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History of European Integration

史料館案内Archives

ドイツ外務省政治史料館の紹介(妹尾哲志・専修大学)

ドイツ外務省政治史料館(Politisches Archiv des Auswärtigen Amts: PAAA)(外部サイトへ)
住所:Kurstraße 36, 10117 Berlin


アクセス

地下鉄のU2のHausvogteiplatzかSpittelmarktが最寄り駅。どちらからも徒歩5分程度で史料館のある外務省の建物に到着できる。ベルリンの中心部ともいえる地域にあり、他にもバス等を利用して辿り着くことができる。ただ建物自体は観光地など繁華街から少し外れに位置しており、近くに大使館なども所在する閑静で治安も概ね良い場所といえる。ベルリン市内交通では近年料金の値上げが続いており、最新の情報はたとえば次の英語のHP(外部サイトへ)で確認できる。



(写真1:史料館は外務省の建物内にある。)



(写真2:外務省の建物の表札)


閲覧室への道

入口から入って右手側にある窓口で名前と閲覧室に予約している旨を伝え、身分証(パスポート等)を預け、引き換えに番号が付された利用証を受け取る。左手側に持ち込む荷物等のセキュリティー・チェックがあり、それを抜け「Zum Lesesaal」の表示(写真3)に従って自販機(写真4)の前を通り窓際の通路に沿って進むとロッカーが置かれているスペースに辿りつく。

閲覧室の扉はすぐそこだが、持ち込みが許されているのは、デジカメ、メモ用のノート等、鉛筆、ノートパソコン(及びその周辺機器)であり、それ以外はロッカーに預ける。ロッカーの利用には1ユーロまたは2ユーロのコインが必要だが、使用後に戻ってくる仕組みになっている。ロッカー等に中身の見える透明の袋(Politisches Archivのロゴ入り)が入っている場合もあり、それに持ち込むものを入れて閲覧室に入室することもできる。

閲覧室内には少ないが書架も設置されており、たとえば第二次世界大戦後に成立したドイツ連邦共和国の外交政策に関して、史料公開30年原則に従って現代史研究所(Institut für Zeitgeschichte)によって編集・公刊されている史料集(Akten zur Auswärtigen Politik der Bundesrepublik Deutschland: AAPD)や、その他の史料集及び研究書等の閲覧ができる。なお閲覧室内はwifiも利用可能である。



(写真3:閲覧室への表示)



(写真4:自動販売機)


開室時間

月曜日から木曜日は8時半から16時半、金曜日は8時半から15時まで。ただし週末以外でも祝日や年末年始等で閉館される場合があるのでHPで確認するとよい。

文書注文の締切り時間は、月曜日から木曜日は10時と14時、金曜日は10時と13時で、通常それぞれ約30分後にカートでカウンターに運ばれてくるので受け取ることができる。


事前問い合わせ

閲覧室の利用のためには事前に予約をする必要がある。遅くとも2週間前までに、HPから入れるコンタクト・フォーマット(外部サイトへ)に必要事項を記入して送信する。その際記入したEメールアドレスに先方から返信があるので、念のためそれをプリントアウトして持参するとよい。フォーマットには、研究テーマ、研究の対象時期、そして閲覧室の使用希望期間などを記入する。さらに、事前に注文したい文書番号がわかっている場合は、予約の際に併せて最大10件まで予約可能である。事前に注文できると到着後すぐにカウンターで予約文書を受け取って閲覧を開始できるので時間の節約という観点からもありがたい。


文書の注文方法

史料を申し込むにあたっては、最初に閲覧室のカウンターでPIN(Benutzer-ID)を獲得する必要がある。手続きの際には住所や研究テーマ等を伝える必要がある。獲得したPINを閲覧室に5台程設置されているパソコンから入れるデータベースに入力し、文書番号を通じて注文ができる。

閲覧室内には史料カタログ(Findbuch)が置かれており、それらを利用して文書番号を入力する。入力の仕方等不明な点があれば遠慮なくカウンターに常在している職員に相談するとよいだろう。ほとんどの職員は英語でのコミュニケーションもでき、概ね親切に対応してくれる筈である。一日に注文できる文書数は、冊子(Band)、マイクロフィルムとも10件までである。

注文した史料がカートに運ばれてカウンターに到着すると、職員に名前を告げて注文文書を受け取り、室内で閲覧・撮影できる。冊子の場合は厚さにもよるが一度につき最大5冊ずつくらい受け取ることができ、冊子数を示すカードも併せて渡される。なお注文した中から先に見たい文書番号を指定して受け取ることも可能である。

受け取った史料をまとめて読み終えたら、冊子数を示すカードと共にカウンターに返却する。そこで職員が返却された史料の冊子数とカード番号が一致していること等を確認する。返却後注文していた別の史料を受け取ることができる。注文した史料の保管期間は約1カ月だが、閲覧し終えてもう使用しない場合はその旨職員に伝える。


ヨーロッパ統合史研究に関連すると思われる主な所蔵史料の概観

・PAAAに所蔵されている史料は、分類の仕方は様々であろうが、①第二次世界大戦前(1867年~1945年)の外務省及び在外公館(Auslandsvertretungen)の史料、②第二次世界大戦後のドイツ連邦共和国の外務省及び在外公館の史料(占領期や東西統一後も含む)、③ドイツ民主共和国(東ドイツ)の外務省及び在外公館の史料、④私文書(Personalakten)、に大きく分類することが可能である。とりわけ第二次世界大戦後のヨーロッパ統合史研究に関連するであろう②について少し敷衍すると、原則としてまず担当課毎に整理されており、文書の表記は「B」ではじまる。ただ外務省内の機構改革等で時期によって部局が改変されており、またそれに応じて部局の担当する政策も変更されることがあるため、対象時期毎に丁寧に確認することが望ましい。なお省内の部局図は、AAPDの巻末に掲載されている。

