ベンチャーキャピタル(以下VC)に関する包括的調査は現時点で二つある1)。ひとつは日本経済新聞社が実施するもので、他のひとつが経済産業省:ベンチャーエンタープライズセンターによる本調査である。両調査とも調査対象はほぼ同じである。後者はアンケート調査を主体としており、前者はそれに加えて記者による聞き取りが加わるという点に違いがあるものの両調査間に大きな相違が生じる理由はない。ところが、2000年調査では、VCの投資残高でみて2000億円もの差が生じた。それは、ひとえに、単年度投資額でみると最大規模のVCが後者には回答せず、前者にだけ応じた結果である。
アンケートであるから、もちろん強制力を持たず任意なのだが、調査結果にこれだけの違いがあることは統計の利用者にとって問題が残った。これは、もちろん、調査する側の大きな反省点でもあった。本調査の研究会では急拡大した大手VCの統計上の扱いをめぐって議論がなされ、統計不連続の問題はあるものの2001年度調査では協力を要請することになった。
2001年度は186社にアンケートを送付し、この大手VCを含めて115社より回答を得た。186社は過去になんらかの型でベンチャーキャピタル事業を実施している会社でかつ所在確認のとれたところである。しかし、この中には、この数年間まったく投資事業を行っていない会社も数社程含まれている。会社に数人の社員はいるものの投融資の残高管理が主な仕事という会社で、それが非回答の理由である。こうした会社を除くと現在VCとして何らかの活動している会社は180社程度となる。回答企業の115社は大方は活動的VCであるから実際の回答率は公表値よりもいくぶん高いものと考えられる。
日本には、現在までのところベンチャーキャピタル協会なるものもなく、またVCの業務内容を明記した法令のようなものもないため、VCであるかどうかは自称でかまわないことになっている。したがって、統計をつくることの最初の困難、すなわち母集団を囲い込めないという問題がある。しかし、現状はいたしかたないのであり、その分、選択の役割を調査委員会が負っていくべきと考えている。
また、回答率を上げる努力も必要である。非回答の理由の中には人手不足というのも多い。確かに、送られてくる回答用紙はかなりの分量であり、かつ決算期の関係で、回答値を調整しなければならないケースもある。この点、諸外国の例を学び、回答側により負担 の少ない方法を考えなければならないだろう。また、アンケート方式という基本的な受け身姿勢からもう一歩積極的に出られるか、調査側の体制も含めて工夫が必要である。
もうひとつ本調査の利用者に断っておかなければならないことがある。それは調査期間についてである。昨年は1999年7月〜2000年6月であったが、今回は2000年10月〜2001年9月とした。つまり、調査期間に空白ができたが、これは諸般の事情でやむを得なかった。今後は、10月〜9月で統一し、継続していきたい。
<1兆円>
2001年9月末の日本のVC(日本で投資活動を行っているもので国籍は問わず)の投資残高は1兆円を超えた。これは画期的な事である。日本にVCが出現したのはちょうど30年前であるが、ようやくひとつの産業として認識される規模に達したのである。
本体投資(VCが自らの資金で投資するもの)と組合投資の割合をみると、後者が伸びている。これはここ2〜3年の傾向であるが背景として次のような事が考えられる。
@ 数年前までは、ある投資案件にVC本体とそのVCが組織した組合ファンドが相乗りしていたケースが多かった。しかし、最近では、ファンドを組成する際にVC自身が出資分を大きくとり組合員の1人として投資に参加するケースが多くなっている。これは、VCのポリシーの変更である。一部に、組合よりも本体投資の方がパフォーマンスが良いという事実があり、それが組合員からの批判の対象になったことへの対応である。わかりやすくいえば、有望な投資は本体で、そうでないものは組合でというモラルハザードを形式的に防ぐための措置である。
A 1998年に施行された有限責任投資事業組合法が浸透し、後にみるように、これに基づく組合が増加したこと。
B 超低金利が長期間続いているため、機関投資家には有望な投資スキームに参加したい意向が強まっている。年金や一部の富裕な個人にも同様の傾向が見てとれる。
