守屋武昌前防衛事務次官が収賄で逮捕され、防衛汚職の追及も新しい段階に入った。巨悪の摘発に向けて検察の奮起を期待したいところだが、最近は素直に検察に拍手を送るという気分になれない。佐藤優氏や田中森一氏の本を読んで、いわゆる国策捜査の実態を垣間見たせいであろう。守屋氏の収賄は立件するに違いないが、政権そのものを吹き飛ばすような大疑獄には発展しないのではないかという予感がする。捜査の手をどこまで広げるかについては、検察の大きな裁量があることは否定できないであろう。
そこで必要となるのが、国会の持つ国政調査権である。今までと違い、野党優位の参議院では、国政調査権をフルに活用できる。現在参議院では額賀福志郎財務相の証人喚問を議決したが、これは防衛汚職全体の中では周辺的な問題である。野党にとっての最初の課題は、防衛省から軍需産業への天下りの実態や、巨額の装備調達の際の政治家や官僚の動きを明らかにすることである。
幸い、守屋前次官と同期入庁の防衛省OB 、大田述正氏が自らの経験に基づいて防衛利権の実態について積極的に発言している。信頼できる情報源は存在する。まずは事実を明らかにするためにこそ、国政調査権を効果的に使ってもらいたい。
近視眼的な権力闘争の道具として国政調査権を使うならば、それはむしろ民主党の信頼性を損なう結果につながるであろう。野党は本当のテーマを見失ってはならない。
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