No.52 2007年05月14日掲載 |
学術創成研究プロジェクトの終了に当たって
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研究代表者 山口二郎
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はじめに
2002年度から5年間にわたって展開してきた学術創成プロジェクトも、2007年3月を持って終了しました。この5年間、本当に様々な分野にわたって研究活動を行ったことを振り返ると、様々な感慨がわいてきます。研究を終了するに当たって、このプロジェクトの特徴と成果を簡単に振り返っておきたいと思います。
具体的な研究成果について語る前に、このプロジェクトの全体的な特徴について説明しておきたいと思います。当初の研究計画は、体系的網羅的な構想を示していましたが、このプロジェクトは、設計図に沿って建物を造るような形で研究を進めていったわけではありませんでした。現代政治を研究対象とする以上、同時代の政治の動きから刺激を得たり、新たなテーマを発見したりするという影響を受けることは不可避であり、むしろ、明確な問題意識を持ちながら、現実政治を観察する中で新たな問題を発見し、研究を進める中で研究計画自体を変容、展開させることがこのプロジェクトの特徴だったと思えます。
特に、このプロジェクトが小泉政治の5年間とほぼ重なったことは、偶然かもしれませんが、研究の展開や方向付けに大きな影響を与えました。新自由主義やアメリカモデルの普及としてのグローバル化に対する対抗理念を構築するという問題意識がこのプロジェクトの基底にありました。実際に、新自由主義的な理念にもとづく構造改革が日本の経済社会を作り変え、自民党や官僚制の構造をも変化させました。2005年総選挙のインパクトも強烈でした。また、いささか遅かったとはいえ、新自由主義的政策にともなう弊害が国民的関心を集めたことは、我々の予想通りの展開でした。結果的にはこの5年間はきわめて刺激に満ち、また取り組むべき課題を次々と突きつけられた時期であり、その意味では、いささか皮肉な話ですが、小泉政治に感謝すべきかもしれません。このような時期にこのようなチームで、これだけの予算をもって研究を進められたことは大変幸運なことでした。
以下、学界に対する貢献という観点から、本プロジェクトの特に重要な研究成果を紹介したいと思います。
1 リスク概念を鍵とした日本型福祉レジームの変容
1990年代後半から21世紀にかけて急速に進んだ日本における政治変容を説明する中で、「リスクの社会化−個人化」と「普遍的政策−裁量的政策」という2つの軸を組み合わせることで、体系的な説明モデルを構築しました。これは、戦後日本の社会経済システムに関して比較可能な枠組みで特徴を説明するとともに、これがもたらした平等に対する政治的な攻撃が有効であった理由も明らかにするものだと考えています(詳しくは、山口二郎『戦後政治の崩壊』、岩波新書、2004年を参照してください)。
戦後日本では、公共事業系の補助金や護送船団方式による業界保護など、裁量的政策によりリスクの社会化が図られており、そのことが結果的に、疑似福祉国家的効果をもたらしました。しかし、裁量的政策は腐敗や非効率ももたらし、90年代には市場原理の浸透や、透明性を求める市民社会の要求と齟齬を起こすにいたりました。こうした政治の潮流の中で裁量的政策と不可分に結びついていたリスクの社会化という理念まで否定され、新自由主義的構造改革が優勢となりました。
このモデルは、そうした構造改革に対抗する政策理念についても示唆を与えています。即ち、裁量的政策からの脱却によるリスクの社会化政策の再構築が現実的課題となるのです。そのためには、市民参加や監視による政策形成・実施過程の管理を可能にするという観点から、地方分権が戦略的課題となります。
2 福祉国家から福祉ガバナンスへのパラダイムシフト
このプロジェクトは、日本政治のみならず、広い視野で先進国における福祉国家体制の動揺と新たな福祉ガバナンスの必要性、可能性について考察を進めました。
20世紀型の福祉国家は、相対的に安定した雇用と家族を与件として、産業社会に典型的なライフスタイルに典型的なリスクを抽出し、それを社会保険によって社会化し、社会保険でカバーできない層については公的扶助を展開するという、所得保障中心の体系でした。まさにナショナルな空間で全国一律の所得保障を展開するという点で、福祉国家は、集権的国家体制と密接に結びついていました。しかし、グローバル化にともなう労働市場の柔軟化と雇用構造の変化、女性の自己実現要求の高まりにともなう家族の変容や介護、育児のニーズの高まり、高齢化など大きな社会経済変動の中で、そのような与件も崩れ、リスクも多様化しました。ここにおいて福祉政策の課題は人々をいかに労働市場や地域社会に結び付けていくかという点に移ることとなりました。所得保障に代わって社会的包摂が福祉ガバナンスの目的となります。
こうした福祉ガバナンスを担う主体は、中央政府の独占から市場、市民社会セクターなど多様化していきます。特に、社会的包摂という課題に対しては、人々の多様なニーズにこたえるという意味で市民社会セクターの重要性が高まります。また、国際機構、国家、リージョナル・ローカル政府という形でガバナンスの担い手の重層化も進みます。こうして福祉国家の揺らぎを乗り越えるために、西欧では福祉ガバナンスは統治ネットワークの重層的再編が進んでいます。「大きな政府−小さな政府」という単純すぎる、不毛な論争を超えて、人間の生活を支える福祉国家をどのように再建するかという課題を考える上で、ここで明らかになった福祉ガバナンスのモデルは、きわめて大きな意味も持つと考えます。
