今日は成人の日である。私自身はいつの間にか新成人の親の年になり、別の感慨を覚える。今の若い者はけしからんというせりふは、大昔から繰り返されてきた。永井荷風が、人間は年を取って快楽を得られなくなると若い者がうらやましくなり、あれこれ説教をするようになるという趣旨のことを日記に書いていた。まったくその通りである。私も、大学の教師を20年あまり務めてきて、「最近の学生は」と言いそうになるのを時々自戒している。
今の若者はゆとり教育の世代で、基礎的な学力が弱いと言われる。そもそもゆとり教育を採用した大人が若者にそんなことを言うのは無責任の極みである。また、大学で教えていて、こと文科系の学問に関しては、学力が下がったという感じはしない。
もちろん、知的な発達の過程が昔とはまったく異なるので、古典を読んでいないとか、歴史に弱いとか悪口を言えばいろいろある。しかし、彼らは私たちの世代にない新しい能力を持っている。たとえば、所属組織を超えてネットワークを作ることは、今の若者の方がはるかに優れている。また、正義感や弱者に対する共感も衰えていない。また情報を集め、伝達することについても桁違いの能力を持っている。
雇用対策の貧困に示されるように、今の政治には若者の利益があまり反映されていない。若者がそれに気づけば、これから新しい政治のスタイルを作り出すはずだと、私は楽観的に考えている。
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