このところ、日本を代表する大企業で非正規労働者の解雇が相次いでいる。テレビも新聞もこれを社会問題として大きく報道している。しかし、今頃何を言っているのだという疑問をぬぐえない。そもそも労働の規制緩和は、不景気の時に企業が容易に、合法的に首切りできるようにするために決定された政策である。大企業が遠慮会釈なく首切りをすることこそ、「構造改革」の実が挙がっている証拠である。
水道管にわざと穴を空けておいて、今頃水が漏れていると大騒ぎするメディアは、善意かも知れないが、愚かである。例外なき規制緩和の旗を振った経済財政諮問会議や規制改革会議の連中は現状をどう思っているのだろう。竹中平蔵や宮内義彦にもし会う機会があれば、構造改革の成果が上がって嬉しいでしょうと言ってやりたい。もし政策が失敗したと思うなら、中谷巌のように素直に謝るべきである。
雇用危機も医療崩壊も、政策転換の結果であり、人災である。被害者に対する共感は必要だが、意図的に人災を作り出した連中には怒りが必要である。この七,八年を振り返り、そのような厳しい総括をすることこそ、メディアの役割ではないか。政策を決定した人々の固有名詞を挙げた議論こそ必要である。メディア自身も、規制緩和をどう論じてきたか、きちんと反省してほしい。
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