また、これに関連して、市民が政治や政策に何を期待するかについて、2006年1月、東京と北海道において大規模な意識調査を行ないました。その結果、平等や公共サービスに関して、多少の地域差はあるものの、市民は格差の小さい社会を望み、充実した公共サービスを望んでいることが明らかとなりました(詳細は左のReferenceコーナーより「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告をご覧ください)。この点は、今後の日本の政党政治や福祉国家の再建を考える上できわめて重要な示唆をもたらしています。
3 マルチレベルガバナンスの実証、理論
もう1つの重要な成果は、ポスト中央集権国家時代における多層的なガバナンスの仕組みに関する実態分析とモデル化です。1つの方向は、EUという超国家的なガバナンスシステムに関する歴史的、実証的な分析です。このプロジェクトの中から、ヨーロッパ統合の歴史過程に関する日本で最初の本格的な研究が生み出されました。もう1つの方向は、イギリスにおける地方分権を素材としたリージョナルガバメントと地方自治体の可能性に関する研究です。スコットランド地方分権を素材として、国家、リージョン、地方の各レベルの政府の役割分担や分権改革が成功する条件について分析し、日本の道州制論議にも大きな示唆を与えています。
4 社会に対する発信
本プロジェクトは、関連するテーマに関して外部の著名な学者、専門家を招いて、数多くの公開シンポジウムや講演会を開催してきました。そして、その成果をブックレットという形で出版し、地域社会や自治体関係者などから好評を得ています。こうした活動は、先端的な研究と知を社会に還元し、広い意味での教育機能を担うという新しいモデルを切り開いたと自負しています。
また、このプロジェクトの副産物として、人材育成による学界への貢献があげられます。本プロジェクトには、博士号を取得したばかりの若手研究者に研究支援員として参加してもらい、研究会での討論や調査に貢献してもらいました。そのことは研究を活性化しただけではなく、それらの若手研究者の自立にも大きく寄与し、次代の政治学を担う人材が育ったと考えています。
おわりに
この5年間、様々な研究を展開できたことについて、プロジェクトの研究分担者の皆さん、さらに各種のシンポジウムや講演会に協力してくださった多くの研究者の方々に心から感謝したいと思います。また、事務局を担って我々の研究を支えてくれたスタッフである田中みどり、赤江橋直美、久保真理、谷川真弓子の各氏の献身的な働きに、心よりお礼申し上げます。
なお、2007年度からは、新たに科学研究費基盤Sにより、「市民社会民主主義の理念と政策に関する総合的考察」というプロジェクトを立ち上げました。学術創成プロジェクトと同様に、積極的に社会に発信していきたいと考えています。 |
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No.51 2007年05月14日掲載 |
2006年度発刊 学術創成プロジェクト企画ブックレットの紹介 |
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2007年1月〜3月、学術創成研究プロジェクトでは、本プロジェクト企画で行ったシンポジウム・講演会のとりまとめとして、5巻のブックレットを発行した(法学研究科附属高等法政教育研究センターブックレット No.19,20,22,23,24)。各々の内容は以下のとおり。
ACADEMIA JURIS BOOKLET
No.19 「グローバリゼーション時代のデモクラシー」
テッサ・モーリス−スズキ、萱野稔人、山口二郎、小野有五 著
※2006年6月26日開催のシンポジウム「グローバリゼーション時代のデモクラシー」の内容を収録。
No.20 「市民は格差をどう考えているか」
橘木俊詔、白波瀬佐和子、池上岳彦、宮本太郎、山口二郎 著
※2006年3月17日開催のシンポジウム「討論 市民は格差をどう考えているか ―東京都、北海道の世論調査にみる政府像・社会像―」の内容を収録。
No.22 「格差社会の人権」
斎藤貴男、猿田佐世、山口二郎 著
※2006年7月6日開催のシンポジウム「格差社会の人権」の内容を収録。
No.23 「私たちが政治家を“好き”と思うとき」
香山リカ 著
※2006年10月20日開催の講演会「私たちが政治家を“好き”と思うとき」の内容を収録。
No.24 「Japan and the UN in International Politics: Historical Perspectives」
Edited by Asahiko Hanzawa
※2006年12月10日開催の国際シンポジウム「Japan and the UN in International Politics: Historical Perspectives」の内容を収録。
いずれも『グローバリゼーション・ガバナンス研究プロジェクト事務局』(北大法学研究科612室)にて配布中。
学外でご希望の方は、送り先を記入した返信用封筒を同封し、郵便にて下記事務局までお申し込みください。着払いにて発送させていただきます。 ※冊子の大きさはA5版です。 |
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No.50 2007年03月12日掲載 |
国際会議「グローバルな移民と東アジアにおける家庭」の開催 |