C 調査期間の前半(2000年10月〜2001年3月)、特に2000年中はIT分野への投資ブームが残っていた。しかも、かなり大型のファンドによる投資があった。
年間の新規投資額は前年調査とほぼ同額であった。しかし、2000年下期は増、2001年上期は大幅減となり調査期間の前後で対照的な結果となった。IT投資の盛衰がはっきり結果となって現れたものとみられる。一昨年の調査でも、2000年4〜6月でみるとIT投資は既に減少の傾向を示していたから、日本でもこの分野への投資ブームは一段落したとみることができる。
2001年上期の新規投資の減少については二つの見方がある。第一の見方は、この減少を2000年の単なる反動減とみるものであり、第二のそれは第四次のベンチャー投資ブームが去ったとみるものである。
日本のVC投資にも循環性の増減が認められ、かつそれはアメリカの循環に1〜2年遅れているという指摘がある。日本のベンチャー投資が復活した2000年後半にアメリカは既に減少に転じていた。そして最新の情報では2002年に入って増加に転じたという。となると、日本の2001年はIT投資の一段落による短期的な減少とみることが妥当である。
後に投資組合の項でみるように日本にはVC投資を増大させる構造的要因がある。さらに金融構造をみても次のことが言える。金利ゼロのなかで恩恵を受けていないのは預金者である。銀行を中心とする間接金融機関は年度毎にみる限り、また本業の収支を示す業務純益でみる限り最高益が続いている。それが表面に出ないのは過去の不良債権処理に使われているからである。しかし、それは預金者にいつまでも金利を払わない理由にはならない。また、預金金利の範囲が狭くなっていることから利子収入も小さくなることになる。となると金融機関が今後の目標にするのは高収益事業であり、そうなれば投資事業は最も有力な次期基幹事業となる。VC投資に関しては、もちろん短期的変動はあろうが長期的には構造的追い風が吹いているのである。
投資先の分野では一時の勢いこそないが、半導体、電子部品、コンピュータ関連、IT関連が多い。しかし、今後の重点分野を聞いてみるとバイオ、医療関連に興味を持っていることがわかった。
昨年の日経新聞による調査でも、分野別の投資先で今後有望なものにバイオ・健康・ 医療をあげるVCが多かった。2001年中には、この意向を実現する形で、バイオ系専門ファンドがいくつもつくられた。もともと、この方面に知識を持っている商社系などが積極的である。そして、もうひとつのバイオ系ファンドの特徴はその金額の大きさであり、100億円超のファンドも出現している。バイオ系企業の育成には巨額な資金が初期段階から必要なこと、そしてまた日本にバイオシーズが潜在しているという期待の反映とみられる。
2001年のひとつの話題は、“大学発1000社”という平沼プランによって触発された大学発ベンチャーである。2001年の8月現在で275社余が既に活動しているが、その業種をみるとたしかに情報系についでバイオ系が多い。大学にはこの分野でまだ産業化できそうな研究シーズが多いのである。1998年の大学等技術移転促進法の施行以来、全国各地の大学に技術移転機関(TLO)が設立されている(2002年2月末で29機関)が、これらが出願している特許を分野別にみるとやはり医薬・生物・食品系が多い。北海道TLOは55件を出願しているが、いわゆるバイオ系は20件を占める。機械電気系10件、情報系3件である。最も、分野別にどこが多いかは各大学によって様々だろうが、医薬バイオ系が大学シーズとして有望なことは間違いないだろう。こうした状況を読んで、大学発ベンチャーにもっぱら投資しようという投資事業組合もつくられている。しかし、バイオ企業はシーズ研究から応用・製品化までのリードタイムが長いなど課題も多い。日本のVCの望みどおりにバイオ産業が次のVC投資の中心になるかどうかは今後の推移をみる必要がある。
地域別投資の内訳をみると、二年連続で東京一極集中が進んだ。特に2001年は48%と約半分の投資が東京で行われている。地方経済の活性化にはベンチャー企業の振興が肝心だと言いながら、この結果は問題だとする意見もある。また、日本の産業発展はまず東京集中から始まりやがて地方に展開するというパターンをとるのだから、この現象は放置しておいてよいという見解もある。本調査委員会ではどちらかの見解を採用するということはせず、事実だけを示しておきたい。雇用が日本の問題となり、かつベンチャー企業が著しい雇用創出能力を示すことになると地方VCの育成はひとつの課題になるであろう。
