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NCCUSL年次総会(2000年)における情報契約と電子取引<Abridged Edition>[*]

曽野裕夫(九州大学大学院法学研究院助教授)

1.はじめに

2000年のNCCUSL総会は、7月28日から8月4日にかけてフロリダ州St.AugustineのWorld Golf Village(WGV)において開催された。筆者は、昨年度の総会に引き続き、今年度も8月1日から3日にかけて出席する機会を得たので、情報契約および電子商取引に関係する審議を中心に審議内容を報告する。具体的には、

  • UCITA修正案の審議
  • UCC2改正草案の審議のうち、電子契約関係規定および適用範囲

に関する審議を取り上げる。(なお、実際の審議はUCC2が先に行われた。)

2. UCITA修正案の審議

(1) 経緯

昨年の総会で承認されたUCITAは、バージニア州とメリーランド州がすでに立法化しており(施行は、バージニア州が2001年6月1日、メリーランド州は2000年10月1日)、現在6州で議会に法案が提出されている。今回、昨年までの起草委員会のメンバーをそのまま引き継いだUCITAスタンドバイ委員会が提案した「修正 amendment」(これは「改正 revision」とは異なり、簡単な手続で行うことができる。NCCUSL Constitution 4.3)は、バージニア州とメリーランド州の立法の際に加えられた修正点と平仄をあわせること、および、個別業界の同意をとりつけるために必要な修正(具体的には適用除外)を加えることを目的とする。

審議は、次の2つの文書に基づいて、特定産業に関する適用除外、アイディアの提供契約に関する§216の復活、電子的自力救済、E-Signとの整合性等をめぐって、順に行われた(その他に誤植の訂正等もなされたが、省略する)。

  1. Amendments to Uniform Computer Information Transactions Act (Annual Meeting Draft)
  2. Committee Changes to Uniform Computer Information Transactions Actと題された書面(会場にて配布)[以下、"Committee Changes"]

なお、総会終了後、UCITAのFinal Commentとして、June 2000の日付あるOfficial Commentが公表されているが、これについての言及は総会ではなされなかった。

(2) 特定産業の適用除外

草案§103で新たに適用除外とされたのは、@映画(§103(b)(2), (d)(3)(A), (f))、A連邦または州の規制下にある電気通信(§§103(d)(7), 112(g))、B保険サービス(§§102(a)(39), 103(d)(2))の3つである。いずれも、各州におけるUCITAの採択をこれらの産業がブロックしないための修正である。

@については、映画化、映画への出演、映画の配給、映画の上映等に関する契約が適用範囲から外された。ただし、マスマーケット取引には適用があるとされるから、すでに独自の取引慣行を確立している産業の上流における取引を適用除外にするということである。コンピュータ・ゲームなどのコンピュータ情報の創作と映画化が組み合わされた契約の場合には、取引の「支配的性質dominant character」が「映画化権」に関する場合にはUCITAの適用がされないとされた。

Aは、いわゆる第三者サービス・プロバイダ(Third party service provider)のサービスを通じて情報が提供された場合において、そのプロバイダは、情報提供者との間でライセンシーとならないとする規定である。もともと、comment 7 to§112にその旨の記述があるから、それを一定の電気通信事業者について確認したということであろう。

また、Bについては、除外されるのは「保険サービス取引」であるが、それは、保険者と被保険者との契約で、保険契約に関する処理等を行う契約とされる。フロアからPerlman教授も発言していたように、そもそもこのような契約でUCITAの適用範囲に入ってくるものが具体的にあるのかどうかは疑問である。この規定は、スタンドバイ委員会に対する各州の保険規制機関(insurance commissioners)や保険会社の働きかけに応えることを意図したもののようであるが、スタンドバイ委員会と保険関係者の思惑にはすれ違いがあるように思われる。保険規制機関および保険業界が求めているのは、保険会社の業務一般について、ソフトウェアのライセンシーとなるケースをUCITAの適用範囲から外すことだからである (保険契約の処理のためのソフトウェア・ライセンスから、従業員への給与計算をするためのソフトウェアまで)。保険規制機関は、消費保護の観点から保険会社をUCITAの適用除外にしたいということであろうかと思われる(もっとも、保険会社のロビイング担当者から聞いたところによると、とくに保険会社がライセンシーとなるケースに他の産業と比べて特殊性があるということではなく、ただ、単にライセンサー寄りのUCITAの適用を受けたくないという理由でロビイング活動が行ったとのことであった)。この意図はUCITA修正案には反映されておらず、 各州におけるUCITA採択がブロックされる原因となりうる。来年以降、再び保険業界に関する適用除外に関する修正案が提案される可能性は否定できないように思われる。

