組合は誰のために闘うのか
労働組合は誰のために闘っているのか。国によって違うが、正社員を中心にした組織率2割にも満たない組合員のために闘う日本の組合は、世界の非常識に近いと著者はいう。国際的には同一労働同一賃金を目指して、企業を超え、産業を超えて同じ職種や同じ地域で働く全ての労働者のために闘うのが常識である。実際、組織率は1けたと日本より低くても、フランスでは「職業選挙」によって選ばれた組合が使用者団体と交渉し、その成果は組合員だけではなく同じ職業に従事する全労働者に適用される。また、組織率80%を超えるスウェーデンでは全国の組合が連帯し、「労働者全体の賃金格差が縮小される」よう中央交渉が行われている。
グローバル化が進展するなかで企業競争が国際化すれば、雇用条件も国際化する。そうなれば日本的な企業内組合では、組合員の生活を守ることさえ難しい。低い賃金を甘受する非正規労働者の現在は、正社員の近未来でもあるからだ。「労働は商品でない」なら、様々な壁を超えて労働者は相互に協力すべきだ。個人と社会がゆたかになるには、著者が主張するように競争の自由よりも誰もが参加できる組合を作る自由のほうが大切である。
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