2000年下期に株式公開はハイペースで進んだため、VCが投資して公開に至った企業は延べ数(ひとつの公開VBにいくつものVCが投資しているため)で463社と急増した。多くのキャピタルゲインがVCにもたらされた訳であり、金融業の中でのVCの魅力が示された年でもあった。
<投資事業組合:ファンドについて>
投資事業組合は調査期間中に46新設され、2001年9月末に存続が確認されているものは、307本であった。これは1985年の調査以来最高である。金額でみると、9200億円に達し、日本のVCの中心・主流を占めている。組合への出資者をみると金融機関、事業法人で6割近く(金額ベース)を占める。これに保険会社を加えると約3/4になる。このような 機関投資家の優位は日本の歴史的傾向であるが、近年の注目点は年金(3%)個人(4%、いずれも金融ベース)がまだ小さな割合ながらの登場したことである。年金については運用ルールが改正され、投資先一件毎の安全確認義務がポートフォリオ全体のそれに変更になったことが影響している。2001年にはある企業年金が大手VCが執行組合員である組合に出資し、日本の年金によるVC投資の事例第1号になった。しかし、その後、続々というわけにはいかなかった。というのは、年金運用者にとっては依然としてファンド選択のための充分な情報が提供されていないからである。本調査のいわゆる“ベンチマーク”情報はそうした不満を埋めようとする試みである。より信頼性のある情報にし、年金等の機関投資家にとって利用価値の高いものにしていかねばならない。年金運用担当者にとって重要なのは比較の基準である。あるVCのあるファンドを選んだ理由が第三者(この場合には年金の加入者)に示せることが必要である。
投資事業組合は2000年はまさに当たり年だったが、2001年1月〜9月でみると、14ファンドで件数、金額とも1999年通年と近い数になっている。また2000年中に設立されたファンドは大型の50億円超がいくつかあったが、2001年に入ってからは小型化し、5億円以下のものが多くなった。ひとつのファンドの運用担当者の数が2〜3人であることを考えれば50億以上の規模よりも5億〜20億円のあたりが妥当なサイズとも考えられる。2000年はファンドサイズの面でもややブーム化していたと考えられる。
その他、ファンドについて注目すべき点は以下の通りである。
@ 1998年の有限責任投資事業組合法は確実に浸透し、法律施行以来設立された65ファンドの半数に近い30ファンドがこの法律の適用下にある。ただこのファンドをめぐる税法上の取扱いはまだ確立していないものが多く、関係者に混乱を与えている。
A 投資ステージに関しては、2000年以来の傾向であるアーリー化が2001年にも観察
された。シーズ専門などというファンドもここ2年の現象である。逆にこれまで主流を占めたバランス型が減少している。バランス型というのは、特に投資先の企業のステージを定めないという意味だが、別の見方をすれば“良さそうなら何でも”という姿勢の表現でもある。シーズ型やアーリーステージ型は、バランス型に比べれば当然リスクは高く、そこに進出するにはVCの側に知識と経験の蓄積がなければならない。近年の傾向は、単にレイターステージがいわゆるオーバーフィッシングで利益が期待できなかったこと(つまりクラウディングアウト)の結果ではないことを期待したい。
BファンドのIRRについては、昨年よりも若干改善して6,51%となった。アメリカの20〜100%に比べると見劣りするが、日本の低金利下を考えれば魅力的といってよい。また、このTOPIXベースの年間パフォーマンスを上まっている。つまり、ほとんどのファンドがその設立時に上場株式に投資した場合よりもよい結果を示している。VC投資の魅力は一応示され、数字でも確認されることになった。ただ、上場株式への投資は、相場の上昇局面で売却するなどの操作が可能であるため両者を単純に比較することはもちろんできない。またVCファンドのパフォーマンスが良いといってもここ2年の現象であり、かつ開始年毎にバラツキが相当ある。本来なら、VCは成長企業に投資する。成長企業はある程度は景気循環に影響されるにしても、またある程度はそれから相対的に自立しているものだろう。なぜなら、成長企業は独自の技術と市場を持っているからである。ベンチマークが開始年によって大きくバラつくという日本特有の現象はVCの未成熟の表現なのかもしれない。
