平成14年度から,文部科学省は,新たに21世紀COEプログラムを開始した。世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援することを目的として,学問分野ごとに選抜された研究拠点に「研究拠点形成補助金」を交付するという事業である。同プログラムの平成15年度の社会科学の分野の募集に対して,北海道大学の法学研究科法学政治学専攻,先端科学技術共同研究センター,創成科学研究機構は,「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」をもって応募し,採択された。
「新世代知的財産法政策学」とは,市場と法の役割分担,法的判断主体間の役割分担,私人の自由の確保という3つの視点から,知的財産法の理論的深化と政策的提言を目指すものである。その研究においては,伝統的な知的財産法学の領域を飛躍的に拡大させ,知的財産法以外の諸分野との対話を進め,財産権の正当化理論,基本的人権などの公序論,市場と組織の役割分担などの市場・組織論に及び,学際的な理論の発展と,情報の特質を踏まえた新たな知的財産法学の完成を考え,また,国際的な知的財産法の戦略の解明にも取り組む。
本拠点は,このような新世代知的財産法政策学を構築するなかで,世界に通用する次世代の知的財産法研究者と,知財実務の最先端で活躍しうる国際水準の法律実務家を養成する予定である。その活動の一環として,21世紀COE知的財産研究叢書を発刊し,新世代知的財産法政策学の研究成果を世に問うこととした。本叢書の継続的な刊行により,知的財産分野の次世代の担い手に一つの指針を提供することができるようになれば,本プログラムの拠点リーダーとしてこれに優る喜びはない。
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