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PARADIGM OF DEBATE & JUDGING PHILOSOPHY

曽野裕夫(九州大学法学部助教授)

T PARADIGM OF DEBATE

1.

私は resolution こそがラウンドにおける議論の焦点だと考える.すなわち,本大会におけるディベートとは,大会規程の制約の下で行われるところの,「予め定められた resolution を肯定すべきだと主張する AFF と,否定すべきだと主張する NEG の,議論のコンテスト」である.ジャッジはこのコンテストについて,勝敗を決する。

1.1

なお、その際、presumption は against the resolution である.すなわち,AFF が resolution を肯定するに足る論証をしなければならない. 言い換えれば、AFF が論証責任 (burden of persuasion) ―通常、証明責任(burden of proof)と称されるが、証明責任は《事実》に関する証明に限定して使うことにしたい―を負い(たとえば,NEG の提示する CP と resolution の net benefit がイコールの場合(優劣不明の場合)には NEG に vote する)、論証責任が NEG に移ることはない.

1.2

1.2 もちろん、NEG に反証責任 (burden of rejoinder) が生ずることはあるが、それは AFF が論証責任を一応果たした場合に、すくなくともAFFとNEGの議論を優劣不明のレベル(つまりイコールのレベル)にまで論証を押し戻さなければ NEG は不利益な判断を受けるということにすぎず、その場合でも論証責任は依然としてAFFにある(したがって、優劣不明のレベルまで反証されたなら、AFFは論証責任を果たしたことにならない).

1.3

1.3 また、presumption is against the resolution というのは、あくまでも resolution が最終的に支持されるべきか否かというレベルでの問題であり、resolution の肯定・否定のために繰り出される個々の議論を成立させる責任や事実を証明する責任をNEGが負う場合はもちろんある(たとえば、DA や CP ).

2

また、私はアカデミック・ディベートの存在価値は、argumentation教育的効果にこそあると考える.その教育的効果は、@ディベートがAFFと NEGのadversarial confrontationというゲーム形式をとることからディベーターに生ずるincentiveと、A教育者としてのジャッジが「よりよき議論」を高く評価することによってディベーターに与えるincentive の、2つのincentive によって達成される.前者のincentiveは《手続保障》を要請し、後者のincentive は《批判的思考をするジャッジ》を要請する.この2つの要請はしばしば衝突するものであり、ジャッジは常にこの相克に悩むことになる.私は、以下に述べる方法で、両者のバランスを図りたいと考える.(なお、私は、矢野善郎「価値ある〈ディベート〉、そうでない《ディベート》」Debate Forum 13巻1号30頁(1998年) に大いなる共感を覚えていることもここで述べておきたい.)

II.JUDGING PHILOSOPHY

1 THE FOUNDATION OF DECISION

1.1 Hard Facts

判断の基礎となる《事実(hard facts)》については次のように扱う。@ディベーターの主張しない事実を判断の資料としない(公知の事実を除く);A両サイド間に争いのない事実は,そのまま認定する(公知の事実、公共的経験に反する場合を除く);B両サイド間に争いのある事実を認定するさいには,必ずディベーターの提出した証拠による。その際に,証明責任が果たされたかどうかは, そのゲームに現れたすべての状況に基づいて自由な判断によって誠実に形成する心証による.

1.2 Arguments/Inferences

1.1で述べたことはあくまでも《事実(hard facts)》についての判断であって、その事実を用いて構築されるべき《議論・推論》が成り立っているか否かは、批判的に判断し、prima facie construction (一応、それなりの合理性を有する論証)ができていないと判断する場合には、その議論は採らない.どの程度の論証をすればその基準に達しているかは、個々の大会の性質によって異なってくる他、各ラウンドにおける両サイドの論証程度で相関的に定まるとしかいえない(たとえば、AFFがお粗末な論証しかしていない場合でも、もしNEGも同様のレベルにあるのであれば、AFFをprima facie負けにするわけにはいかない)。今大会のディベーター諸氏に望みたいことは、すくなくとも「大学生」の大会であるというにふさわしい議論のレベルを満たしてもらいたいということである。

1.3 Debate Theory

いわゆるセオリー関係の議論は argument critique でみるが,シフトもありうる.具体的には次の通り: @ディベーターが何らのセオリーも提示しない場合には本稿に従う;Aサイド間に争いのないセオリーは,個々の論点ごとの具体的指示があればそれを採用する.ただし,たとえば "policy-making should be adopted"という包括的な指定だけではシフトできない;B両サイド間に争いのあるパラダイムは,私を説得した方を採用する.どちらも説得に失敗した場合は,本稿に従う.

1.4 CONSTRUCTIVE STAGE と REBUTTAL STAGE

コンストは,AFF と NEG の間で争う論点(争点)と争わない論点をより分ける作業をする「争点決定」の場である.

