憲法的探見記 空知太神社編

探見日:2010年1月・5月
再訪日:2012年7月、2019年



最新の憲法判例の現場に急行することにしました。いわゆる空知太神社訴訟判決(最高裁平成22年1月20日大法廷判決・平成19(行ツ)260)です。


(2) 本件神社物件の形状及び配置状況
本件鳥居は,本件土地1上の国道12号線に面する部分に設置され,台石の上に置かれた,堅固な構造を有する神明鳥居(幅約4.5m)で,その上部正面に「S神社」の額が掲げられている。本件建物には,鳥居の正面に当たる部分に,会館入口とは別に,「神社」と表示された入口が設けられ,さらにその入口を入った正面に祠が設置されている。鳥居の脇には,「地神宮」と彫られた石造の地神宮が設置されているが,鳥居,神社入口及び祠は一直線上に配置され,また,祠内には御神体として天照大神が宿るとされる鏡が置かれている。


画面中央の広い道路が、日本一長い直線道路があることで有名な(?)、札幌と旭川を結ぶ国道12号線です(現在は、この区間の市街地を迂回するバイパスがあります)

「本件鳥居は,本件土地1上の国道12号線に面する部分に設置され」

「台石の上に置かれた,堅固な構造を有する神明鳥居(幅約4.5m)で,その上部正面に「S神社」の額が掲げられている」。積雪のため、台石は確認できませんでした。

「建物の主要部分を占める集会室の内には,机,いす,黒板,カラオケ機器等が置かれ,ふだんは使用料を徴収して学習塾等の用途に使用されている」とのことですが、画像右端に写っているように、小・中学生くらいの人が数人、建物に入っていきました。

「本件建物には,鳥居の正面に当たる部分に,会館入口とは別に,「神社」と表示された入口が設けられ」

「鳥居の脇には,「地神宮」と彫られた石造の地神宮が設置されている」

「鳥居,神社入口及び祠は一直線上に配置され」

しかし、国道12号線に面する側は除雪されていないので、鳥居の下をくぐって建物に行くことはできません。横の通用門(?)から建物入口・駐車スペースにかけては、しっかり除雪されています。3枚目の画像で建物利用者が横から歩いてきているのは、そのためです。

最高裁は「鳥居,神社入口及び祠は一直線上に配置され」とするのみですが、原判決は、「本件鳥居,本件建物の入口にある「神社」の記載及び本件祠は,一直線上に並んでいて参道の存在をうかがわせること」などから、「本件施設は宗教施設である神社としての評価を受けるものというほかはない」としていたのでした。もちろん、積雪寒冷地の神社において、冬期間は参道の除雪が行われないことはありうるかもしれません。

建物の背面

敷地内にある、上川道路開鑿記念碑。台座部分が雪の下に埋もれているようです。

実は、マッチ工場の跡地?



(4) 本件神社の沿革
ア S地区の住民らは,明治25年ころ,五穀豊穣を祈願して,現在の市立S小学校(以下「本件小学校」という。)の所在地付近に祠を建てた。その後,同30年,地元住民らが,神社創設発願者として,上記所在地付近の3120坪の土地について,北海道庁に土地御貸下願を提出して認められ,同所に神社の施設を建立した。同施設には同年9月に天照大神の分霊が祭られて鎮座祭が行われ,地元住民の有志団体であるS青年会がその維持管理に当たった。
イ 明治36年に上記施設に隣接して本件小学校(当時の名称は公立B郡C小学校)が建設されたが,昭和23年ころ,校舎増設及び体育館新設の計画が立てられ,その敷地として隣地である上記土地を使用することになったため,上記土地から神社の施設を移転する必要が生じた。そこで,S地区の住民であるDが,上記計画に協力するため,その所有する本件土地1及び4を同施設の移転先敷地として提供した。同施設は,そのころ,同土地に移設され,同25年9月15日には同土地上に本件地神宮も建てられた。


 

空知太小学校。左の画像の道路は、国道12号線です。小学校は、国道を挟んだ、神社の斜向かいにあります。右の画像は、小学校の、国道とは反対側。

さて、「空知太(そらちぶと)」は、砂川市の北端にあります。空知川を渡ると、滝川市です。北海道には、「○○太」という地名が多くあります。これは、アイヌ語に由来するもので、「河の口」を意味するそうです。

 

左は、空知川にかかる国道12号線の空知大橋から空知太地区を見たところ。右の画像の先で、空知川が石狩川に合流します。つまり、空知川の口、です。

説明の仕方を変えると、空知太神社は、だいたいこういう位置関係にあります。

 

美唄といえば、三井美唄炭砿事件(最大判昭43・12・4刑集22巻13号1425頁)

右の青看板のタテの棒が、神社前の国道12号線。左方向(富良野・赤平方面)が、バイパスです。空知太神社は、もともとの国道12号線と12号線滝川バイパスとに挟まれたところにあるわけです。

そして、滝川バイパスが分岐する上記の交差点の近くには、これがあります。

 



《補遺》
2010年1月29日に、札幌市は、「市有地内の宗教的施設の有無について」と題して、次のように発表しました。


 札幌市内において、神社等に市有地を無償で提供している事例がないか調査を行っているところですが、市有地の「社(やしろ)」「鳥居(とりい)」「祠(ほこら)」など宗教的な建造物の存在が、現在までに8件確認されましたので、お知らせいたします。
 今後は、引き続き同様の事例がないか調査を継続するとともに、宗教性の度合いや設置の経緯、所有者などについての調査を行い、その結果、宗教性がある施設については、札幌高等裁判所の判断を踏まえ、関係団体と協議を図るなど、市有地の適正な管理を行っていきたいと考えております。


札幌市が発表したリストは、以下のようなものです。


リストアップされた「宗教的な建造物」のいくつかを探見してみました。

頂にある白いドーム状の建物が「仏舎利塔」です。その右下にロープウェイの支柱が見えます。「平和記念塔」と呼ぶ人が多いように思います。

北海道神宮の第1鳥居。札幌市の市道を跨いでいます。銘板を見ると、1968年竣功で、地元の建設会社が施工・奉納したようです。


《再訪》
雪が無くなった空知太神社に行ってみました。

積雪に隠れていたものが、いろいろ見えてきました。

上川道路開鑿記念碑も全容を見ることができます。

やはり、マッチ工場跡でした。

マッチ工場跡の標識の隣は、地神宮です。

建物を真横から見たところです。

中央に写っている道路が、国道12号線。画面の奥のほうに進んでいくと、空知川を渡って、滝川市(砂川市の隣の市)です。
道路の右側が神社。道路の左、歩道橋の向こう側が空知太小学校です。三角屋根の小さな建物は、バスの待合所。その向こうがグラウンドで、画像左端に写っているのがプールです。校舎は、さらに左側(画面の外)です。


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〈齊藤正彰@北海道大〉