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2007年2月2-3日、Pai Chai(培材)大学(ソウル市)を主会場に、国際会議「グローバルな移民と東アジアにおける家庭(Global Migration and the Household in East Asia)」が開催された。この会議は、本プロジェクト研究分担者・遠藤乾教授がグループリーダーを務める人社プロジェクトの取り組みの一環として行われたもので、昨年北大で開催された「家庭のグローバル化―東アジア先進諸国の比較検討―(Global Householding: A Comparison among High-Income Economies of East Asia、2006年2月7−8日)にひきつづき、学術創成プロジェクトも共催にあたっている。
ハウスホールド=家庭は、血縁家族よりも広く、お手伝いさん、介護士、Nanny(乳母)やAu Pair(家事手伝い留学生)、あるいは国際養子縁組、国際見合い結婚などを射程に収める概念で、私的領域における新しいダイナミズムを捉える考え方として注目されている。日本でも近年、農村部における国際結婚の増加やフィリピンからの看護士流入等の現象が話題をよんでいるが、日本以上のスピードで少子高齢化が進む台湾や香港では、フィリピン・インドネシア・タイ・ヴェトナムなど、東南アジアの諸国から多くのケア労働者を受け入れており、グローバル化は、金融や技術の分野だけではなく、こうしたハウルホールド=家庭のような親密圏にもすでに浸透しつつあるといえよう。
このハウスホールド=家庭のガバナンスには、人口動態・世代間構成、リプロダクション、ケア労働の需給の問題はもちろん、外国人の差別、あるいは女性の人権の問題など、一筋縄ではいかない争点が潜んでおり、様々な研究分野の学融合が求められる現場でもある。日本・韓国・ハワイ大グローバルリサーチセンターから、各分野28名が会した今回の会議では、昨年以来の各人・各機関の研究成果を報告しあうとともに、韓国・移民受入機関の実務家等とも活発に知見を交換することができ、今後の研究の展開のためにも大変有意義な機会となった。 |
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No.49 2007年03月05日掲載 |
山崎幹根著 『国土開発の時代』の発刊(東京大学出版会、2006年) |
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道州制論議が盛んになりつつある現在、道州制特区法によっていち早く道州制の実験場となった北海道は、次なる地方分権のあり方を考える上でも重要な舞台となった。しかし、新しい制度を構想する際に、戦後の北海道の行政体制がいかなるものであったか、その特長と欠陥が何であったのかを検証することは欠かせない。
山崎氏の著書は、北海道を舞台として、戦後の中央地方関係を詳細に分析した労作である。2001年の行政改革で国土交通省に統合されるまで、北海道開発庁は北海道という領域を対象とする公共事業関係の企画調整官庁とされた。また、北海道には本庁をはるかに上回る職員を擁する開発局という実施機関が置かれた。戦後の北海道開発行政は、開発庁、開発局と道庁の協調と対抗を基軸として展開されてきた。山崎氏は、この複雑な関係を解明し、北海道の「後進性」というキーワードを梃子に開発庁と道庁がどのように政策立案や予算獲得をしてきたかを解明している。今日北海道の自治、自立を考える際に、戦後築かれた様々な政策上の遺産(他府県にはない高率補助など)をどのように整理するか。国の政策の中に北海道の地域政策をどのように位置づけるか、この本は分権の課題を考える上で避けて通れない課題を明らかにしている。 |
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No.48 2006年12月28日掲載 |
国際シンポジウム「国際政治における日本と国連−歴史との対話」の開催 |
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12月10日(日)、「国際政治における日本と国連−歴史との対話」というタイトルで朝から夕方までのシンポジウムを開催した。「日本の役割」が焦点ではあったが、国際政治全体の中で日本の位置と進路を歴史的に考察しようという趣旨。印象に残った論点は、中国との関係(中国とよく理解し合わなければ、常任理事国はおろか、これからの国連で大きな役割は果たせない)、9条や自衛隊の議論の前に平和構築でもやるべきこと、できることが山のようにある、など。会場は東京白金の明治学院。ペーパーやコメントは現在リバイズしており、当プロジェクトから出版される予定。 |
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No.47 2006年12月11日掲載 |
第6回日韓フォーラム「韓国における民主主義と大衆独裁」 |
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2006年11月13日(月)、 第6回日韓フォーラムが開催され、韓国・漢陽大学の林志弦 (イム・ジヒョン)教授による研究報告が行われた。イム教授は、ヨーロッパの歴史研究を通じて、日常のファシズムに対する問題を見出し、現在、大衆政党独裁の国際比較に取り組んでいる。討論に際しては、清水敏行札幌学院大学法学部教授と川島真東京大学大学院総合文化研究科助教授をコメンテーターとして迎えた。
