道路関連法案が衆議院で再可決されると、会期を1カ月近く残しているにもかかわらず、国会は事実上終わったような雰囲気が漂っている。内閣支持率は20%を割っているというのに、超不人気内閣のもとで政局は安定するという奇妙な光景である。
自民党においては、解散を先送りしたいという一点で、不人気首相でも求心力が高まる。また、9月の民主党代表選挙まで福田政権が持ちこたえれば、敵の方で足並みの乱れを起こすという期待もある。守勢に回る側が政治の停滞を作り出すのは当然である。
問題は、野党、特に民主党が攻撃の姿勢を続けられない点にある。いささか気は早いが、この通常国会の総括をしておきたい。
日切れ法案の時間切れで政府与党をあわてさせることはできたものの、全体として野党は参議院での数の優位を有意義に活用することはできなかった。既に本欄でも述べたように、参議院での野党有意の結果、行政府から野党に対して出される情報の量は飛躍的に増えた。衆議院での予算審議では、道路問題を中心にそうした成果が現れて、野党の追及は世論を喚起することに成功した。
しかし、予算と関連法案が参議院に移ると、議論はとたんに低調になった。与党が衆議院で三分の二の多数を持っているため、参議院で何らかの意思表示をすれば、衆議院で再議決されることを民主党は恐れていた。参議院における民主党の姿勢は、あまりに消極的で、政府与党の足を引っ張ることを主眼としていたといわれても仕方ない。数の優位を生かした野党主導の国会論戦は、見られなかった。
最大の失敗は、民主党において衆参の連携が取れなかった点にある。衆議院では行政の腐敗を追及して資料提出や参考人招致を要求しても、野党の主張は通らない。参議院ならばその種の武器が実際に使える。衆議院で攻め切れなかった論点を参議院でさらに突っ込むという連携が存在すれば、中身のある審議を行いつつ、政府与党を追い詰めることができたはずである。参議院の国政調査権の発動に対して、政府が非協力的な態度を取るならば、それこそ問責の正当な理由となる。総じて、参議院民主党には法案審議と政局をつなげて指示を出す司令塔が存在しなかったように思える。
道路財源特例法の処理についても、工夫の余地はあった。与党が衆議院で再議決する前に、2009年度からの揮発油税の一般財源化という政府方針を具体化するような法案修正を野党側から提案していたら、政府与党をもっと揺さぶることができていたであろう。
国会終盤では、後期高齢者医療制度が大きな争点となりそうである。これだけではなく、年金記録の照合を達成できなかったという公約違反もある。道路問題が一応の決着を見たからといって、政府追及の手を緩めてはならない。
前回の本欄でも述べたように、問責決議は直接内閣を倒す武器ではない。しかし、国民からの信任を失っていることを鮮明にするという政治的な意味はある。サミットのホストという役割で首相の求心力を回復しようとする動きに対しては、問責決議も有効な対抗手段となる。野党の戦意が問われているのである。
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