鳩山由紀夫内閣に対する風当たりが厳しい。懸念されていた景気の「二番底」は2009年度第2次補正予算の成立や輸出回復によって回避できそうだが、政治とカネをめぐる問題などで内閣支持率の下落が止まらなくなっている。
しかし、メディアが政権批判を控える蜜月の100日間は過ぎても、次の総選挙まで1300日余りも残されている。現在、国会で審議されている10年度の本予算が成立し、生活第一の政策効果が浸透し始めれば世論も変わってくるかもしれない。
子ども手当や高校授業料無償化には「バラマキ」という批判も多い。だが、所得制限を設けて給付対象を絞れば、本当に必要な人が排除されてしまう危険性がある。まずは条件を満たす人に給付したうえで、富裕者には別の形で負担を求めるのが政策としても効果的、かつ効率的ではないか。
納税者番号は必要
そのために納税者番号の導入は、異論・反論はあっても経済力に見合う公平な負担を求める観点から不可欠だと思う。
そもそも社会を構成する全員の賛成を得られるような政策など現実には存在しない。どんな政策においても誰の利益を優先し、誰の利益を劣後とするかは選挙で選ばれた政治家が最終的に判断せざるを得ない問題だ。その意味で政権交代を実現した民主党には、グローバル企業よりも家計(生活者)を優先する政策への転換が期待されていることを忘れてはならない。
「グローバル企業軽視の政策は経済学を知らない者の発想だ」と言う主流派の経済学者もいるが、それは企業の利益が賃金上昇や雇用増加の形で確実に家計に還元されていた時代の話である。
いまやグローバル企業は、ドイツの社会学者ウルリヒ・ベックが指摘するように「人を雇わない、賃金を払わない、税金を納めない」存在であり、家計だけではなく国家財政とも利害が対立している。
竹中平蔵元総務相などはグローバル企業を優遇しなければ日本経済は成長できないと主張するが、より安い賃金でより多くの労働者を雇えるように労働規制を緩和した「小泉改革」の顛末をみれば、生産量(実質GDP)と東京に本社を置く大企業の利益は増えたが、家計や地方経済には「改革の芽」さえ出なかったのは明らかである。
「いのち守る」重視
鳩山首相は1月29日の施政方針演説で、「従来型の規模の成長」ではなく「人間のための成長」を重視すると述べた。そこで強調されたのは、グローバル企業の競争力ではなく、環境をはじめ医療・介護・健康という「いのちを守る」分野の「成長戦略」である。
新自由主義的な経済政策の下で冷遇され、「いのちの危機」にさらされてきた北海道経済と道民の生活にとっては、久しぶりに希望の持てる施政方針だったのではないだろうか。
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