北海道夕張市が財政再建団体に転落して一年余り、メディアの関心も低下したようである。一年前は、医師の献身的な働きで市立診療所が維持され、市民のボランティア活動でまちの公共サービスを守っているといういくつもの美談が報じられた。
この種の美談は、結局のところ、財政破綻を引き起こした一部の責任者の責任を覆い隠し、市民のいわれのない苦労に対する社会の関心を逸らすものでしかない。この春から夕張市長は、十年間で三百億円の負債を返済するという財政再建計画は実行不可能だと訴え、市立診療所の医師は市からの財政支出がないので経営が困難だと訴えている。
夕張市の自主財源を見れば、再建計画が机上の空論であることは最初から明白であった。また、診療所の経営は医師の献身だけでできるものでもない。
財政破綻の原因を論じだせば字数がとても足りないが、国も北海道も放漫財政を黙認したこと、負債を増やすような開発事業を国が支援したことは事実である。非現実的な再建計画を作ることで一件落着とし、市民が健気に頑張っているというイメージを撒き散らすことは、国や北海道の責任をごまかすだけである。
もちろん、市民にも責任はあるが、だからといって国ぐるみの棄民政策を許してよいという訳ではない。
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