研究会では、20世紀の「大衆独裁」における支配の同意メカニズムが論じられ、その視角から韓国における民主化以降の問題状況が検討された。イム教授の指摘する日常のファシズムとは、民族主義や国家主義・人種主義となって日常の生活領域に内在する権力であり、人々をして同意を伴う服従に駆り立てるものである。このような概念を韓国の朴正熙政権時代の維新体制に当てはめることで、独裁に対する大衆の自発的な服従がどのように喚起されてきたのかが詳細に説明された。こうした視点は、韓国では稀有なものであると同時に斬新なものであり、現在、左派の知識人の間で論争を巻き起こしている。今後、韓国研究者の間でも、イム教授の視点と概念を用いた韓国の独裁に対する研究が深まることを期待したい。
なお、討論においては、韓国の「大衆独裁」について歴史学的観点と政治学的観点から活発な議論が展開された。 |
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No.46 2006年11月28日掲載 |
国際シンポジウム「国際政治における国連と日本」開催のご案内 |
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来る12月10日(日)、明治学院大学白金キャンパス本館10階大会場にて、「国際政治における国連と日本−歴史との対話−」と題した国際シンポジウムを開催します。この会議は、2003年12月に北海道大学において行われた国際会議「The Role of the United Nations in International Politics」のいわば「続編」に当たり、日本と国連との関係を国際政治史的視点から見つめなおし、将来への指針とすることを目的としています。第一線の研究者を内外からお招きするほか、PKO担当の元国連事務次長、サー・マラック・グールディング氏も前回に続いて参加されます。
なお、本会は主に関係分野の研究者の皆さまの研鑽、意見交換のために行われますが、ご関心をお持ちの実務家、学生の方々などのご来場も歓迎いたします。どうぞふるってご参加ください。参加希望の方は、席数に限りがありますので、下記案内面をご参照のうえ事前に事務局までお申込みくださるようお願いいたします。
詳細ホームページ:http://www.juris.hokudai.ac.jp/global-g/workshop200612/
※会議中の報告・コメントは主に英語でおこなれます(日本語への同時通訳付き) |
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No.45 2006年08月02日掲載 |
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ACADEMIA JURIS BOOKLET No.18,
宮脇淳著「地方債・交付税改革と道州制」の発刊 |
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7月20日、高等法政教育研究センターより、ACADEMIA JURIS BOOKLET No.18として宮脇淳著「地方債・交付税改革と道州制」が発刊された。この号には、2006年3月24日に行われた学術創成プロジェクトセミナーの模様が収録されている。
宮脇氏は、当プロジェクト発足時からの研究分担者で、2005年4月より北海道大学公共政策大学院院長。総務大臣主催の「地方分権21世紀ビジョン懇談会」のメンバー等の役職も多数務め、上記セミナーでは、財政面を中心とした地方分権改革について、進行中の議論の内容や改革の制度設計に関する報告を行った。
ブックレットには、氏の報告とともに、コーディネータ(山口二郎)・出席者との質疑応答も合わせて掲載し、時宜を得た内容となっている。 |
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No.44 2006年05月24日掲載 |
第21回フレームワークセミナー
"Devolution, Decentralization, and Deliberation: `But lets Talk About It'" |
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2006年5月19日(金)、英国スコットランド・アバディーン大学より日本学術振興会外国人研究者招へいプログラムで来日されたグラント・ジョーダン教授による研究報告が行われた(政治研究会との共催)。ジョーダン教授は、圧力集団政治、現代イギリス政治、公共政策論の第一人者であり、数多くの著書を刊行している。また、コメンテーターとして小川有美立教大学教授(ヨーロッパ政治論)を迎え、討論をおこなった。
研究会では、Devolution, Decentralization, and Deliberation: `But lets Talk About It' とのタイトルでの報告が行われた。ジョーダン教授は、スコットランド分権改革で主張された「ニュー・ポリティクス」や、近年イングランド地方における「ダブル・デヴォリューション」と呼ばれる地方分権改革で、従来までの代表制民主主義にかわり熟議型民主主義が注目され、広範な市民参加を促す制度改革が試みられている傾向を紹介した。続いて、こうした動向が現実政治の場で広がっている一方、その効用について実証に基づいた学術的な検討が十分に行われていない現状を批判した。
