研究の特色と意義

 本研究は、<法のクレオール>とそれに伴う主体的法形成により社会の内外の様々な規範群が創造的に制度化されてゆく法秩序の動態を、法哲学、法社会学、比較法学、法史学研究者の相互連携によって統合的に明らかにし、グローバルな規模に及ぶ法の連鎖のしくみを探究しようとするものである。その第1の特長は、法の継受に伏在する法文化と法制度の関係という伝統的問題に関し、従前の国家間比較を基礎とする類型論に代わって、国家の枠を超えうる多様な法主体の創造的営為を介した法の相互溶融という視点に立ってより緻密な理論枠組みを構成することにある。第2の特長は、そのような見方のもと特に主体-動態的視角からの比較と統合を目ざす点である。すなわち、一方で法哲学および法社会学の理論的分析によって法の相互溶融と制度化の動態の主体的条件を解明すると共に、他方では法思想史、比較法学および法史学の実証的分析によって個別歴史的な主体的法創造の事例検討も同時に行い、単純な制度比較を超えたより有機的な解明を目ざす。第3の特長は、アーカイブとウェッブ・オープンソースの構築である。本研究では各分担者の文献資料収集を統合的な研究枠組みのもとで有機的に整理し、<法クレオール論>の展開のための公開データベースとサイトを整備する。第4の特長は、複眼性である。異なる法文化の遭遇/浸透/変成や様々な規範の制度化は、異なる文化や規範体系の中で生きる人間の視点から多方向的に分析することでより実相に近づく。本研究では異文化圏の研究者との不断の交流を保ちながら、多面的な視線を確保し研究を深化させてゆく。

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