<Topics>
調査期間中を振り返っていくつかトピックスを拾っておこう。
話題のひとつはVCの二次市場である。ファンドには設定期間があるため、被投資先企業が公開する前に組合が満期になってしまうケースが当然起こりうる。この場合は次の3つの方法がある。ひとつは被投資会社の株式をそのまま組合員に配分する。第二は組合の存続期間の延長。そして最後は第三者への売却である。第一の方法では、出資者の合意がなかなか得られないし、株式の評価という難問がある。第二の手法は組合員が同意すれば可能であるが、好ましくない。第三の方法がいわゆる未公開株式の買売になる。日本でも1998年に未公開株式の買売をする(買い取りも仲介もある)会社が設立された。イギリスには、この業務を専門とする会社があり、日本でも業務を開始した。こうした二次買取業務には、いわゆるリビングデッドや公開意欲をなくしてしまった被投資会社も対象になる。伝えられるところでは、一株一円などという買いたたきもあるという。しかし、これは被投資会社にとってはかなり問題である。ある日突然、筆頭株式が変わってしまうのは経営の安定上好ましくない。被投資会社の合意をどこまで尊重するか、日本的取引慣行を考慮して今後の方向を考えるべきだろう。
他のひとつはエイジェンシー問題である。
数ではまだ少ないが、VC会社自体が公開企業になるといわゆるエイジェンシー問題が二重化する。ファンドを組成すると、投資家はプリンシパル、VCはエイジェントとなる。実はこの両者の関係もいかにあるべきかは整理されていないのだが、株主が入ってくると株主―ファンドの運用者=会社も同様な関係となる。どちらを優先するか、どの程度優先するかという問題が生じる。日本では一般に株主権が弱いために、ファンドの具体的な投資情報は株主に公開しないケースが多いが、今後ともそういうことでよいのかは議論の余地がある。VCが未公開株に投資した際には積極的に関与し、エイジェンシー機能を働かせるのに、自分の株主にはそうさせないというのはおかしい。
このようにVC会社自体が公開会社になることには問題もあるが、日本では公開企業ということの知名度、資金調達の多様化などの誘因があるため、公開への動きは一定程度あるものと推察される。
<展望>
VC業界を構成する各社は、その出自母体によって証券系、銀行系などと呼ばれてきた。しかし、近年は少しずつVC各社の独自性が強まっている。またVC業界に様々な分野からの参入(保険、地方銀行、商社、事業会社、ベンチャーキャピタル会社にいた個人の独立等)があったことにより、VCの持つ共通性が確認され、その分出身母体を云々することは意味がなくなりつつある。こうした現象は投資残高1兆円という量的転換点に対応するVCの質的変化のひとつであると思われる。今後はVCはVCであって、金融・証券業界にある位置を占める産業へと質的に向上し、さらに投資残高を増大させるであろう。アメリカとのGDP比でいえば、2,3兆円の規模にすぐになってもおかしくない。しかしそうなるためにはいくつかの条件が必要である。その第一は、投資先であるベンチャー企業の数の増大と質の向上であるが、それは言わずもがなであるし、ベンチャーキャピタルという話題よりも大きな問題である。
第二は、VC支援体制の整備である。その一つの内容は法的枠組みだが、エンジェル税制の拡充を除けば、ほぼ満たされた状況にある。むしろ、支援法が多く、各官庁、国と地方がそれぞれに展開している支援活動を使い易いように工夫する時期にきている。支援体制という意味で重要なのは、法律の一段下の問題である。それはVCをめぐる会計、財務、税務等の実務に関する標準の確立である。投資契約書等の標準化も同様だ。もちろん、こうした課題は業界の自主的努力によって達成されなければならない。
