政党支持率で自民党と民主党が競り合う中、総選挙が近づいている。著書「政権交代論」(岩波新書)を出した北海道大の山口二郎教授に話を聞いた。(小池真一=共同)
―出版の動機は何ですか。
米国で起こった政権交代が印象的でした。市場を優先する新自由主義のブッシュ政権から、政治による変革をとなえるオバマ政権に変わった。政治を変える意義について、日本の有権者に考えていただきたいと思いました。
―戦後、日本で政権交代がまがりなりにも実現したのは1993年の細川連立政権。本書では「寄り合い所帯」ゆえに「本格的な政策転換を推進する体制には程遠かった」と分析しています。
この60年間、日本は経済発展という自明性の中で生きたから、大きな路線転換を国民自身が選ぶ必要はほとんどなかった。でも、今日の経済危機の中で、まさに政治の出番です。
―2005年の前回総選挙でも政権交代、政権選択が争点になりましたが、与党・自民党の大勝に終わりました。
政治改革のリーダーとして登場した小泉純一郎首相(当時)は、官僚と自民党を攻撃することで「何かいいことをやってくれそう」という期待を集めました。そして、日本人は熱に浮かされたように郵政民営化に賛成し、格差社会が到来した。それをどう考えるのかという検証が、次の総選挙の前に不可欠でしょう。
―地方政治では変革が先行していますが。
これまでの政治家と違うタイプの人が知事になり、従来の政治や行政の問題を率直に批判して支持を集めています。有権者の「政治を変えたい」という願望を先取りしているのでしょうが、どんな方向に変えるのかを問わないといけません。
―政権交代論も含めた政治学の責任として本書は「市民の政治理解を深め、政治的想像力を広げるものでなければ」と強調していますね。
「政治は変えられる」という確信を人々に持ってもらうことがまず重要です。その上で、与党を交代させるかどうかも含め次の政権を皆で選択する、そんな選挙を実現すべきです。
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