そして、スコットランド議会の役割を認めつつも、議会の意義を限定してとらえるべきと指摘した。また、熟議型民主主義による分権化が地方政府内部で公共サービスの質の格差を生じさせたり、意見の対立を分極化させたり、科学的専門性が高い争点を取り扱う限界、さらには、多くの市民が必ずしも公共的なことがらに対して関心や参加を持っていない現状等を中心に熟議型民主主義の妥当性を批判的に論じた。討論においては、ジョーダン教授による批判がスコットランドやイギリスの文脈をこえてどこまで一般化が可能であるのかや、熟議型民主主義と代表制民主主義との関係をどう考えるのかなどの点をはじめ、多くの論争的な争点をめぐり活発な議論が展開された。 |
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No.43 2006年05月09日掲載 |
加藤紘一氏公開講演会「新しき日本のかたち−ポスト小泉の日本政治」の報告 |
4月26日、クラーク会館大講堂において、加藤紘一氏の講演会を開催した。加藤氏は、昨年9月の総選挙における自民党の圧勝以後の政治状況について、自民党に緊張感が欠けていることを指摘した。しかし、民主党の代表に小沢一郎氏が就任したことで、千葉7区の補欠選挙にも現れたように、民意には自民党に勝たせすぎたことへの反動がうかがえる。まさに今こそ、5年間に及ぶ小泉政治の総括が必要であると指摘した。
そして、小泉政治を評価する際の論点として、外交と国内の格差・不平等問題の2つが重要であるとして、以下のように自説を展開した。
小泉政権下では日本と東アジアの隣国との関係が著しく悪化しているが、これは日本において第2次世界大戦(アジア太平洋戦争)の意味づけを十分に行えていないことに起因する。小泉首相の靖国神社参拝は、あの戦争をアジア解放のための正しい戦争ととらえていることの表現として国際的には受け取られている。この点で日本が自国中心の史観にこだわるならば、アジアにおける孤立のみならず、日米関係への波及も心配される。中国、インドなどのめざましい発展によって、21世紀はアジアの世紀となるであろう。日本が歴史問題の扱いを誤って、アジアでの指導的役割を果たせないとすれば、それは大きな不幸である。
格差、不平等の拡大は、小泉政権の下で進められた市場中心主義の帰結である。1990年代以降の日本に元気がなくなったのは、格差が縮小しすぎたためではなく、大きな国家目標を見失い、様々な分野でのイノベーション(革新)の勢いが止まったためである。政治の役割は常に競争の結果生じる格差を是正することにある。特に、地域社会においてコミュニティを支えてきた人々が、規制緩和や競争の結果、没落したり他者を顧みる余裕を失ったりしていることは、日本全体の大きな問題である。これからの政治は、コミュニティを復興させるために様々な知恵を絞っていかなければならない。また、経済の拡大だけではなく、自然環境の保全という21世紀の大きな課題について、日本が先頭に立って取り組む必要もある。
加藤氏の講演は、小泉政治が直面している問題状況をきわめて的確に分析したものであり、一般市民のみならず、現代政治の研究者にとっても示唆に富む内容であった。講演の後の質疑の中では、小泉路線に対抗するために政党再編を進めるべきではないかという質問も出たが、加藤氏は小選挙区制の下では政党再編はきわめて困難という認識を示し、あくまで自民党内での路線展開を図るという姿勢を明らかにした。 |
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No.42 2006年03月27日掲載 |
第7回 WIPCE (教育のための世界先住民族会議)に参加して |
小野有五●北大大学院地球環境科学院教授 |
第7回のWiPCE(World Indigenous Peoples’ Conference for Education )は、2005年11月26日から12月2日まで、アオテオロア(ニュージーランド)北島のハミルトンで開かれた。先住民族が、先住民族のために主催し、運営する会議なので、私のようなアイヌ民族ではない者が参加していいのかどうか、まして発表などできるのかどうか、はじめは疑問だったが、アイヌの人たちとの協同発表であること、アイヌ民族関連では唯一の発表ということが評価され口頭発表の場を与えられた。
事前にくわしいホームページが設置され、おおよその内容はわかったが、肝心の講演プログラムは直前まで発表されず、やきもきさせられた。リーダーシップ、研究と発展、知識の新しい地平線という3つのテーマに分類された発表は、その総数350にも上り、参加者は2500人。もちろんオセアニアが圧倒的な数を占めたが、アラスカ、カナダ、合衆国、フィンランドなどからの参加も多く、アジアでは台湾の参加者が目立った。
私は、「シレトコ世界遺産における先住民族エコツーリズムの教育と訓練を通じてのアイヌ民族のガバナンスの回復」という発表を行なった。本プロジェクトに入れていただき、ダムなど河川をめぐる公共事業における市民による環境ガバナンスをテーマに研究を行なってきたが、ここ数年は、環境ガバナンスの問題がもっとも政治的に表れてくる先住民族のガバナンスにテーマを広げている。日本では当然のことながら、アイヌ民族のガバナンスが主要な問題である。私にとって、環境あるいはガバナンスに関する「研究」とは「実践」と同義語であり、とりわけ先住民族に関しては、相手を研究対象とみなしてきた従来の「研究」のありかたを強く批判してきた(2005年12月の環境社会学会シンポジウムでの講演参照)。本発表も、アイヌ民族主体のエコツーリズムの確立により、アイヌ民族による自然管理権の回復と、若者への文化伝承と雇用の確保・経済的自立を通じて、先住民族ガバナンスを達成しようという内容である。50人足らずの比較的小さい教室だったせいもあって、満員で入れない人が出るほどの盛況になったのは幸せであった。 |
