海上自衛隊イージス艦の漁船衝突事故については、発生から10日以上経っても、まだ全容が解明されていない。
この間、自衛隊が情報を小出しに明らかにし、真相究明や責任追及に協力しようという姿勢を示していないことについて、文民統制という憲法上の原則が無視されているという危機を感じる。失礼な言い方だが、自衛隊は日本を守る自衛隊ではなく、自分の組織を守る保身の自衛隊に見える。
こうした事態をもたらした最大の責任は、福田康夫首相にある。言うまでもなく首相は自衛隊の最高指揮官である。自衛隊が国民の安全を守るという本分からを見失い、保身に走る時、これを叱責することは最高指揮官の責務である。
今まで様々な政策課題について他人事のような顔をしてきた福田首相であるが、今回だけは他人事ではすまされない。最高指揮官が真相究明に断固たる決意を示さなければ、現場の実力部隊は目先の嵐をやり過ごせばよいとばかりに、増長する一方である。この際、石破茂防衛大臣を更迭し、自ら防衛大臣を兼務するくらいの気迫で事に臨まなければ、文民統制は実現できない。
防衛問題に熱心なタカ派の政治家は、日頃国民に対して日本人は平和ボケだと説教をしたがる。しかし、この言葉はそのまま首相に差し上げたい。実力組織の一人歩きを平然と見過ごしているのだから、これ以上の平和ボケはない。
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