小沢民主党が対決路線を明確にしたことで、国会では与野党の攻防が続いている。4月27日投票の衆議院山口2区の補欠選挙の結果がこれからの政局の行方を大きく左右することになるだろう。この選挙区の中心都市は岩国市であり、2月の岩国市長選挙で負けた口惜しさを晴らしたいと思うのは、私だけではないだろう。
もしこの補選で民主党が勝てば、参議院において福田内閣に対する問責決議が提出、可決されるという流れになるだろう。しかし、そこから一気に解散、総選挙という展開になるとは限らない。民主党は攻勢の仕上げとして問責決議を可決したいのだろうが、この武器の意味と限界をよくわきまえておく必要がある。
言うまでもないが、参議院には内閣不信任を行う権限はない。だから、問責決議はあくまで政治的な意思表示である。可決されても、福田首相が居座れば、それまでである。参議院に問責された内閣の首相、閣僚は参議院の中に入ることはできないという主張もあるが、これは無理な議論である。憲法上、閣僚は国会で答弁する義務があるのであり、参議院が問責を議決しても、自民党や公明党の議員が閣僚に質問したいと言えば、閣僚の出席を拒むことはできない。
民主党の一部は、問責決議を可決した後、福田内閣がこれを無視するならば、国会審議を拒否し、倒閣か解散に追い込むという勇ましい議論もある。気持ちとしてはよく分かる。しかし、国会が空転して与野党の我慢比べとなったら、審議拒否をする側の分が悪いだろう。国会は議論の場だという建前論を打ち破るのは難しい。小泉元首相が、民主党が問責決議をすれば、民主党の責任こそが問われるだろうと語ったのも、あながち強がりではない。問責決議の後に徹底抗戦路線を取るなら、民主党は振り上げた拳の下ろし所に困るかも知れない。
衆議院の不信任決議が真剣だとすれば、参議院の問責決議は木刀である。木刀だから無意味だというわけではない。木刀を真剣だと勘違いしないで、使い方を考えれば、この武器も有効になりうる。
木刀でも叩かれれば痛い。国会の一院で非難決議が上がるということは、政権にとっては大きな痛手であることに間違いない。それが外国のメディアで広く報道されれば、サミットを主催するはずの福田首相の信頼性は大きく低下するだろう。野党は、悪政に対する国民の怒りの表現として問責決議を政治的に活用すべきである。そして、これを可決した時に内閣が無視するなら、参議院に福田首相や閣僚を引き出し、徹底的に責任を追及する議論を行うべきである。福田首相は民意に背離したレームダックだということを国民に印象づけることが、問責決議の意義である。
政治の本質は権力闘争であり、野党が福田政権を倒すという戦いを挑むことは大いに歓迎したい。話し合いだの妥協だのは、権力を擁護するメディアの言うせりふである。このチャンスを逃すべきではないという小沢代表の判断は正しい。そうであればなおさら、民主党が自公政権の悪政をいかに正すか、具体的な構想を提示する必要がある。
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