この秋以降の急速な景気の悪化によって、雇用情勢も厳しくなっている。特に気になるのは、大学生に対する就職内定の取り消しが相次いでいることである。内定は正式の雇用契約ではないので、取り消しても企業の側には罰則はない。景気の停滞が続く可能性が高まれば、企業の側は遠慮会釈もなしに内定を取り消せるという感覚なのだろう。
この数年、労働者を整理することが経営者の手腕のように言われ、労働コストを下げることが企業経営の要諦とされてきた。しかし、労働者は人間であって、ものではない。特に、これから自立した人生を始めようという若者が企業の経営事情によってもてあそばれるのは、理不尽である。
ここで我々は働くこと意味について、考え直す必要がある。人間は働くことによって社会とつながり、生きる意味を獲得する。普通の人がまっとうに働く機会を持てない社会は、確実に荒廃する。
政府が景気対策を展開することはもちろん必要である。それに加え、社会の側でも、ワークシェアリングのあり方を真剣に考える時である。規制緩和論者は、安定した職に就いている労働者を既得権勢力と呼び、非正規労働者との対立を煽っている。こうした偽りの対立軸を打ち壊すためにも、社会全体でこれから働こうとする人々にどのようにして機会を提供するか考えるべきである。
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