この度、法学研究科法学政治学専攻、先端科学技術共同研究センター、 創成科学研究機構が遂行する「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」が、COE プログラムに採択されました。
本プログラムは、「新世代知的財産法政策学」を構築すること、 そして、世界に通用する次世代の知的財産法研究者の養成と、 知財実務の最先端で活躍しうる国際水準の法律実務家の養成を目指します。
「知財立国」という言葉に代表されるように、知的財産権に注目が集まっていますが、 知的財産法の将来像は混迷しています。
知的財産権は、所有権とは異なり、 情報を対象とするものです。情報は、 所有権の対象となる有体物とは異なり、 物理的にはそもそも誰もが何処でも自由に利用できるもので、 知的財産権は、 こうした性質を有する情報に、人工的にいわば無理やり権利を設定したものです。[図1]
従来の知的財産法学では、知的財産法が対象としている情報の特質を踏まえたうえで、 各種の知的財産全体を理論的に整序し、これからの知的財産法学のあり方を方向づける政策的な立論を具体化しうる体系が構築されたことはありません。[図2]
本拠点が構築しようとする〈新世代知的財産法政策学〉とは、このような問題を解決することを志す新たな学際的学問分野です。
それでは、新世代知的財産法政策学とはどのようなものなのでしょうか。
第一に、市場指向型、機能的、自由統御型知的財産法という考え方を一つの土台とします。これは市場と法の役割分担、法的判断主体間の役割分担、私人の自由の確保という三つの視点に留意して、知的財産法の体系化や政策的な提言を行うという考え方です。本COE では、 これを軸にして、 他分野の法理論との対話を行い、 財産権の正当化理論、基本的人権などの公序論、 市場と組織の役割分担などの市場、 組織論を組み合わせて、理論を学際的に発展させ、 情報の特質を踏まえた新たな知的財産法学として完成させていきます。
第二に、このようにして形成した知的財産法学を、体系的な〈政策学〉として発展させ、 実践的な問題に対して具体的な提言をしていきます。くわえて、 国際的な知的財産法の戦略を解明する新世代知的財産法政策学を創成していきます。[図3]
そのうえで、 これを次世代の知的財産法の担い手に伝えていくこと、 これが本拠点の目的となります。
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