように把握されるのか、そして現代を成り立たせている歴史的構造がどのようなものかということをについての知識を習得し、さらに想像力を養うこと、すなわち我々の「立ち位置」を把握することにある。
●到達目標
 本授業はヨーロッパの歴史を知ることのみを目的とはしない。むしろヨーロッパの政治を、多種多様な政治的概念を使ってどのように分析できるのかという、ひとつの知的視座を提供することを目指している。
 従ってヨーロッパ主要国の基本的構造を踏まえた上で、「概念」と「歴史」を駆使しつつも、(1)各国を比較することによって、大まかな時代的な流れを把握し、(2)とりわけ比較政治学による研究工具によってどのような分析が成り立つのかを論じ、(3)時代的なアイディアや制度がどのような要因によって変化していったのかを理解することを目標とする。以上の過程を通じて、歴史といった対象をただ漠然と学ぶのではなく、それが「活きた」知識として活用されることを目指す。従って、受講者には、「歴史」のみならず「政治学」についても学ぼうとする意欲が求められる。
●授業計画
 絶対主義王政/フランス革命を起点として、民主化の開始、国民国家と資本主義、革命とナショナリズムといった歴史的な諸問題に焦点をあてながら、戦前から戦後までのドイツ、フランス、イギリスを中心とした各国の経験を解説、分析する。戦後期については、各国の現代政治における変容に焦点を当て、欧州統合を視野に入れて90年代までの時期を扱う。講義の大まかな流れは以下の通り。
1.国民国家と資本主義経済の成立
2.ナショナリズムと自由主義の開始
3.戦間期における各国政治社会の変化
4.戦後体制の確立
5.戦後体制の危機と再編
6.欧州統合の開始
 なお、講義内容については、シラバス・レジュメを随時配布する。
●準備学習(予習・復習)等の内容と分量 Homework
 単に歴史上の流れを追うのではなく、これらを理論や概念によって分析をするので、かなり複雑な授業構成になる。そのため、予め当該時期に関する基本的事項を予め予習しておくことが望ましい。
●成績評価の基準と方法
成績は期末試験ないしレポート提出の何れかによって評価する。なお、これ以外に出席による救済点も加味される。
●テキスト・教科書
『ヨーロッパの政治』 篠原一 東京大学出版会 
『改訂新版ヨーロッパ政治史』 平島健司/飯田芳弘 : 放送大学教育振興会,
●講義指定図書
『比較政治学』 粕谷祐子:ミネルヴァ書房
ゼミナール
現代ヨーロッパ政治外交論(2018年前期)
●授業の目標
本授業は、近年のヨーロッパ政治で大きく注目されるポピュリズムを対象に、それが各国ごとにどのような様相や特徴を有しているのかについて、またそれがどのような共通性や差異を持っているのかについての基本的な視座や知識を習得することを目的とする。
●到達目標
本講義は、1.政治学の基礎的な知識を学ぶとともに、2.各国で生じているポピュリズム現象についての具体的な情報を確認し、3.さらにそれがいかなる要因によって生じているのかということについての分析的視点を獲得することを目標とする。
授業計画
現代欧州およびその他ポピュリズムに関する書籍を輪読していく演習方式をとる。
文献リストや進め方については初回の授業で配布するシラバスで詳述するので、履修希望者は出席すること。
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
多くの量の文献を通読していくので、事前の学習は欠かせないものとなる。また無断欠席があった場合には単位が付与されないので注意すること。
成績評価の基準と方法
成績は平常点ならびに授業への参加の程度を基準とする。
講義指定図書
ポピュリズムとは何か / ヤン=ヴェルナー・ミュラー : 岩波書店, ISBN:9784000247962
ポピュリズムのグローバル化を問う / 中谷義和 [ほか] 編 : 法律文化社, ISBN:9784589038395
「再国民化」に揺らぐヨーロッパ / 高橋進, 石田徹編 : 法律文化社, ISBN:9784589037374
ポピュリズム時代のデモクラシー / 高橋進, 石田徹編 : 法律文化社, ISBN:9784589034908
Populism : a very short introduction / Cas Mudde and Cristobal Rovira Kaltwasser : Oxford University Press, ISBN:9780190234874

演習T(2018年前期)

●授業の目標
本演習の目標は、政治学を中心とした領域を対象に、社会科学の思考方法や論理についての知識と技能を修得することにある。具体的には、政治や社会における現象を対象に、そうした現象がいかなる原因によって生じているのかについて、科学的に特定・推論・解明するためにはどのような考えや方法があるのかについて、文献講読とグループワークを通じて体得することを目標とする。
到達目標
本演習の目標は、1.仮説と検証、因果関係の特定といった社会科学的思考に馴染み、2.こうした社会科学的思考に基づいて自らリサーチデザインを組み立てることができること、3.それに付随する様々な社会科学の概念や理論、手法についての知識を習得することにある。
授業計画
本演習は概ね以下のパートから構成される。
1.イントロダクション
2.文献講読と報告
3.グループワーク
4.研究発表
なお、演習の性格上、時間を延長することが想定されるので、演習後の時間は空けておくことが望ましい。
詳細な授業計画は初回時に配布するシラバスに記載するので、初回時には出席すること。
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
指定された文献については予め内容を把握してくることが求められる。また、グループワークについては自主的な学習時間を要することになるので、予習・復習ともに主体的に取り組むことが不可欠となる。なお無断欠席があった場合には単位を付与しないので注意すること。
成績評価の基準と方法
本演習の政策評価の基準は以下の通り。
演習への主体的参加(30%)、報告の分担(30%)、グループワークの評価点(40%)
講義指定図書
政治学方法 / 加藤淳子ほか : 有斐閣, 2014, ISBN:9784641220379
原因を推論する / 久米郁男 : 有斐閣, 2013, ISBN:9784641149076
社会科学の道具箱 / ヤン・エルスター : ハーベスト社, 1997, ISBN:9784938551339
政策リサーチ入門 / 伊藤修一郎 : 東京大学出版会, 2011, ISBN:9784130322157
創造の方法学 / 高根正昭 : 講談社, 1979, ISBN:4061455532
「原因と結果」の経済学 / 中室牧子 : ダイヤモンド社, 2017, ISBN:9784478039472

