新年度とともに、揮発油税の暫定税率が失効し、ガソリンの値下がりが始まった。民主党は、この成果をアピールしながら、福田政権を追い込むという戦術をさらに続けるに違いない。確かに、選挙によって国会の議席配置を変えれば、税金の負担がこれだけ変わる。国民の間には、これこそ民主政治だという実感があるだろう。それは、日本の政治にとって重要な一歩であろう。
しかし、ガソリン値下げを大戦果のように誇る民主党を見ていると、大丈夫かといいたくなる。真珠湾攻撃の成功で浮かれていた日本の指導者を思い起こすというと言い過ぎだろうか。
政権交代によってよりよい社会を作りたいという思いは、人一倍持っているつもりである。しかし、よい社会を作ることは、単純に税金を下げることと同じではない。高齢者に対する医療費負担の増加、働く女性に対する保育料負担の増加など、国民の生活を圧迫する負担増が新年度には目白押しである。こうした仕打ちをとめるためにも政権交代は必要だが、具体的に医療や保育の国民負担を減らそうとするならば、予算全体にわたる歳出のシフトと税や社会保険料の増加を組み合わせる複雑な作業が必要となる。政権交代によってガソリン価格引下げのようなプレゼントをさらに約束するならば、民主党にとっては自縄自縛となるであろう。
|