8月6日、広島原爆記念日に田母神俊夫元航空幕僚長が広島市で講演を行い、核武装を主張したというニュースを見て、怒りを覚えた。被爆者の心情を踏みにじるという批判は当然だが、私は日本の国益や外交戦略という観点からも、田母神氏の議論が愚劣きわまりないものだと主張したい。
日本が核武装をすれば、アジア各国の大きな警戒を招くのみならず、日米同盟が土台から揺さぶられる。オバマ大統領が、唯一の核使用国としての道義的責任を感じていると言った直後に日本が核武装をすべしと主張するのは、まさに復讐のためと映るであろう。核武装を実現すれば、アメリカは日本を仮想敵国と考えるかもしれない。核を持った日本は間違いなく世界から孤立する。その意味では、現在の北朝鮮の立場に近づくのである。真に国の将来を考える人は、あのような短絡的発想は取らないはずである。
自民党を中心に、政治家の中にも田母神氏の同類がいる。今回の選挙では政党の選択が強調されているが、政治家個人の戦争観、歴史観も厳しく問う必要がある。先制攻撃や核武装を主張するような、威勢がいいだけで、多面的な計算ができない政治家を選んではならない。
核のない世界に向けて、日本は自らの経験を政治的な武器として使うという政治的賢さを持たなければならない。
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