通常国会が始まって三週間がたち、与野党の攻防の基本的な構図が見えてきた。民主党は、定額給付金や消費税率引き上げの問題で自民党の分裂を誘い、一気に解散総選挙に追い込むと目論んでいたが、麻生政権も案外しぶとい。補正予算は何とか成立した。渡辺喜美の離党はそれほど大きな広がりを見せていない。消費税率の引き上げ問題では、自民党得意の玉虫色の決着が図られ、中川秀直らの反乱も封じ込められた。不人気にあえぐ麻生政権だが、奇妙な均衡状態を保っている。総理大臣が権力の座にしがみつくとき、野党の側からこれを退陣や解散に追い込むことは、簡単ではない。
民主党がなるべく早く選挙をしたいと思うのは、当然である。しかし、解散に追い込むことを焦るあまり無理な攻撃を繰り返せば、かえって政権交代の大義が薄れてしまう。たとえば、自民党の分裂を誘うという戦術などは、無理筋の攻め手である。
現在の自公政権の最大の罪は、二〇〇五年の郵政民営化選挙で得た衆議院の多数を使って、後期高齢者医療制度など、国民にまったく約束していない政策を次々と決め、挙句の果てに消費税率の引き上げまで先取りしようとしたことである。今、たまたま麻生政権に反乱の姿勢を示している自民党の政治家も、これまでの反国民的な政権運営については同罪であった。むしろ、今いい格好をして麻生首相を批判している連中こそ、今まで構造改革路線を推進し、国民に対する反逆という点ではより罪深いのである。麻生政権の足を引っ張っているというだけで、民主党がこれらの政治家と手を組むならば、それこそ権力至上主義の野合である。
今度の選挙は、小泉以降の自公政権が繰り返してきた国民に対するだまし討ちを徹底的に糾弾する場である。今まで与党にいた政治家には、なぜ労働の規制緩和、障害者自立支援法、後期高齢者医療制度に賛成したのか、厳しく問い詰め、国民に謝罪しない連中は叩き落さなければならない。麻生政権に反旗を翻すことくらいで、免罪符になると思っている政治家がいるとすれば、国民を愚弄するなと言いたい。
今年の九月までには必ず総選挙がある。選挙が先送りされれば、民主党にとっては兵糧攻めにあうようなものである。しかし、功を焦ってはならない。巌流島の故事ではないが、相手のじらしに我慢できなくなると、勝てる戦いにも勝てなくなる。
四月の後半、予算と関連法案が成立すれば、与党内でも解散ムードが高まるであろう。勝負所は、五月から六月である。それまでは、政府与党の政策を批判し、自分たちが政権を取ったら社会をこう作りかえると訴えていればよい。道路特定財源、年金への国庫負担増のための財源など、攻撃すべきテーマはいろいろある。政府与党が衆議院の数の力を頼んで参議院の意思を無視した場合、野党が政策を阻止することは困難である。それでも、昨年の道路特定財源をめぐる議論のように、政府を理詰めで追及し、与党には理ではなく数しかないことを国民に印象付けることができれば、大きな成果である。今後の通常国会で、緊迫感のある論争を見せてもらいたい。
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