小沢一郎代表の後継者には、鳩山由紀夫幹事長が選ばれた。党内の勢力配置からすれば、当然の結果に見える。民主党の国会議員、特に参議院議員は、党を存亡の危機から、政権交代をねらえるまでに発展させた小沢前代表の路線とリーダーシップを評価しており、それを継続させるために鳩山氏を選んだと解釈すべきであろう。
私は、代表選挙に自分も1票を投じるという想定をした時、大きな矛盾に悩んでいた。私自身、「生活第一」のスローガンを小沢前代表と一緒になって考え出した一人であり、この路線を続けてほしいと願っていた。その意味では、鳩山氏の勝利が望ましかった。しかし、迫り来る総選挙において、政権を懸けて自民党と激突するリーダーとしては、岡田氏の方が望ましいと思っていた。岡田氏の誠実な人柄とひたむきな姿勢は、麻生太郎首相との対照を作り出すためにこの上ない武器となる。
今回民主党議員の多数が鳩山氏を選んだということは、彼らが外に向かって攻めるリーダーよりも、内側の結束を固めるリーダーを選んだということを意味する。しかし、そこに民主党の最大の弱点が潜む。
前回鳩山氏が代表を務めていた時に、雑誌の企画でインタビューをしたことがある。その時私は、「鳩山さんは子どもの頃喧嘩をしたことがありますか」と尋ねたら、ありませんとの答えが返ってきた。野党党首として政府を追及する際の甘さは、育ちの良さに由来するのかと納得した記憶がある。
政権交代は、いうまでもなく権力をかけた戦いに勝ってこそ実現する。今回の西松献金事件に関する検察の不公平にも見える摘発のように、意図するかどうかは別として、権力を目指す挑戦者の側には様々な妨害も働く。そうした邪魔をはねのけ、権力を追い込むためには、政治の現状に対する怒りと憤りが不可欠である。
今度の総選挙は、国民にとっては4年前の総選挙に対するリベンジの場となる。あの時、郵政民営化という単一争点で国民からの圧倒的な支持を得た自民党は、その後、改革の名の下に医療や社会保障の破壊、行き過ぎた規制緩和による労働の破壊など、人間生活と社会の土台を崩壊させた。いわば、郵政民営化総選挙は壮大なリフォーム詐欺だったのである。したがって、この4年間の政策的誤りを追及し、どのような方向に日本社会を立て直すかを決定するのが、今度の選挙の課題である。
鳩山新代表はその戦いの先頭に立たなければならない。小沢前代表同様、地域を歩き、人々の苦しみや悩みを受け止めること、人災とも言うべき構造改革の被害者の怒りや憤りを我がものとすることから、戦いは始まる。
与党側も、さすがに貧困不平等の広がりに危機感を持ち始め、安心社会実現を唱えだした。そうなると二大政党の間の対立軸は見えにくくなる。そのような目くらましをはねのけるのも新代表の使命である。財源をどうするなどという技術論にはまっては、官僚に支えられた与党に勝てるはずはない。
政党が政権交代に向けて国民に訴えるべきことは、どのような日本を作りたいのか、人々の生活をどう変えるかということである。目標を国民が共有してくれたら、その上で負担のあり方を議論すればよい。政党は算盤勘定をするよりも、まず志を明確にしなければならないのである。
(共同通信配信、中国新聞、信濃毎日新聞等の地方紙に掲載05月18日)
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