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History of European Integration

史料館案内Archives

スペイン行政総合史料館の紹介(細田晴子・日本大学)

スペイン行政総合史料館(Archivo General de La Administración: AGA)(外部サイトへ)
住所:C/ Paseo de Aguadores, 2,
    28871 Alcalá de Henares

開室時間:月曜日から金曜日、8時半から14時15分まで(史料の請求は14時まで)。ただし祝日(イースターも含む)や年末年始等で閉館される場合がある。

1.アクセス

マドリードのAtocha駅から近郊電車(Cercanías C-2,7)でAlcalá de Henares 下車。切符は、窓口あるいは機械で購入。往復で6.8ユーロ(2018年7月現在)。朝は12,3分に一本程度の便があり、約40分かかる。車に慣れたアメリカ人研究者は「小旅行だ、遠かった」と言っていたが、東京人にとっては通勤・通学距離。駅からは、南東に道なりに歩き、約15分で到着。

2.閲覧室への道

門のところで、セキュリティーチェックがあり、パスポートを提示する。建物の入り口で、ビジターの名札を受け取り、左側の事務室で再びパスポートを提示し、住所・電話番号・メールアドレスなどを登録する。写真を撮られ、利用許可証(A4の紙)が渡される。部屋を出て中庭を見ながら突き当たりにある部屋で閲覧する。

PC(ケースから出す)、許可証、紙(ノートは不可)、鉛筆(ペンは不可)のみ持込が許されるので、入る手前の右側のロッカーに残りのものを入れる。1ユーロ入れて鍵をかける(コインは使用後に戻る)。

閲覧室の受付で許可証を提示すると、作業机をあてがわれる。その後、いったん部屋を出て、ロッカーと反対側の部屋で、担当の人に自分の調べたいものを伝える(キーワード: たとえばCEE、担当大臣個人名など)と、閲覧可能なものを探してくれる。あいまい検索はないので、キーワードの設定が重要。

再び閲覧室に戻り、許可が出るのを待つ。閲覧室内は、カーディガンなども机上に置けず、いすに掛ける。(WIFIなし)

待たされること半時間…。ここで出てきたリストの中で、閲覧したいものを請求する。一度に注文できる文書数は、10箱までである(1箱返却するとその分注文可能)。隣接した小部屋に資料を置き、一箱ずつ自分の机に持っていくことができる。机には一度に1箱ずつしか置けない。注文した史料の保管期間は約5日(土日を除く)。

デジカメ等による複写は禁じられている。複写が必要な場合は、手書きかPCで書き写すか、時間はかかるが、複写を依頼する。50枚以下の場合はurgente(至急)で依頼が可能。当日~数日で紙のコピーが郵送される。それ以上の場合は、CDにコピーされたものが郵送される(数ヶ月かかる)。必要な部分に色画用紙を挟んで請求する。支払い方法については、銀行振り込みだが、これらの手続きについて事情を話すと柔軟に対応してくれることがある。

3.事前問い合わせ

閲覧室の利用のためには事前にaga@meced.esにメールし、 研究テーマを詳細に伝えておくと、到着後の史料探しが比較的スムーズである。

4.ヨーロッパ統合史研究に関連すると思われる主な所蔵史料の概観

1.アドルフォ・スアレス(1976-1981年)およびフェリペ・ゴンサレス元首相(1982-1996年)の史料。

2.外務省 1970年代まで Mercado Común Europeo, Política Agrícola, GATT (1970-1975) など少数。1980-1986年(スペインは1986年に加盟)は、291ファイルが存在。その他EU関係書類の大部分は現在マドリードの外務省および欧州問題庁に保存されている。今後の開示の見通しは不透明。

5.史料閲覧に関連するその他の情報

・スペインでは、1930年代までの公文書(外務省を含む)およびそれ以降の外交文書の一部はAGAに、その他はマドリードの外務省史料館で保存・閲覧されていた。しかしながら21世紀に入り、ウィキリークスの問題発覚後、史料館での閲覧に許可が必要となり、その後工事の名の下に機密の観点から閉鎖されている(財政上の問題とも言われる)。ウェブ上での閲覧はもちろん、資料のデジタル化などからも程遠い。スペインでは、外交文書の開示の期間が法律で設定されていないことも問題である(現在国会で審議中)。

・外務省の史料館の工事は今(2018)年中に終了し、来春にはオープンしたいという。しかし、相次ぐ政権交代による混乱、アーキビストの人手不足もありごく一部の文書のみが整理されているにとどまっている。

・スペインの場合は、スペイン語で交渉しなければならない他の個人文書館へのハードルは一層高い。ただし、外務省史料館も別の意味でのハードルが高かった。スペイン人であっても、朝令暮改の下で、収集に苦労している。


(【写真1】マドリードのスペイン外務省:17世紀の歴史的建造物 当初は牢獄として使用されていた!)

6.その他

・スペイン(マドリード)では、諸手続きに時間がかかるので、時間に余裕を持って行動したい。カタルーニャ州では効率的である。

・昼食用の食堂、自動販売機等はない。近くにカフェテリアはあるが、開館時間が短いため(スペインの昼食時間前に閉館)外に出ず、飲み物等を館内に持ち込み、ロッカーにしまっておくほうがよい。

・閉館が早いため、マドリードから日帰りは可能である。ただアルカラ・デ・エナレスは、ユネスコの世界遺産に登録された街であるため、学生・観光客も多い。13世紀創設の大学の建物やセルバンテスの生家(博物館)などもあるので、マドリードより宿泊費の安いアルカラに宿泊するのもよいかもしれない。


(【写真2】アルカラ・デ・エナレス大学法学部: 建物の上にコウノトリが巣を作っている)

 
(【写真3】セルバンテス生家)

謝辞:2018年7月18日取材に協力いただいたAGAの Mercedes Martín-Palomino 館長、外務省のJuan Carlos de Miguel Rodríguez史料館長に御礼申し上げる。

(細田晴子・日本大学)

基盤研究(A)「リージョナル・コモンズの研究―地域秩序形成の東アジア=ヨーロッパ比較―」
(研究代表者:遠藤乾)