(3) アイディア提供(submission of idea)契約 §216

昨年の総会では、ゲーム等のコンピュータ情報の創作につながるアイディアの提供契約についての規定を削除すべきだとの動議が提出され、それが64-54で可決されたため、アイディア提供に関する規定は姿を消していたが、その復活がスタンドバイ委員会から提案された。その内容は、@求めていないアイディアの提示があっても、受領者が明示的に契約に合意しないかぎりそのアイディアの使用等についての契約は成立しないし、さらに、Aアイディアの開示契約においては、アイディアが秘密のものであり、具体的であり、業界または受領者にとって新規のものでなければ(約因がないために)強制できないということである。

この条文については、Perlman教授が削除の動議を提出したが、結果的に52-76で動議が否決されたために、修正案がそのまま最終投票にかけられることとなった。ところで、このPerlman動議は、より広く消費者保護の観点からのUCITA批判の一環として提出されたものである。節を改めて Perlman教授の議論を見ておこう。

(4) Perlman教授の議論

昨年に引き続き、今年もPerlman教授の雄弁なUCITA修正案批判が展開された。基本的には、@UCITAがライセンサーの利益保護に偏っており、ライセンシー、消費者に不利な内容であることの批判、および、Aスタンドバイ委員会の説明が欺瞞的であることの批判、からなる。

 
(a)第一。スタンドバイ委員会は、今年のUCITA修正案はバージニア州とメリーランド州におけるUCITAの立法化の際に加えられた修正点を、オリジナルにも反映させるためと説明している。そして、両州はたしかに今回の修正案とほぼ同様の修正を加えた立法化をしている。しかし、Perlman教授は、そのような修正以外にも両州は「消費者保護の強化」のための修正も加えており、それらを草案に反映させないのは一貫しないという。(しかも、そもそもバージニア州は起草委員会の委員長を務めたRing氏のお膝元であり、バージニア州における立法化にはRing氏も深く関わっている。さらに隣のメリーランド州における立法もRing氏が積極的に支援したことが、感謝の言葉としてフロアのメリーランド州の統一州法委員から述べられた。したがって、両州における立法に平仄を合わせるためにUCITAを修正するというのは、マッチ・ポンプの感がしないでもない。)

Perlman教授は明示しなかったが、おそらくここで指しているのは、メリーランドUCITAにおけるマスマーケット取引に関する修正のことだろうと思われる。すなわち、メリーランド州のUCITAは、マス・マーケット契約について、@準拠法指定を一切認めないし(§21-109(B)(2) [original UCITA §109(b)(2)の修正])、A契約の同意時までに印刷物または印刷や保存可能な電子形態で見ることのできない条項は契約内容にならないとし(§21-209(A)(4)[original UCITA §209(a)に追加])、また、B契約期間を制限する条項は目立たなければならない (conspicuous)(21-209(D)[original UCITA §209に追加])などの独自の定めをおいている。また、C消費者契約についてワランティの制限条項や免除条項は強制できないとしている(§21-406(I)(1)[original UCITA§406に追加])。(その他、マスマーケットにおける自力救済の禁止も加えられているが(§21-816(B)[original UCITA§816への追加])、これは後述するように、UCITAの修正にも取り入れられた。)他方、バージニア州UCITAも次のような修正を加えている。@オリジナルのUCITAは期間の定めのない契約は任意終了できるとするが(§308)、そのためには一定期間すでに契約が存続したあとでなければならないという要件を付加(Code of Virginia§59.1-503.8(1))、A電子的自力救済の予告期間を15日から45日に延長(§59.1-508.16(d)(1)[original UCITA §816(d)(1)の修正]等のライセンシーに有利となる修正を加えている。

ところで、UCITAに関する立法をしたのはバージニア州とメリーランド州だけではない。アイオワ州は、アイオワ州の州民に対してUCITAに基づく契約強制が求められている場合に、UCITAを準拠法に指定する条項の効力を認めない(アイオワ州法が準拠法になる)との立法をしており、UCITAに対する敵意を剥き出しにしている(アイオワUETAの4 条4項。これは、2001年7月1日を期限とするサンセット立法であるが、このような条文が加えられたこと自体が強力な意思表示であることには違いない。ちなみにアイオワ州は、1999年の総会におけるUCITAの最終投票で、不承認の投票をした11州の1つである)。Perlman教授はこのことを指摘しつつ、スタンドバイ委員会が、都合よくアイオワ州の立法例には眼をつぶっていることも非難していた。