1.4.1 コンストで争点とされなかった論点

争点とならなかった論点は,認められたものとして,prima facieに立っていると判断した場合には、そのまま受け入れる(cf. II.1.1II.1.2. また 2NCで提出された論点は,AFF は争点とするものと見なす).

1.4.1.1 New Arguments

コンストで争わなかった論点をリバッタルで争っても,職権で勝敗の判断材料から排除する(相手方からのアピールは不要).

1.4.2 コンストで争点とされた論点の扱い

コンストで争いのあった論点のみが争点とされ,そのようにして決定された争点に論駁を加えるのがリバッタルである.なお,コンストで争点とされても,リバッタルで争われない「忘れられた争点」(つまりdrop された争点)は,相手方の主張がprima facieに立っているのであれば(cf. II.1.1II.1.2)、それを認めたものとみなす.

1.4.2.1 Late Refutation

これに対して,コンストで争うものとされた論点であっても,リバッタルに入ってから時機に遅れた主張をしたために,相手の反論の機会を不当に奪った場合には,相手方からアピールがあれば個別具体的な事情を考慮して,その時機に遅れた主張を判断材料から排除することがある.これを new argument と区別してlate refutation ということにする.

1.5 コミュニケーション・ギャップ

ジャッジが理解できなかった議論は判断材料とならないし,ジャッジが誤解した議論は,誤解された内容で判断材料となる.念のために付言すれば、とくにevidence cardの読み方には注意してもらいたい。

2 JURISDICTIONAL ISSUES

2.1 TOPICALITY

T is an absolute voting issue. 立論責任は AFF が負うが、,AFFが主張するプランは topical であると一応の推定をする.つまり、topicalityを争うNEGは、AFFのresolution解釈がtopicalか否か不明の状態にすればよい.AFFのプロポ解釈は reasonable であればよく,best でなくてもかまわない.

2.1.1

なお,これとの均衡から,NEG の主張するCP/CW は non-topical であると一応の推定する).

2.2 EXTRA-TOPICALITY

ちなみに extra-T は,AFF の提出したプランの一部が non-topical な場合に,その non-topical plank から生じる AD を resolution の net benefit から控除する効果を有するのみで、absolute voting issue ではない.

3 RESOLUTION ANALYSIS ISSUES

3.1 COUNTERPLAN

CPは @ non-topical, A competitive with the resolution, B equal or superior to the resolution の3条件を満たさなければならない.@に関しては,論証責任は NEG が負うが,non-topical の一応の推定を認める(cf. II.2.1.1).AFF が CP を topical であると反論する場合には,それが reasonable interpretation であれば,AFF の主張を採用する.Aに関しては,mutual exclusiveness, redunduncy, net-benefit のいずれの基準も認める.Bに関しては,CP と resolution (as exemplified in the AFF plan) の net benefit が最低限イコールであれば,CP は equal or superior だといえる(cf. I.1.1).

3.2 COUNTERWARRANT

Typical example of the resolution に基づく DA としての CW (resolutional DA) は成り立ち得る.NEG は自らが主張するプロポの解釈が topical かつ typical であるとの主張をしたうえで,それに基づく DA を主張すればよい.Typicality の論証は,topicality の論証がなされた段階で,一応の論証がなされたものと推定する(論証責任はあくまでも NEG であり,AFF は typical か否か疑わしいとジャッジに思わせることができれば,反証責任を果たしたことになる)(cf. I.1.1, I.1.2)

3.3 FIAT

Cooptation も circumvention by resolutional agentも,ともに fiat (resolution が採択されたと仮定して議論をするという取決め) を無視した議論であって,とれない.なお,negative fiat も認める.

最近ジャッジをした大会(1995年以降)
日付大会名
2003年
12月21日
第1回JDA九州ディベート大会
(於・九州大学六本松キャンパス)
2003年
7月12日
2003年九州地区中学・高校ディベート選手権(第8回ディベート甲子園九州地区予選)
(於・福岡工業大学)
2001年
9月15日
第4回JDA秋期ディベート大会
(於・九州大学六本松地区)[日本語ディベート]
1998年
11月7,8日
第26回 LESSC/All-Japan中国四国地区予選
(於・山口大学経済学部) (7日のみ)
1997年
12月24-26日
第11回 Kanazawa Debate Assembly (KDA)
(於・金沢大学)
1997年
8月23,24日
第18回 北海道大学2人制ディベート大会
(於・札幌北高同窓会会館ノースエイム)
[NAFA Homepageでの結果報告 ]
1996年
12月25-27日
第10回 Kanazawa Debate Assembly (KDA)
(於・金沢大学)
1996年
8月24,25日
第17回 北海道大学2人制ディベート大会
(於・札幌市中央区民センター、北区民センター)
1995年
3月14日
第25回 Intercollegiate Freshman Debate Meeting
(於・小樽商科大学)