このところ、麻生政権支持率が二〇%程度まで落ち込んだことが、政界に大きな衝撃を与えている。こういう時は、急場をしのごうとして小手先のごまかしをすればするほど、大きな墓穴を掘るものである。今年秋に解散総選挙を行っていたならば、自民党はまだ民主党と接戦を演じることができたであろう。うまくすれば、第一党の地位を守ることができたかもしれない。しかし、選挙を先送りしたことで、麻生首相のぼろが次々と出て、人気低下は加速した。来年はいずれにしても総選挙が行われるが、もはや自民党には劣勢を挽回する力は残っていない。選挙での大敗、政権交代は必至であろう。
こんなときには、自民党の執行部を批判することで正義派を気取ったり、自民党内から逃げ出そうとしたりする政治家が現れるものである。一二月一四日のテレビ番組では、加藤紘一、山崎拓両氏が、菅直人、亀井静香両氏と意気投合し、これから協力していくことを明らかにしたそうである。
以前に本欄で書いたように、私は加藤氏を尊敬しており、下世話な言い方をすれば、最後にもう一花咲かせてもらいたいと思っている。しかし、自民党が決定的に落ち目になり、有象無象が逃げ出しを図っている時に、真っ先に民主党首脳と気脈を通じるというのは、見栄えのよい話ではない。
自民党の良識派のとるべき道は二つしかないと思う。一つは、思わせぶりな自民党批判をやめて、ただちに離党、新党結成という行動を起こすことである。本物の政治家にとっては、麻生のような不適格な人物を総理・総裁にいただくことには耐えられないはずである。麻生政権が続くこと自体が政治空白なのだから、政権崩壊、総選挙は早ければ早いほどよい。本格的な予算審議の前に新しい政権を作った方が経済対策にも好都合である。衆議院での三分の二による再議決を阻止するための議員を確保すれば、たちまち政権は崩壊する。動くなら今である。
もう一つは、自ら下野することによって、自民党そのものを立て直すことである。政権交代を叫んできた私にしても、民主党に政権が転がり込んだときに、本当に政権運営ができるかどうか、大きな不安を持っている。そこにこそ、自民党にとっての起死回生のチャンスがある。政権の座にいたまま党の体勢を立て直すなどというのは虫のよすぎる話である。自民党をここまでだめにした責任者を追放し、危機の時代に即応した政策を作り直すためには、一度野党になり、党内の人事抗争や路線論争をくぐらなければならない。
再編の季節には、政治家の血も騒ぐことだろう。しかし、自民党もだめ、民主党もだめという俗説に、野党の側が同調してはならない。日本をだめにしたのはあくまで自民党である。政治を再建する作業は、自民党に対する徹底的な批判から始めなければならない。小泉時代以来の新自由主義構造改革と、対米従属路線に対する厳しい総括を行うことこそ、これからの政治を考える作業の原点となるべきである。その点をあいまいにして、麻生批判という外見だけで合従連衡を試みるならば、政党政治全体が国民の信用を失うに違いない。今のような混乱期にこそ、政治家の存念や政党の原点が問われるのである。
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