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No.41 2006年02月28日掲載 |
第5回日韓フォーラム 「e-Governanceと市民参加 −韓国電子自治体の江南区を事例に−」 |
2006年2月2日、第5回目の日韓フォーラムが開催され、ゲスト・スピーカーの許燻(ホ・フン)氏(大韓民国大眞大学校行政学科)より、標記のテーマによる報告が行なわれた。
今回の研究会では、近年、高いインターネットの普及率を背景に、国家として電子政府化を推進している韓国の中でも、最も代表的な事例である江南区の電子自治体への取り組みを紹介しながら、その可能性と課題についての紹介がなされた。
コメンテーターの清水敏行氏(札幌学院大学法学部教授)、川島真氏(北海道大学公共政策大学院助教授)からは、電子自治体の適正規模、インターネットの匿名性による危険性、複数の民主主義概念とeガバナンスの関係などについて質問がなされ、許氏の応答を通じて議論が深められた。 |
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No.40 2006年02月21日掲載 |
シンポジウム「加速する競争社会と公正−日欧政治の比較から−」の開催 |
1月30日、KKR東京において(社)生活経済政策研究所と共催で、『市民社会民主主義への挑戦』(日本経済評論社刊)の出版を記念して、「加速する競争社会と公正」と題したシンポジウムを行った。パネリストは、同書の執筆者である坪郷実(早稲田大学)、小川有美(立教大学)、宮本太郎、山口二郎(いずれも北大)、および駒村康平(東洋大学)であった。2006年の年明け以来、格差や二極化に対する関心が高まっている中で、200名以上の聴衆が集まった。
駒村報告は各種統計に基づいて日本において貧困問題が深刻化していることを指摘し、セーフティネットが機能していないことを明らかにした。小川報告は、事実としての格差拡大が直ちに政治問題にならない理由を探り、経済的苦境にありながら受動的・享楽的な生活を維持し、社会問題について関与しない新たなミリュー(社会生活圏)が、ポストモダンの日本において出現しつつあるのではないかという問題提起を行った。坪郷報告は市民社会の活性化に向けて労働組合という旧来の組織がどのように新しい役割を担うべきかを論じた。山口報告は、2005年の総選挙に現れたような民意とリスク社会の深刻化に対する懸念という矛盾する現象について、リスクの社会化のための制度の機能不全という観点から説明を試みた。宮本報告は、政府、市場、家族、自発的団体の4種類のアクターの長所を組み合わせて市民社会民主主義の理念に内実を付与するという戦略を示した。
報告の後討論が行われ、ナショナリズムの問題を市民社会民主主義の中にどのように包摂するか、市民社会民主主義におけるジェンダーの問題など重要な論点が出され、活発な討論が行われた。なおこのシンポジウムの抄録は『月刊生活経済』に掲載される予定である。 |
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No.39 2006年02月21日掲載 |
宮城大蔵『戦後アジア秩序の模索と日本 ―「海のアジア」の戦後史 1957〜1966』(創文社)
第27回サントリー学芸賞(政治・経済部門) 受賞 |
本プロジェクト研究メンバーである宮城大蔵氏(北大法学研究科講師)の著作『戦後アジア秩序の模索と日本 ―「海のアジア」の戦後史 1957〜1966』(創文社)に、このほど財団法人サントリー文化財団より第27回サントリー学芸賞(政治・経済部門)が授与された。
東京・丸の内の東京會舘で12月9日、贈呈式が開かれ、挨拶に立った宮城氏は、「戦後日本を、対米・対中関係といった二国間の狭い見方だけではなく、アジア全般の中に位置づけることで、幅広く考えていきたい」と話した。
選評において同書は、1950年代末から60年代半ばの日本と東南アジアの関係を、「日本が経済地平の拡大に成功した事蹟として描くだけでなく、インドネシアと取り巻く国々が『冷戦・革命・脱植民地化・開発』の諸論理をもって切り結んだ国際関係として描いている。そうであれば、それは『戦後アジア秩序』形成のドラマでもある」と評された。 |
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No.38 2006年02月14日掲載 |
第19回フレームワークセミナー 「日中接近のインパクト ――「日豪インドネシア三カ国構想」の模索」 |
宮城大蔵●北大大学院法学研究科講師
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2006年1月19日、本年第一回目のフレームワーク・セミナーが行われた。報告者は宮城大蔵氏(北海道大学法学研究科講師)。
今回のセミナーでは、宮城氏がオーストラリア国立公文書館で行った資料調査をもとに、1970年代初頭の米中接近を受けた日本の対中政策の再検討がアジアの国際政治の中でどのような意味と影響を持ったのかを、スハルト政権下のインドネシアの動きを中心に考察した。
同報告では、反共をインドネシア国内での正統性とするスハルト大統領が、日本の急激な中国への接近を阻止・牽制することを目的に、オーストラリアを巻き込んで日・豪・インドネシア間に「三カ国枠組み」を創設することを構想し、その実現を期して来日した経緯が説明された。また佐藤栄作政権末期の当時、対中関係積極派の田中角栄と慎重派の福田赳夫が次期首相の座を争っていた日本政府・政界で、このスハルトの構想がどのように受け止められ、取り扱われたのかなどについて一次資料に基づいた報告がなされた。
