オバマ大統領の就任は、とりあえず何かしてくれるのではないかという期待を世界中の人々に抱かせた。彼の就任演説は、高らかに理想を謳うというよりも、かなり抑制的な調子で、世界が直面する問題の難しさを国民に印象づけるものであった。
それにしても、宗教的な多元性と寛容を協調し、アメリカの自由や民主主義などの普遍的な原理を世界とともに共有するという姿勢を示したあたりには、ブッシュ政権と異なる謙虚さを感じられた。
新政権の誕生との関連で、アメリカ外交において日本の存在感が一層小さくなるのではないかという懸念を示す識者も多い。何とも滑稽な話である。世界において日本が軽んじられるようになったのは、ひとえに、思考停止のままブッシュ政権に追従したからである。
日本の存在感を高める道筋は、簡単ではないが、明白である。日本人も自国の進路をしっかり考え、自分の主張をアメリカにぶつければよいだけの話である。違う国なので、利害や理念が異なるのは当然である。オバマ大統領自身も強調した民主主義に則って、日本人が議論した結果、日本の政策はこうなりましたとまずはアメリカに主張することから、国家間の交渉は始まる。米軍再編や沖縄の基地問題について、日本人自身がどうしたいのかを考えることから、外交論議を始めるべきである。
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