演習U(2018前期)
●授業の目標
キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein)は憲法学、行政法、環境法専門の法学者である一方、近年ではネット上のコミュニケーションや行動経済学の知見を用いた規制ルール・リスク回避策などを提唱し、米オバマ政権での行政職に就いたこともある異色のキャリアの持ち主である。
実際、彼が提唱した「カスケイド」、「アーキテクチャ」、「リバータリアン・パターナリズム」といった現象・概念は、民主主義における人々の政治的意見や行動について新しい知見をもたらし、これをもとに様々な議論が生まれるようになっている。
本演習では、同氏の著作のうち訳書があるもの12冊(一部共著を含む)を輪読し、サンスティーンの議論や理論、仮説について体系的に学ぶとともに、それが近接分野(政治学、経済学、社会学等)とどのように接合し得るのか、しないのかについて討議することを目標としている。
●授業計画
教員によるイントロダクションの後、履修者の分担による報告を行う。詳細については初回時に配布するシラバスに添って計画を進めるので、希望者は演習の初回に出席すること。
なお課題図書は下記の通り(タイトルは何れも邦題)。
『命の価値――期性国家に人間味を』、山形浩生訳、勁草書房、2017年
『シンプルな政府―― "規制"をいかにデザインするか』、田総恵子訳、NTT出版、2017年
『選択しないという選択――ビッグデータで変わる「自由」のかたち』、伊達尚美訳、勁草書房、2017年
『実践 行動経済学――健康、富、幸福への聡明な選択』、遠藤真美訳、日経BP社、2009年
『賢い組織は「みんな」で決める―― リーダーのための行動科学入門』 田総恵子訳、NTT出版 2016年
『恐怖の法則 予防原則を超えて』、角松生史・内野美穂監訳、勁草書房、2015年
『動物の権利』、安部圭介・山本龍彦・大林啓吾監訳、尚学社、2013年
『最悪のシナリオ―― 巨大リスクにどこまで備えるのか』、齊藤誠・田沢恭子訳、みすず書房、2012年
『熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論』那須耕平監修、勁草書房、2012年
『インターネットは民主主義の敵か』、石川幸憲訳、毎日新聞社、2003年
『自由市場と社会正義』有松晃訳、食料・農業政策研究センター、2002年
『クローン、是か非か』、中村桂子・渡会圭子訳、産業図書、1999年
●準備学習(予習・復習)等の内容と分量
課題図書を精読した上で、予め疑問点や論点などをまとめた上で演習に参加すること。
●成績評価の基準と方法
成績評価は以下を基準とする。
1.演習への参加度(30%)
2.演習での報告(30%)
3.期末レポート(40%)
なお無断欠席があった場合は単位を付与しないので注意すること。
フランス語習(中級、2018年後期)
●授業目標
本演習の目標は以下の3つ。1.初級のフランス語からスタートして、ボキャブラリーや基礎的な文法知識を獲得していくこと、2.フランス語で展開される社会科学の概念・専門用語に親しむこと、3.世界的な経済、社会、政治の趨勢について関心を持つこと。
●到達目標
語学力上達のための王道は存在しないが、基本的には「読む」、「話す」、「聞く」、「書く」の繰り返し・反復によってでしか上達は望めない。本演習では、このうち、「読む」と「聞く」に重点を置きつつ、それを補完する「聞く」「書く」ことも取り入れ、総合的なフランス語能力を会得することを目標とする。
●授業計画
日本でも2015年になって大きな注目を集めたThomas Piketty,Le Capital au XXIe Siecle(翻訳はトマ・ピケティ『20世紀の資本』みすず書房)を輪読する。
この本は日本語でもフランス語でも500ページを超える大著のため、原則として受講者の関心とレベルにあわせて、本の部分を読んでいくことになる。具体的な方法としては、指定された文章を音読した上で、翻訳の手も借りながら読み解いて、ボキャブラリーとグラマーの確認をしていいくことなる。
フランス語の初級者以上であることが望ましいが、履修者のレベルに合わせて、授業計画を工夫していきたいと考えている。
なお、履修の際には上記ピケティの翻訳本と仏和辞典(中辞典以上)を準備することが望ましい(原文は該当部分をコピーの上配布する。)
●準備学習(予習・復習)等の内容と分量
予め指定された箇所を自分で読み解く(翻訳の手を借りてもよい)くることが毎回求められる。その上で文法・語彙については辞書・辞典・参考書などで可能な限り調べてこなければならない。
●成績評価の基準と方法
平常点(演習参加)による。なお無断欠席は認めないので注意すること。
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