社会学者の山田昌弘氏が希望格差社会という本を出したのは4年前のことである。この本を最初に読んだときには、ネーミングのうまさに感心したが、事態はそんな悠長な感想を述べる段階ではなくなった。
希望格差を放置するとどんな社会が出現するのか、最近の若者による無差別殺人事件が教えている。犯罪を正当化するつもりは毛頭ないが、自分には希望があるからと希望を失った他人を放置すれば、自分にも累が及ぶかもしれない。本当の社会秩序は、みんなが希望を持つことによって確立される。
7月23日のNHKニュースは、約10%の高校生が授業料免除を受けており、首都圏の高校では新入生の半分が学費を払えないために退学するところもあると報じていた。この事実は、2つの意味で衝撃的である。中等、高等教育は自己実現のために不可欠の前提である。高校中退では低賃金の仕事にしかつけない。また、学校こそ若者が人間関係を築く最良の場である。学校を離れることは、孤立への道を踏み出すことを意味する。
貧困と孤立を放置して葉ならない。どこの党でもいいから、経済的理由で学校を辞めたり、進学をあきらめたりする若者をゼロにするという公約を打ち出し、実行してほしい。その程度の予算さえ出せないほどこの国の政治は貧困なのだろうか。
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