五月一六日に鳩山由紀夫氏が民主党の新しい代表に就任して、ようやく総選挙に向けた体制が整った。補正予算の審議でひとしきり国会論戦が戦わされるのだろうが、政局は夏以降の総選挙に向けて動き出すことになる。
選挙の争点としては、経済対策、雇用や社会保障など、国内政策が思い浮かぶ。最近は、政府与党も貧困不平等問題を放置しておいてはまずいという判断が働いたようで、安心社会実現をキャッチフレーズに、社会保障や雇用面での政策転換を図っている。そうなると、生活第一を掲げる民主党との間で、差異が見えにくくなるかもしれない。しかし、二大政党がともに新自由主義的改革の誤りを見据え、国民生活の再建のための政策を競うということになれば、それは歓迎すべき事態である。単なるスローガンの連呼ではなく、より具体的な政策を競ってほしい。
国内政策が与野党あげて生活保障にシフトする一方、外交、安全保障については、与野党の対決を見てみたい。アメリカでイラク戦争反対を唱えていたオバマが大統領に就任したことで、世界中を見渡して、イラク戦争を支持したことについてけじめをつけられていないのは、日本だけとなった。北朝鮮という脅威が近くに存在する日本にとって、アメリカを支持する以外に道はないという粗雑な議論がまかり通り、思考停止のまま戦争を支持したことについて総括しなければ、日本は自立した国家として生きていく能力を持てない。
民主党はこの点について、自民党との明確に差異を打ち出すべきである。小沢前代表は、日本の安全保障にはアメリカ第七艦隊の存在だけで十分だと発言し、政府与党や一部のメディアからは批判を受けた。しかし、これはきわめて重要な問題提起だったと私は考えている。実際に沖縄に駐留する海兵隊は、日本を守ることができるのか。先日の北朝鮮によるロケット(ミサイル)発射実験の際に話題になったミサイル防衛システムは役に立つのか。具体的な吟味が必要である。それなしに小沢発言を否定するのは、日米安保という護符に縛られた条件反射でしかない。
鳩山代表は、かつて「常時駐留なき安保」という新機軸を打ち出そうとした。これが単なる言葉の遊びにとどまってはならない。仮に民主党が政権を取ったら、日本に駐留する米軍の規模をどの程度まで削減するのか、具体的な構想を示すべきである。日米安保条約を廃棄するという選択肢は現実的ではないとしても、安保体制の拡大か縮小かは、国民自身の選択の対象となるテーマである。
さらに、アジアとの関係についても、民主党と自民党の違いは大きいはずである。偏狭な自国中心主義に陥るのではなく、韓国や中国と戦略的な協力関係を構想できるのは、民主党の方である。
オバマ大統領が核軍縮に向けて積極的な姿勢を見せている今、日本も受け身の外交から脱する時である。
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