福田康夫内閣は、比較的高い支持率でスタートした。安倍晋三政権で未熟な手法が目立ち、国民が政治に不信、不安を感じていただけに、安定感のありそうな布陣が評価されたのだろう。ただ、国民が福田政権を積極的に語る機会は少なく、しらけている感じもする。
小泉純一郎元首相は競争重視の新自由主義的な方向性を打ち出し、安倍氏も競争重視の路線を継承したが、地方を中心に反撃を受けた。一方で安倍氏は、教育再生や憲法改正のための国民投票法に取り組み、国家を前面に出し、国民統合を強めようとした。これは新自由主義ではなく新保守主義だが、国民は評価しなかった。参院選でそれが分かった自民党は、新保守主義的ではない福田氏を立て、実務的なイメージを出そうとしている。
民主は法案を
その福田氏は、参院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」に臨む。この「ねじれ国会」は、日本の政治に欠けていた、真の意味での政策論議ができるチャンスだ。参院で民主党が中心になって法案や決議案を出せば、争点が明確化する。「ばらまき」とは違う形で、困っている地域にどう再配分するのかなど、日本社会をどうするかの議論が巻き起これば望ましい。
年金問題も、社会保険庁の事務処理問題だけでなく、棚上げにしていた消費税など財源問題も含め、このままの制度でいいのかを問う本質的な議論をしなければならない。インド洋での海上自衛隊の給油活動継続も、何のための活動かという根本的な目的を議論すべきだ。
ねじれ国会は民主党にとって、政権政党になりうることを示すまたとない機会だ。政府・与党の揚げ足を取るだけでは国民には通用しない。民主党政権になればこういう点が実現すると、国民に説明しなければいけない。国の枠組み、政治哲学を示すことが必要だ。
ねじれ国政に閉塞(へいそく)感が広がった場合、国民から衆院解散を求める声が出るだろう。ただ参院に解散がない以上、ねじれ解消には民主党政権しかなく、いきなりは無理という判断が働けば政界再編の可能性も出てくる。
改憲へのスタンスによる政界再編が指摘されるが、参院選で明らかになったように、国民には競争社会や労働条件などへの不安が大きい。国民にとってわかりにくい改憲での再編は、イデオロギー型の古い形の与野党対決に戻りかねない。
競争か福祉か
むしろ重視すべきは、競争重視の新自由主義と、福祉国家型の社会民主主義の方向性が混在している現状をどうするのかだ。民主党の小沢一郎代表は社会民主主義的だが、党内には新自由主義者もいる。自民党も同様だ。小泉氏が新自由主義的な新党をつくって社会民主主義的な政党と分かれるとすっきりするが、福田政権誕生で自民党も新自由主義路線から軌道修正した印象で、対立軸は見えにくくなった。
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