このところ、政治家の世襲制限をめぐる議論が盛んである。血筋がよいことだけが売り物の世襲政治家が首相になったものの、その重責に耐えきれずに辞めてしまうということが相次いだため、世間の世襲に対する目は厳しくなった。
しかし、選挙に立候補する権利というのは民主主義の基本である。たまたま今、世襲政治家が無能をさらけ出したからといって、制度を変えればすむという話ではない。
立候補の自由は民主主義にとって不可欠である。一定年齢に達した人間は、誰でも、どこからでも立候補できるという権利は、奪ってはならない。これは、選挙に関するルールの中でも、便宜的に変えられない基本中の基本である。
たとえば、字が読めない政治家が跋扈するのは恥ずかしいということで、政府が字の読めない政治家を排除するために政治家資格なる検定試験を行い、それに合格した者でなければ立候補できないということだって起こりうるかも知れない。そうなると民主政治は終わりである。
世襲制限などと大騒ぎをしなくても、無能な世襲政治家を排除することにつながる簡単な改革がある。それは、投票用紙を記号式に変えることである。そうすれば、政治家ブランドの価値は下がり、無名の新人にもチャンスは広がるだろう。
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