「値幅カルテルと不当な取引制限」ジュリ1345号92頁
  (東京高判平成20年4月4日の評釈) の訂正箇所


(1)本件合意の認定について(93頁)の補足
 原稿では、本件合意を基準価格の合意、価格表価格の合意、実売価格の合意、の3つの構成部分に分けてそれぞれ直接証拠で認定しているという読み方になっています。

(2)複数の取引段階を含む一定の取引分野(94頁)の訂正
 本件の被審人は、メーカーではなく卸売業者です。
 従って、流通する出荷数量を完全にコントロールできるメーカーと同一に論じることはできません。
 それゆえ「III 一定の取引分野」の1は不適切であり、撤回します。
 それどころか、卸売業者向けの取引段階を一定の取引分野に含める理由付けは不十分ではないかと思われます。
 本件では卸売業者向け価格は基準価格の対象ではない(マージン競争はありうる)こと、卸売業者向けの競争が活発であっても、小売業者向け取引分野での卸売業者の供給シェアが小さければ小売業者向け取引分野での競争に影響しないこと、を考えれば、アウトサイダーと取引する卸売業者のシェアが小さいことを立証する必要があったのではないかと思われます。

(3)複数年度にわたる取引分野(95頁)
(誤「これは基本合意の射程に関する事実の評価の問題である」

(正「これは基本合意の射程に関する事実認定の問題である」