一九四九年開設というから、その歴史は五十年余りになる。札幌証券取引所(札証)は北海道の戦後史の一部であり、北海道経済の財産でもある。しかし、札証の現 状は大変厳しいのだ。
相次ぐ上場廃止
卒業生ばかりが多くて入学者が少ない大学があったら、長くはもつまい。札証では今年に入ってから十月末までに四十五社もの上場廃止があったが、他方で入学者に相当する新規上場はゼロである。
そもそも、証券取引所に特定の場所など必要ないという見方も多い。現在では、ほとんどの株取引はコンピューターがやっている。その昔は"取引所見学"などといって学生と一緒に出かけたものだが、今ではコンピューターのスクリーンをのぞくよりほかにない。情報通信革命によって風景が変わってしまった典型的な例であろう。
こうして時の流れの中で全国に八つあった取引所のうち既に三つ(広島・京都・新潟)が閉鎖された。気がつけば純然たる地方市場としては札幌と福岡が残った。そこで札証をどうするかについて検討がなされることになり、先日、中間報告が発表された。
結論は北海道の財産である札証を存続させようというものである。そのために三つの方針を立てた。一つは入学者、つまり新規公開企業の増加だ。札証にはアンビシャスという洒落(しゃれ)た名称の市場があるが、いまのところ公開会社は一社しかない。もうすぐ待望の二社目が上場するが、このペースでは札証の存続はおぼつかない。そこで三年間で十社という目標を立てたのである。
第二の方針は北海道の直接金融のセンターを目指すというもの。北海道には資金を必要としている組織や団体が数多くある。一方、北海道のためなら投資してもよいと考えている個人や組織がある。両者をつなぐ役割を札証が果たせたらよい。
新興企業を育成
これらの方針を実現しようとすると、札証だけではなかなか難しい。そこで他の地方市場との連携が必要だ。これが第三の方針となる。
東京証券取引所しか残らないとすれば、それは典型的な一極集中だ。地方分権などといっているのにそれは変だ。そこで、新興企業、いわゆるベンチャー企業のための証券市場というコンセプトで地方市場が全国連携するのはどうか。
その際、札幌市場は北日本地域の玄関口となる。地域の優良企業を発掘し、株式を公開する前からさまざまな形で準備に協力しながら、公開企業としてふさわしい体裁になるまで育てていく。
もちろんこうした改革には、北海道経済界の支援が必要だが、それをどれだけ引き出せるかは札証自体の自助努力にかかっている。
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