以上の報告を受けて質疑では、「ベトナム戦争やASEAN発足といった当時のアジア情勢を考える上で主要な出来事は、今回の報告の枠組みではどのように位置づけられるのか」「インドネシアがオーストラリアを自らの構想に巻き込める、あるいはオーストラリアと認識・利害を共有できると考えた根拠は何であったのか」「スハルトはインドネシアの対中国交正常化以後、国内で反共に代わって何を求心力としたのか」などの点について討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.37 2006年02月01日掲載 |
研究会「山口二郎著「ブレア時代のイギリス」をテキストとして」 |
報告者:
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高安健将●北海道大学大学院法学研究科講師 |
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今井貴子●北海道大学公共政策大学院学術研究員 |
コメンテーター: |
山口二郎●北海道大学公共政策大学院教授 |
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12月22日、2005年最後の研究会が開催された。報告者は高安健将氏(北海道大学大学院法学研究科講師)、今井貴子氏(北海道大学公共政策大学院学術研究員)。この研究会は、2005年11月に出版された山口二郎氏(北海道大学公共政策大学院教授・研究代表者)の著書である岩波新書『ブレア時代のイギリス』をテキストとして、書評会形式で行なわれた。
同書は、山口氏がイギリス滞在中に行われた2005年の総選挙結果に注目しつつ、8年目をむかえるブレア労働党政権の内政・外交両面にわたる評価、またより広く社会民主主義の課題といった観点をまとめたものである。
今井氏の報告では、(同書で指摘されるように)現政権は『賞賛回避の政治』という戦略を採用しているようにみえる。そうであるならば、現政権の成果を労働党はいかに自己評価し、次世代の党のアイデンティティはどこにもとめられるか、また、労働党の政策転換の一つの契機としての「ヨーロッパ」との関係が考えられるが、今後注目すべき点は何か−といった論点が提起された。
また高安氏の報告では、一見矛盾するブレア政権の経済社会政策と国家構造改革の整合性、中央集権的な構造をもつにいたった労働党政権のもとで政権をコントロールするための選挙以外の方途の可能性、そしてブレア政権によるイラク戦争参戦の背景について議論が提示された。
質疑においては、著者の山口氏が二人の報告に応答する形でコメントをした後、参加者からの積極的な討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.36 2005年12月16日掲載 |
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片山善博鳥取県知事講演会の記録
ACADEMIA JURIS BOOKLET No.17, 発刊 |
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このほど、高等法政教育研究センターより、ACADEMIA JURIS BOOKLET No.17 片山善博著「改革は誰にでもできる」が発刊された。このブックレットは、当プロジェクトが2005年7月4日に主催した片山善博鳥取県知事講演会の模様をまとめたもの。就任以来、知事が積極的に進めてきた情報公開の徹底や財政改革への取り組み、地方自治のあり方などについて、コーディーネーター・山口二郎(北大公共政策大学院教授)との対談や会場との質疑応答もあわせ、収録している。
冊子は、学術創成研究事務局(法学研究科303室)にて配布中。学外で入手ご希望の方は、200円切手を貼付した返信用封筒を同封し、郵便にて事務局までお申し込みください。 |
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No.35 2005年12月09日掲載 |
第18回フレームワークセミナー |
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「社会契約の再構成−社会的排除とフランス福祉国家の再編−」 |
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田中拓道●北海道大学大学院法学研究科講師 |
「政策トランスファーと政治選択 試論−イギリスにおける『社会的包摂』の政治過程」 |
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今井貴子●北海道大学公共政策大学院学術研究員 |
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2005年11月17日、2005年度第三回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は田中拓道氏と今井貴子氏。
今回の研究報告では、「社会的排除」という政策概念を中心に、田中氏がフランス、今井氏がイギリスでの事例をもとに報告を行った。
田中氏は、「社会的排除」という政策概念を、フランス革命期に遡り、社会的紐帯の再生を目指す政策概念として、歴史的に整理した。また、一方で「社会的排除」が、80年以降フランス福祉国家の危機の中で議論された新しい連帯論がその萌芽となった点などが報告された。
