赤塚不二夫先生が亡くなったというニュースを見て、久しぶりに「シェー」という言葉が口をついて出てきた。これではよくないのだ。先生にはもっとギャグを連発してほしかった。
一九六〇年代に少年時代を過ごした私たちは、まさに赤塚作品とともに育ってきた。私は毎週漫画雑誌を買うことはできなかったので、手塚治虫などの長編ものには興味がわかず、赤塚ギャグが大好きだった。
今に比べれば子供向けの娯楽は極めて限られていたが、それだけに漫画のインパクトは今とは比べ物にならないほど大きかった。イヤミ、チビ太、バカボンのパパなどの漫画史上を飾るキャラクターが活躍するさまを同時代で見ることができたのは、本当に幸せだった。
先日、テレビで市川昆監督の『東京オリンピック』という映画を四〇年ぶりに見た。女子体操のチャフラススカの演技を見て、技術的には素朴だが優美さにあふれていることに感心した。技術の進歩がただちに感動的な演技を生むわけではない。
同じことは漫画にも言える。赤塚作品は、子どもにも真似できるほど、絵としては単純だが、作品の破壊力は抜群であった。ギャグの根底には映画や文学に対する深い造詣があった。
常に新しい笑いを求めた一生に、いつも教えられてきた。赤塚先生、ありがとうございました。
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