 
(b) 第二に、インターネット型取引における契約条項の事前開示について、契約条件への「リンク」を張ることが(消費者保護のためにも)"best practice" であるとの見解を、デル・コンピュータやAOLをはじめとするIT業界がFTCに対して述べている。(デル・コンピュータのコメントAOL社のコメントのことかと思われる)。Perlman教授は、そのようなリンクを要求する規定は昨年の総会でUCITAから削除されたが、IT業界の上記のような意見表明があることを考えるとこれを復活させる十分な理由があるのに、そのような提案がされていないのも均衡を失すると主張していた。  以上の第一点、第二点については、委員長のRing氏が反論し、消費者保護は州によって仕組みが異なるので一律の規定を設けることはできないし、E-Signが適用になるので、その消費者保護の利益はUCITAの適用される取引でも享受できると述べていたが、説得力に欠けるように思われた。

 
(c) 第三に、Perlman教授は、「アイディア提示」に関する§216は、アイディア提示をうける側(たとえばゲーム・ソフト・メーカー)に一方的に有利であると批判した。これに対しては、スタンドバイ委員会からNimmer教授が反論し、営業秘密やミスアプロプリエーションの法理によって、アイディア提示者側は保護されるとしたが、Perlman教授はたとえばゲームのアイディアは営業秘密として保護されないだろうし、ミスアプロプリエーションの法理はきわめて限定的にしか使われないから不十分だと反論していた。また、Perlman教授を引き継いで、Reitz教授がさらに、そもそもアイディア提示はコンピュータ情報取引とは何の関係もなく(つまり、コンピュータ情報取引の前段階の取引にすぎない)、他の取引におけるアイディア提示にも等しく存在する問題だとの意見を述べていた。Perlman教授は§216について削除を求める動議を提出したが、それが52-76で否決されたことはうえで述べたとおりである。なお、この§216の追加が、本当にUCITAの「改正」ではなくて「修正」として簡易に行ってよかった非実質的なものなのかどうかは疑問である。

(5) 電子的自力救済

メリーランド州のUCITAは、マスマーケットにおける自力救済を禁止しており(§21-816)、それに平仄を合わせる修正が提案されていた。これについては、とくに議論はなかった。ただ、そもそもマスマーケット・ライセンスにおいて電子的自力救済が行うことは困難かと思われ、これは実質的な変更とはいえないと理解されていたようである。

(6)E-Signとの関係 §905の追加

ところで、UCITAはE-Signの専占(preemption)に服する。したがって、たとえば、電子記録による書面要件の充足をするために消費者の積極的同意を要求するE-SignがUCITAに優先する。この点に対処するために、スタンドバイ委員会は"Committee Changes"と題した文書で、次のような§905条の追加を提案した。

「電子的な記録ならびに署名、および、かかる記録もしくは署名を用いて締結または履行された契約の、法的効果、効力、強制可能性に関する〔UCITA〕の規定は、〔E-Sign〕102条の要求に整合し、かつ、E-Signをsupersedeし、修正し、制限するものである。」

この条文でいう§102というのは、§102(a)(2)のことだと思われるが、その意図どおりにこの規定が働くのかどうかは疑問である。ちなみに、E- Signの専占規定(§102)は、きわめて曖昧であり、今後も議論のもととなるものと思われる。なお、§905と同様の条文の追加はUCITAだけではなくて、今回の総会で承認された他の統一州法にも似たような規定がみられる(たとえば、統一仲裁法§33)。

【補遺:E-Signの専占規定§102について】

E-Signについては、拙稿「電子取引の法的基盤整備―アメリカにおける取組み」ジュリスト1183号144頁(2000)で簡単に紹介したが、E-Sign§102の説明(146頁)に不適切な部分がある。正しくは次のとおり。@§102 (a)(2)は、州の電子署名法のうち、E-Signと「整合的」であり、かつ、「技術的中立性」に立脚する規定については、その州法がE-Signに優先すると規定する。さらに、A§102(a)(1)は、上記@の審査を経ることなく、UETAはE-Signに優先することを明示的に定める。ただし、州がUETAに修正を加えて採用した場合については上記@の審査を受けることになるが、審査の範囲について議論がある。次の2つの文献を参照。

(7)最終投票

以上の審議を経て、8月3日午後、委員会が提案した修正がそのまま最終投票にかけられた。その結果は、賛成41州、反対1州(ミネソタ)、棄権9州(アラスカ、ジョージア、アイダホ、アイオワ、ケンタッキー、マサチューセッツ、ネブラスカ、ニューメキシコ、【もう一州は確認中】)で、修正が承認された。(ミシガンとロードアイランドは欠席のため投票せず。))