・在外公館の史料については、公館の所在地をアルファベット順に整理したカタログが閲覧室に置かれており、そこで文書番号等を確認できる。ただし注文する際の入力方法が少し複雑なのでカウンターの職員に尋ねるとよいだろう。

・B130は機密史料類であり、2015年12月の時点で1949年から65年までのものの大部分については開示され、後続年の機密史料も整理され次第随時閲覧可能になる予定である。ただし文書によっては別途手続きが必要な場合があるので、詳しくはカウンターの職員を通じてアーキビストに相談するとよい。

・B150には、AAPDに掲載されている文書が年毎に整理されており、AAPDに全文収録されている文書はもちろん、脚注で触れられている文書も所収されている。カタログは閲覧室で見ることができる。

・これらとは別に所蔵されている文書の一つである寄贈文書(Nachlass)には、外交官などドイツ外交にかかわりの深い人物が寄贈した文書がアルファベット順に整理されている。文書の表記は「NL」ではじまる。寄贈した人物に関するカタログは閲覧室で見ることができるが、人物によってはコブレンツにある連邦文書館(Bundesarchiv)等に寄贈されている文書や(次項参照)、遺族など文書管理責任者が管理している文書もあり、また場合によっては本人や文書管理責任者などに閲覧許可を得る必要があるため、訪問前に閲覧するための手続きを問い合わせておくとよい。


史料閲覧に関連するその他の情報

・AAPDは30年公開原則に従い、2016年10月現在で1985年までのものが公刊されている(ただし1954~61年は除く)。また随時ウェブ上での公開作業も進んでおり、現代史研究所のHPより2016年10月の時点で1949~53年、63~70年までを無料でダウンロードすることができる。AAPDにはPAAA以外で所蔵されている文書も所収されており、文書館を訪れる前にまずAAPDをチェックすることが必須であろう。

・ドイツを含む欧州諸国の史料データベース(Archives Portal Europe; https://www.archivesportaleurope.net/)でも、キーワード検索等を通じてPAAAの史料に関する簡単なカタログを見ることができる。

・注意を要するのは、ドイツ連邦共和国の主要な政治家の文書は連邦文書館や政党系財団の文書館、個人文書館等においても管理されており、PAAAに所蔵されていない場合が多いことである。政党系の財団としては、CDU系のコンラート・アデナウアー財団のキリスト教民主主義政治文書館(Archiv für Christlich-Demokratische Politik)、CSU系のハンス・ザイデル財団のキリスト教社会主義政治文書館(Archiv für Christlich-Soziale Politik)、SPD系のフリードリヒ・エーベルト財団の社会民主主義文書館(Archiv der sozialen Demokratie)、FDP系のフリードリヒ・ナウマン財団の自由主義文書館(Archiv des Liberalismus)、緑の党系のハインリヒ・ベル財団の緑の記憶文書館(Archiv Grünes Gedächtnis)、左翼党(Die Linke)系のローザ・ルクセンブルク財団の民主社会主義文書館(Archiv Demokratischer Sozialismus)がある。また政治家個人の文書館としては、連邦首相アデナウアー・ハウス財団(Stiftung Bundeskanzler-Adenauer-Haus)、ヘルムート・シュミット文書館(Helmut-Schmidt-Archiv、ただしAdsDにも寄贈文書あり)等がある。


複写に関する情報

・デジカメによる撮影(音・フラッシュは切る)が可能である。マイクロフィルム化された史料については、閲覧室にあるマイクロリーダーで閲覧しデジカメでの撮影が可能だが、同じく閲覧室に置かれている申請用紙に記入してフィルムごとの複製を注文することもできる。

・閲覧室内の窓際の席は晴天の日は午後の西日がきついときがありデジカメでの撮影に際しては注意が必要である。


その他

・昼食用の食堂等が併設されておらず、コーヒー用の自動販売機(写真4)が一台あるのみである。自販機と閲覧室の間の通路には、少ないが机と椅子が置かれており、あらかじめ買ってきたサンドイッチ等をそこで食べている利用者もいる。あるいは一旦館外に出ることになるが、周辺には適当なレストラン等が少ないのが難点。Hausvogteiplatz駅近くにカフェがあり、そこで販売されているパン等はテイクアウトも可能である。

・街の中心地域に存在しているため、少し歩けば博物館等の見所も多く、調査後に元気があれば遠くはブランデンブルク門(写真5)やアレクサンダー広場辺りまで散策するのもよい。



(写真5:ブランデンブルク門)


参考文献


Auswärtiges Amt hg., Einleitung in die Beständeübersicht des Politischen Archivs, Stand: Dezember 2015. (外部サイトへ)2016年10月24日閲覧。

川嶋周一氏による「ドイツ外務省史料館利用感想」(外部サイトへ)2016年10月24日閲覧。
(注)ただし扱われている内容は現在の閲覧室に移る前の閲覧室(同じ建物内)に関する2011年時点のものである。


基盤研究(A)「リージョナル・コモンズの研究―地域秩序形成の東アジア=ヨーロッパ比較―」
(研究代表者:遠藤乾)