前回に続いて、政治家の世襲について考えてみたい。自民党内での世襲制限論を聞いて、最も不思議に思うのは、なぜ自民党総裁に世襲禁止規定を適用しないのかという点である。
言うまでもなく、世襲制限が議論されるようになったのは、二世、三世のお坊ちゃん政治家が総理総裁に就いたものの、重責に耐えきれず投げ出したからである。
選挙民が世襲議員を選ぶ動機は、理解できる。長年のなじみだからという理由で政治家を選ぶのは自由である。
しかし、国政の最高指導者に最もふさわしい政治家を選ぶのは、与党議員にとって最も重大な責務である。自民党議員の大半がその務めを果たすという点で二回も続けて落第したのだから、世襲制限はまず自民党内から始めるというのが順序ではないか。
世襲制限の主唱者である菅義偉議員は、3年前の自民党総裁選挙で、無能な世襲議員の標本である安倍晋三元首相を担ぎ出した張本人である。自らが無能な世襲政治家にくっついておいて、有権者に世襲制限を説くなどというのは、笑止千万、おのれの無能をさらけ出すようなものである。
総選挙が近づくと、この種の目くらましで有権者の目を欺こうとする動きが活発になる。有権者の眼力も試されているのである。
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