消えた年金記録の問題が依然として国民の不安を招いている。今度は、標準報酬月額の書き換えが問題の根源である。これは、社会保険事務所と雇用主の共謀による不正である。保険料の雇用主負担を減らしたい経営者と、保険料の徴収率を維持したい役人が結託して、年金計算の基本となる労働者の標準報酬月額を小さくして、保険料を少なくした上で、中小企業における皆年金を維持したことが、問題の本質である。
ニュースを見ていたら、社会保険事務所の職員が年金受給者の所を訪ねて事情聴取をしていた。これはほとんど無意味である。今年金をもらっている人が、二,三十年前の標準報酬月額を覚えているはずはない。夜道で財布を落としたときに、街灯の下で必死に財布を探すようなものである。
それよりも、役所に残っている記録を調べ、標準報酬月額が急に切り下げられているときの役所の担当者と当該企業の責任者に事情を聞くのが最も本質的な調査である。
こんなことは、年金事務を担当している役人に分らないはずはない。いい加減な事務処理で問題が起こったとき、ともかくかしこまって何かを一生懸命している振りをするのは、役人の責任逃れの常套手段である。役人の自己満足ではなく、年金受給者の立場から、有効な対策を打つべきである。
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