非正社員の不満の実態は…
急増を続ける非正社員は自らの仕事をどのように考えているのか。首都圏でパートやフリーター、派遣などの呼称で就業する6000人の意識調査を分析した本書の著者は、主婦パートの8割以上が、また派遣の4人に3人が現在の勤務先や働き方に満足しているほか、フリーターが抱く「『正社員』と比較した」給与面の不満も相対的に低いなどの事例を挙げて、多くの非正社員は現在の仕事に満足しているという。
確かに、残業や転勤を拒否できない正社員よりも、「自分のライフスタイルにあった」働き方を選択できる非正社員のほうが給与は低くても望ましいと思う人は多いかもしれない。しかし、不安定雇用だから非正社員は望ましくないという通念が「虚像」なら、正社員は雇用が安定しているから望ましいという見方も「虚像」である。そこには給与差以上に過大なノルマを課して正社員の働き方を魅力ないものに貶(おとし)め、非正社員へと誘導する企業の深慮遠謀が見え隠れしているからだ。
人々は自由か安定かと問われて非正社員を選んだのか、安定の代償に厳しい労働を迫られ正社員を諦(あきら)めたのか、「実像」の炙(あぶ)り出しにはもう一歩踏み込んだ調査と分析が必要なようだ。
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