第三の問題は日本の金融業の主流を占める間接金融機関がVCビジネスにいかにかかわるかである。間接金融と直接金融という区分は物理的枠組みとしてはもはや意味がなくなっている。しかし、現実には銀行等の投資業務への進出はさほど進んでいない。その最大の理由は精神的障壁であろう。1000にひとつの失敗も許されないという間接金融の風土で培った精神はなかなか投資の世界には踏み込めない。また、銀行が本体でVCは衛星 のひとつという位置づけもまずい。両者の間のファイアーウォールを積極的に踏み越えていく動きは生じにくい。しかし母体とそのVCの間の上下関係が今後とも絶対的であるとは考えられない。というのは、既に述べたが間接金融だけでは母体そのものが保てない状況になってきたからだ2)。間接金融の世界から誰がどのような形で“ルビコン“を渡るかが今後の焦点となる。
第四は、これも極めて重要な問題であるが、VC自体の企業価値創造能力である。
今回の初の試みとして「状況調査」のなかで、VCが投資先にいかなる支援活動を行っているかを聞いてみた。回答したVC全体では、やはり資金調達関連でのアドバイスが多かった。これはVCに働く人々が何らかの意味で金融マンであり、この方面の知識が個人的にも組織的にも豊富であることを反映しているのであろう。逆にIPO関連、技術開発などでは今のところ低いのであるが、大手VCや特化型のVCをみると、こうした分野にも人材が揃ってきており、今後の期待は高いものと思われる。また、VCから被投資先企業への役員派遣も調査全体でみるとさほどに比率にはなっていない。しかし、もっぱらハンズオンを目指すVCも出現しているし、イギリスの3iが持っているような人材バンク組織を持つところもある3)。言うまでもないことだが、VCが単なる投資家と違うのは、投資先の企業価値を高める努力を経営者と共にするからである。だからVCは未来を拓くのであり、金融界で名誉ある地位を占められるのである。
1)
トムソン・ファイナンスが半期(2001年〜9月期)のベンチャーキャピタル調査を今回初めて発表した。だからこれを加えれば調査は3つあることになる。この調査は、同社が独自に選定基準を作り11社を対象に行った調査である。これによれば、11社で2001年3月末の残高が9600億円に上る。昨年のVEC調査では業界の上位寡独を示すグラフを附 したが、今回のトムソン半期調査でも日本のVCの特殊な業界構造が示されたことになる。
この他にも同調査で明らかになったのは、上位のVCの投資先が国内に回帰していることだ。1997年のVC投資残高のピーク時に国内投資が80%になって以来、日本のVCは海外志向を強めたが(1999年は国内投資比率56%)以後、回復基調をたどり80%台に復帰した。
また、上位VCだけでファンド出資者をみると、銀行の比率が意外に小さく7%であった。これは、11社の中にいわゆる銀行系が2社しかないことも反映している。逆に上位VCのファンドには個人比率が相対的に高い(7%)。
冒頭に述べたように、日本には150社を越えるVCがあるが、寡占的地位を持つ上位と全体とを比べると様々な面で属性の違いがある。この相違は、数でいうと銀行系子会社が多いこと、最近の現象として小規模のVCが増加していることによる。証券系とか銀行系とかいう出自母体を考慮した呼び名こそVC業界の自立の障害物であるが、ともかく現状は様々な性格を持ち、かつ規模のバラツキも大きい(残高でみると、第1位と100位では1000倍以上の差)業界である。
2)
間接金融機関の最近のVC進出については別のところに書いたので参照されたい。「ベンチャーファイナンスの現段階、金融機関のベンチャー支援の現状と課題」『金融ジャーナル』2002年2月号
3)
日本でもVCによる被投資会社への役員派遣は徐々にではあるが生じている。高山総合法律事務所の門脇氏のまとめによれば、役員派遣は積極的な10社で40人程になっているという。中には、投資先会社が13社で役員派遣が11人というところもある。いわゆるハンズオンは時の流れである。イギリスの最大手のVCであるスリーアイは専門の人材派遣会社を組織しており、資金も人もという体制を持っている。だからこそMBOやMBI(Management Buy In)とかの独自のスキームを展開できるのである。
出典:財団法人ベンチャーエンタープライズセンター