3.UCC第2編(売買)の審議

(1) 承認の延期

UCC2の審議は、8月1日の午前中と2日の午前中を費やして行われた。当初通知されていた総会の議題では、今年の総会で改正UCC2の承認が予定されていたが、UCC2審議の冒頭で、UCC2改正の承認のための最終投票は来年度に順延し、今年は草案の部分的な検討を行うにとどめることがアナウンスされた。その理由として、起草委員会のヘニング委員長は、起草委員会の作業が時間的制約から不十分であることを挙げていたが、公式見解はともかく、近年悪化していたALIとの関係修復という側面があったことも否定できないように思われる。 今後、2001年5月のALI総会と2001年8月のNCCUSL総会における承認を経て、改正UCC2が統一州法として公表されるスケジュールが予定されている。もっとも、実際に承認にいたるかどうかは、必ずしも定かではない。とくにスマートグッズへのUCC2の適用をめぐってソフトウェア産業が再び暗躍しているからである。

(2)審議テキストと審議事項

総会では、次の文書に基づいて審議が行われた。

  1. Revision of Unifrom Commercial Code Article 2 - Sales (NCCUSL 2000 Annual Meeting Draft)
  2. "Sections to be Read at 2000 Annual Meeting" Memorandam from Bill Henning and Henry Gabriel dated July 17, 2000 (会場にて配布)
  3. "Errata Sheet for Article 2 - Electronic Contracting" Memorandam from Bill Henning and Henry Gabriel dated July 17, 2000[以下、Errata#1] (会場にて配布)
  4. "Errata Sheet 2 (UCC Article 2)" undated [以下、Errata#2](会場にて配布)

審議は、草案@のすべてではなく、大きな改正の行われる条文についてのみ行われた(上記A"Sections to be Read")。もっとも、そこに挙がっている条文もすべて審議されたわけではなく、時間的制約から、草案§§2-201, 2-204, 2-206, 2-207, 2-210, 2-211, 2-312, 2-313, 2-313A, 2-313B, 2-316, 2-318, 2-508, 2-103がこの順序で審議された(議論が最も集中することの予想される§2-103については、残り時間が一時間となった時点で審議を開始することとして、それまでに他の条文の審議を行う形でおこなわれた)。以下では、電子契約法と適用範囲をめぐる議論を紹介する。

(3) 電子契約法 §§2-204, 211, 212, 213

年次総会草案では、現行UCC2への電子契約に関する規定の追加が提案されていたが、Errata#1によって、その大部分の削除案が示された。これは、6月に成立した連邦電子署名法(E-Sign)との整合性を保つための措置である(E-Sign Shieldと呼ばれていた;筆者には必ずしも明らかではなかったが、UETAはE-Signに優先するため(E-Sign§102(a)(1))、むしろUETAに規定を委ねることによってE-Signの適用を排除するという趣旨だったのかもしれない)。議場で読み上げられたのは、§§2-204, 211, 212, 213である。

そのうち、電子契約の成立における到達主義に関する§2-204(d)(3)、電子契約の法的承認を宣言する§2-211(a)-(c)を草案から削除する案が示された他、電子記録の帰属(attribution)、受領に関する§§2-212, 2-213をそれぞれ§2-211の新(c)-(e)に移動する案も示された。

これらのE-Signへの対応策については、フロアからもとくに発言がなかった。削除された規定の穴は、E-Signないしは(UETAはE-Signに優先するので)UETAによる補充が考えられているということなのだと思われる。なお、E-Signへの対応は、UCC2の審議だけでなく、他の統一州法に関する審議にも影響を及ぼしていた。

(4)UCC2の適用範囲

さて、今回のUCC2審議における最大の争点となったのは、smart goodsに含まれるコンピュータプログラム(embedded software)がUCC2の適用範囲に入ってくるのか、それともUCITAの適用を受けるのかという問題であった。UCITAは、物とコンピュータ情報の両方が含まれる取引について、取引の「支配的目的」が何かによって区別するアプローチをとっているが、技術の発展にともない、コンピュータ・プログラムの組み込まれた製品が多様化し、何が「支配的目的」であるかは容易には判断できなくなってきている。このアプローチに沿った方法だと、「動く標的」に向けて射撃しているようなもの(リポーターのゲイブリエル教授の表現)ということになるが、それにもかかわらずUCC2草案は、UCITAとほぼ同様のアプローチをとっていた。

ところが、このアプローチは今年5月のALI総会で批判をうけ、sense of the house motionで、UCITA型アプローチではALIの承認は受けられないことが明らかとなった。それを受けて、今回のNCCUSL総会で起草委員会は全く新しいアプローチを提案するに至っている(もっとも、これは起草委員会の承認を経ているわけではなく、今後の検討のための参考のために提示されたものである)。

【UCC2 - Errata#2】
SECTION 2-103. SCOPE.
  • (a)(省略)
  • (b) This article applies to computer programs to the extent provided in Section 2-319.
  • (c)〜(e)(省略)
SECTION 2-319. GOODS THAT CONTAIN A COPY OF A COMPUTER PROGRAM.

