予算編成時期を迎え、税制論議が盛んに行われるようになった。中でも、消費税率の引き上げが重要な争点となっている。今すぐ消費税増税を実現できる政治的環境ではないことは、私も同感である。しかし、増税を論じる前に徹底して歳出削減をせよという一見もっともな正論には、私は反対である。
地方交付税や公共事業費など、赤字減らしに即効性のある大口の歳出削減は、すでに十分進んでいる。これ以上やれば、非大都市圏の地方自治体の財政や地域経済は、疲弊を通り越して、破滅する。小口の無駄遣いについては、補助金を廃止し、地方分権を徹底することで、住民自身の監視と選択によって是正するのが筋である。
むしろ、医療、介護、教育などの社会サービスの崩壊について、今こそ財政資金を投入しなければ取り返しがつかない瀬戸際まで来ている。冷酷無慈悲な財務官僚は、二言目には歳出カットを叫ぶが、医療や教育への公的支出に関しては、日本は先進国の最下位を争っているのである。
ない袖は振れないという財務省の言い訳を許さないためにも、国民は応分の負担をする覚悟を示す必要がある。誰がどの程度負担するかを決めることは、それこそ政治のテーマである。景気回復の恩恵を受けている例外的な人々には特に負担してもらう必要がある。それにしても、無駄を省くだけで社会保障の恒久的財源は生まれないであろう。税制論議のレベルアップを期待したい。
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