先週の新聞各紙の世論調査で、麻生太郎政権支持率は軒並み急落した。また、次の選挙後に望ましい政権の枠組みとして、民主党中心の政権を望む声が圧倒的多数になっている。もはや、自公連立政権は落城寸前である。この期に及んで選挙前に麻生総裁を引きずり下ろし、選挙用の新しい看板を立てようという動きも始まった。悪あがきという言葉がこれほど当てはまる所業はない。溺れる自民党は、もがけばもがくほど深みにはまっていくのである。
日本の民主主義の深化にとって、政権交代の気運が高まったことはとりあえずめでたい話である。しかし、民主党を軸とした政権を作ったところで、本当に今の日本の課題を解決できるのか、逆に日本をおかしな方向に導くのではないかという不安を持つ人も多いだろう。特に、本誌の読者の中には、自公連立政権をたたきつぶすのは結構だが、民主党も信用できないと考える人も多いに違いない。そのような悩みを抱えた読者のために、私なりに政権交代の積極的な意義について説明したい。
政権交代には、権力の交代それ自体の意味と、ダイナミックな政策転換を成し遂げるという意義の2つの側面がある。後者の政策面での変化は、現段階では予想できない。戦後60年の間、ほとんどまともな政権交代を経験したことのない日本では、まず民意によって権力を交代させること自体に大きな意味がある。
特に、警察・検察に対する抑制、メディアの自由化という2つの面で、政権交代は好ましい影響を与えるであろう。
このところ警察や検察が市民を弾圧する事件が相次いでいる。彼らも所詮役人であり、常に上を見ながら仕事をしている。漆間巌官房副長官のような人物が官界のトップに君臨するからこそ、現場の警察・検察も好き放題できる。自民党に逆らう者を弾圧することに何のブレーキも働かない。民主党には弁護士出身のまともな人権感覚を持った政治家も多いので、彼らを法務省や国家公安委員会のトップに据えれば、警察・検察に対する抑止効果は働くであろう。
また、メディアもどの政党が政権にいるか分からないという状態が当たり前になれば、もっと自由に議論ができるようになるはずである。自民党のタカ派議員がNHKの番組制作に干渉するのも、自分たちが未来永劫政権の座にあるからという驕りの故である。
民主党に改憲派の政治家が大勢いるという不信もある。私に言わせれば、現状では決して改憲派は大勢ではないし、改憲論者を自称する鳩山由起夫代表も、反動的な改憲構想を持っているわけではない。1つの懸念すべきシナリオは、選挙の結果、自公も共産党以外の非自公も過半数を取れないという状態が生まれた時、2007年11月の時のような大連立という構想が出てくることである。元老気取りの連中が大連立を仕組み、北朝鮮の「脅威」をだしに憲法改正を画策するというのは、ありえるシナリオである。
これを避けるためには、民主、社民、国民新党の連立に国民が明確な過半数を与えることが必要である。比例区では好きな政党に入れればよいが、小選挙区では非自公を第1の基準に選ぶべきである。
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