麻生首相は結局党役員人事に手をつけることができず、人事の大権もふるえない惨めなリーダーとなりはてた。このままでは、仮に今月中旬の解散を志向しても、解散を決定する閣議で閣僚の造反に会い、かえって退陣を余儀なくされるのではなかろうか。
麻生首相を引きずりおろして表紙を付け替えるという話も、お粗末きわまる。1年も持たない首相を3人続けて選ぶということは、自民党自体が指導者を供給する能力を失ったということである。この種の悪あがきをすればするほど、国民は自民党を軽蔑する。いずれにしても今度の総選挙は負けるのだろうが、権力にしがみついてじたばたすればするほど、負け幅は大きくなる。自民党が復活するためには、安倍政権以降の醜態を素直に国民にわび、自ら進んで野に下ることこそ、捷径である。
イギリス労働党の長老政治家、ジェラルド・カウフマンは、『大臣になる方法』という面白い本を書いているが、その中に「奥ゆかしく政権を去る方法」という1章がある。民主政治なのだから勝ったり負けたりは当たり前である。国民の信を失った時には、潔く権力を去らねばならない。また、奥ゆかしき敗者になることこそ、再び勝利をつかむための出発点である。
自民党は今こそ潔さという美徳を思い出すべきである。
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