研究の目的

 本研究は、従来一般に法の継受という形で考えられてきた現象を、グローバリゼーションによる様々な法体系の相互変動の再考という観点に連接させながら、(i)世界各地・各時代における異なる法文化の<遭遇>と各社会内での法の<浸透>、そしてさらなる法の<変成>と新たな<遭遇>という連鎖的なプロセス、すなわち<法のクレオール(creole)>(=法の相互溶融)の一環として捉え直し、(ii)そのような遭遇/浸透/変成における法秩序形成の個別具体的なしくみを、これに関与する様々な法主体の活動による不断の法創造営為を軸として考察しつつ、(iii)法文化の変動と法制度の動態との多次元的相互作用を考察する統合モデルを構築し、関連アーカイブやオープンソースを整備して、<法クレオール論>と呼ぶべき新たな学問領域を開拓してゆくことを目的とする。そして、この目的のために以下の4つの次元の協働状態として示される法主体性に焦点を当てながら探究する。すなわち、

  1. 価値的次元:<法のクレオール>の内で、様々な法的価値が論理的に思考され接合される次元
  2. 行為的次元:<法のクレオール>が、社会的に様々な個人の行為や集団の行動において具現される次元
  3. 思想=制度的次元 : <法のクレオール>とそれに連なる法形成が、各社会における法思想=制度の歴史的変動期のうちで様々な法主体の思考と活動に発する法制度構想として出現する次元
  4. 統合的次元:以上の各次元が、<法のクレオール>と主体的法形成の全体において時空的に織り合わさっている次元

である。本研究は、これらの諸次元を束ねて<法のクレオール>と主体的法形成の骨格を把握しながら、その本質的諸要素について動態比較的なアプローチによる分析と実証を行うこと を目ざす。

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