覚えている人もいるだろうか。昨年の末、イスラエルがほぼ一方的にパレスチナのガザ地区を攻撃した。
親イスラエルのブッシュ政権末期、総選挙前のイスラエル中道政権は、安全保障を掲げ、そのじつ右派の票を取ることも頭に入れ、強硬策を取った。その結果、わずか3週間で、約1100〜1400人もの人命が失われ、その多くは市民、女性、子供だった。通常夜間に曳光弾として使われる白リン弾が、白昼、一般人に向けられた。
先月半ば、3年前に創設された国連人権理事会は、ブラジルや印中露を含む多数により、イスラエルを非難し、本格的調査を求めた。
イスラエルは、決議に激しく反発している。オバマ米政権は、新たに模索中の中東和平に差し障るからと採決で反対に回った。英仏は投票に参加せず、日本は棄権した。
この決議の基となる報告書は、戦争犯罪調査のベテランであるユダヤ系南アフリカ人のゴールドストーン判事が作成した。それは、事実調査を踏まえ、イスラエルの行為を戦争犯罪と糾弾し、「人類に対する犯罪」の可能性に触れた。そして半年の間に本格的な調査がなされない場合には、国際刑事裁判所に付託するよう求めていた。今回の人権理事会の決議は、その報告書の勧告を「支持」した。
周知のように、パレスチナではファタハとハマスが激しく内部対立している。ガザが後者の拠点で、報告書はその暴力をも非難しているが、政治的に得するのはハマスだ。そのハマスは核開発を推進するイランとつながっている。当然この問題への対処も視野に入ってくる。
他方、中東和平は、アラブと欧米、イスラーム教とキリスト教を隔てる世界的な根本問題でもある。その時々の脆弱な和平を維持するためと、今まで幾度も不正義に目をつぶってきた。けれどもそれは、次の紛争や暴力を正当化してもきたのである。
国連の人権理事会は、今回のような大規模で組織的な人権侵害に対処するために新設された。それぞれ友愛と命の大切さを語り、人種・文明間の対話や融和を説いてきた日米の新政権は、この新制度枠内で協力し、不正義と暴力の連鎖を止めに入るべきではなかったか。
日本が棄権すべきでない理由は他にもある。この国はこれまで累積で10億米ドル以上をパレスチナにつぎ込んで来た。これは紛れもなく血税である。それで造ったインフラは、今回もまた破壊の対象となった。
ニッコリ微笑んでお金を出し、黙って積み木崩しを傍観する。そういう外交は、そろそろ止めた方がよい。
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