If a copy of a computer program is contained in goods other than a computer or computer peripheral and the copy is so integral to the functioning of the goods that it is a part of the goods, Sections 2-313, 2-313A, 2-313B, 2-314, 2-315, 2-316, 2-317, 2-318, and 2-508, and Part 6 and Part 7 of this article apply to the copy and goods taken as a whole. A copy of a computer program is not integral to the functioning of goods that consist of the medium in which the copy is contained.

その趣旨は、スマートグッズについてUCC2が大事なのはワランティ関係と救済関係であるとの発想に基づく(いわば「争点アプローチ」)。しかし、たとえば契約成立と内容に関するUCC2とUCITAの規定は大きく異なるのであり、どちらが適用になるかで訴訟の結論が変わることになる。本当に、ワランティ規定と救済関係だけについてUCCを適用することでよいのか、疑問なように思われる。

フロアからは、Reitz教授が、「売られた」スマートグッズはUCC2が適用になり、「ライセンス」されたスマートグッズはUCITAが適用になるとしたいが、それだといくらでも抜け道があるのかもしれないと、やや歯切れ悪く述べていた。しかし、これこそまさしく正当な思考方法であるように筆者には思われる。スマートグッズが実際に「ライセンスされた」のであれば、それはUCITAの適用対象としてかまわないし、「売られた」のであれば買主が完全な所有権を取得して、そこに含まれるプログラムは著作権法による保護のみを受けるとするのが正道であろう。 ここで、Reitz教授が指摘するように操作が可能だとすれば、それは「シュリンクラップ契約」の有効性を認める法制の下でのことであろう(シュリンクラップ契約が有効なら、小売店が最終消費者に物を売りながら、消費者はメーカーとの関係ではライセンス契約に拘束されることになる)。

なお、フロアからは、スマートグッズに含まれているプログラムが、flexible, dynamicなものであれば(他の用途に転用可能、他のプログラムを上書きして代用可能など)UCITAが、fixedであればUCC2が適用になるというメルクマールも提案され、起草委員会の一部の興味関心を呼んでいた。

今後、どのような方向に適用範囲の規定が進むかどうかは、現時点では分からないが、起草委員会はソフトウェア業界の納得する条文を起草しなければ、 UCC2の改正がブロックされてしまうとの切迫感があるように見受けられ、来年の総会までの間、最もホットな争点になるものと思われる。

4.おわりに

異常な緊張感に満ち、刺々しい空気の漂っていた昨年の総会と比較して、今年は落ち着いた雰囲気で、とくに大きなドラマもなく、淡々と総会が進んだという印象である。UCITAの審議におけるPerlman教授の発言でやや緊張が高まったが、提案どおりの修正がUCITAに加えられるということで落ち着いたし、ALIとの確執や昨年の産業界による強硬なロビイング(昨年は新聞の全面広告を使った意見広告までなされた)から波乱の予想されたUCC2も冷静な審議がされた。

来年のNCCUSL総会は、8月10日〜17日の日程で、ウェスト・バージニア州のリゾート地Greenbrierで行われる。とくに保険業界関係の適用除外に関するUCITA修正案が再び提出される可能性があるほか、UCC2のスマートグッズへの適用範囲がどのように定められるか、また、2000年10月から施行されるE-Signへの更なる対応のための修正がみられるかといった点が注目される。さらに、NCCUSL のインターネット私法研究会は、ABA Business Law Section Cyberspace Law Committeeが今年7月に公表した、管轄に関する報告書の検討に取り組むとのことであり、これが統一州法への動きにつながるかどうかも注目される。

以上

[*] 本稿をより詳細にしたものを別途紙媒体で公表する予定です〔『法政研究』67巻3号922-888(F1-F35)頁(2001年1月)に掲載されました〕。また、本稿執筆にあたっては、財団法人ソフトウェア情報センターおよび高橋宗利氏から資料提供等の便宜を図っていただきました。 さらに、NCCUSL総会に出席されていた会沢恒助教授(北海道大学)からも、本稿の内容に貴重なコメントをいただきました。記して謝意を表したいと思います。いうまでもなく、それでも残る誤りは筆者に帰されるべきものです。