経済の世界では市場原理主義が否定されたが、政治の世界では市場競争化が進行中だ。それは、選挙という「政治市場」での政党間の競争と有権者の自由な選択に偏重する政治改革の結果である。
小選挙区制は「勝者総取り」の多数決を原理とする。その下で二大政党化が進み、競争が過剰なまでに強まった。また、政党助成制度の導入や企業・団体献金の制限などによって、政党と有権者の固定的な結びつきが弱められ、無党派層が増えている。
無党派層は市場で投資や消費をするかのように投票を行う。マニフェストは「会社四季報」、あるいは商品カタログのようだ。安定株主や固定客が少なくなった二代政党は、党首の交代、財源なきバラマキ、単一争点の強調といった小手先の手段に頼りがちになる。
そこでの政党と有権者の関係は短期的であり、不安定である。二代政党の間では、票と議席の巨大なスイング(変動)が発生する。前回の自民党、今回の民主党の総選挙での圧勝は、政治の市場競争化が生んだバブルである。
こうした傾向を変えるには、まず二大政党がトップダウン的な党運営を改め、参加を重視することである。利益誘導は論外だが、候補者選考や政策決定に党員やサポーターの声を反映させ、安定的な支持者を増やしていくべきだ。
また比例代表制を維持拡大して少数政党の議席獲得を可能にすることで、二代政党による多数決型の民主主義だけでなく、穏健な多党制と連立による政権交代をめざすコンセンサス型の民主主義を視野に入れてみてはどうか。
失敗したら取り換えればよいというのは、市場原理主義的な発想だ。有権者も、政党や政治家を選択するだけでなく、長い目で育てていくことが求められる。
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