また今井氏は、こんにちの「社会的排除/包摂」の概念が本源的に抱える多義性と、政治的アクターによる政治選択の余地に注目し、党内改革の途上にあった90年代前半のイギリス労働党が、アメリカ、オーストラリア、EUなどの政策を参照しつつ自らの「包摂」政策を形成していった過程について、分析枠組みとして政策トランスファーを用いながら検証した。
質疑においては、「フランス革命期の連帯論がどのように収斂していったのか」「フランスの社会連帯論において、イギリスの社会保障政策上の理念はどのような影響を与えていたのか・与えていないのか」「ニューレイバーの政策分析をするにあたり、政策トランスファー論の意義と限界はどのような点か」などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.34 2005年11月01日掲載 |
「ポスト福祉国家とソーシャル・ガヴァナンス」発刊
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2005年10月、ミネルヴァ書房より、ガヴァナンス叢書第U巻「ポスト福祉国家とソーシャル・ガヴァナンス」(山口二郎/宮本太郎/坪郷實編著)が発刊された。
先進工業国がめざしてきた20世紀型福祉国家は、今日、グローバル化と脱工業化の流れの中にあって、新しい社会的リスクに十分に対処することができず、各国の理念的背景であった社会民主主義も大きな揺らぎをみせている。そして、ソーシャル・ガヴァナンスともいうべき新しい統治のシステムが、その転換の方向として浮かび上がってきている。
本書では、その転換の多様な側面を、福祉・雇用政策の領域を中心とした国際比較を交えて多角的に論じ、新しい構造に即した新しい統治の展開を探っている。
なお、本書は、当プロジェクトが企画・運営に携わった2003年の東京フォーラム「グローバル化とマルティラテラリズム――東アジア・欧・米の進歩的政治をつなぐために」(早稲田大学国際会議場、10月11−12日)、札幌フォーラム「グローバル化時代のソーシャル・ガヴァナンス――20世紀社会民主主義を超えて」(北海道大学百年記念会館、10月14−15日)の成果をもとに編集が行われたものである。 |
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No.33 2005年10月04日掲載 |
第17回フレームワークセミナー |
"From 'local' to 'Global' Governance: A Tradeoff between Scale and Scope" |
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Prof. Philippe Schmitter●European Univ. Institute
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2005年9月28日(水)、政治研究会との共催で、フィリップ・シュミッター氏を招き、コンファレンスを開催した。シュミッター氏は、コーポラティズムや民主化プロセスのの理論化といった業績により学会をリードし続ける世界的に著名な比較政治学者。
今回のコンファレンスでは、まずシュミッター教授から "From 'local' to 'Global' Governance: A Tradeoff between Scale and Scope?" と題した報告が行われた。シュミッター教授は、まず「ガバナンス」概念の理論的検討から、それを「国家」や「市場」といった他の秩序維持方式と比較し、その特徴に基づいた「ガバナンス」の定義を行った。次いで現実政治においては、地方-ネイション-地域−地球という政治領域・レヴェルの規模が拡大するにつれ、「ガバナンス」の射程が機能的適切性の担保から政治的実行可能性の担保までに広がっていかざるを得ないという関係を明らかにし、そこに一種のトレードオフ的な関係が存在することを指摘した。シュミッター教授の主張は、「グローバル・ガバナンス」というものが、概念的にも、また現実政治においても困難であるばかりか、現実認識を誤らせる危険性をもはらむため、その使用には懐疑的であるべきという、大変刺激的なものであった。
後半の質疑においては、「ガバナンスという秩序形式に適合的な問題分野とそうでないものがあるのではないか」「ガバナンスと、近年活発に議論されている市民社会や熟議型民主主義とはどのような関係にあるのか」といった質問が参加者より出され、活発な議論が交わされた。 |
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No.32 2005年08月22日掲載 |
第4回日韓フォーラム 「韓国における市民社会運動と民主的ガバナンスの影響」
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2005年7月20日、第4回目の日韓フォーラムが開催され、金永來氏(韓国亜州大学政治外交学科)により標記のテーマによる報告が行なわれた(報告は韓国語:通訳は池直美氏・北海道大学大学院法学研究科博士後期課程)。
今回の研究会では、近年韓国国内調査で、最も社会的影響力のある集団として評価された市民団体の具体的事例をとりあげ、市民団体の政治力、その発展要因および条件、NGOが政治的参加した事例の検討、ノムヒョン大統領政権とNGOの政策、一般市民の評価、今後の展望などについて韓国の文脈に即した報告がなされた。インターネットの普及や韓国の伝統的な抵抗主義・近年のNew Political Cultureの高まり・女性の政治参加・地方分権化と利権的地域主義化に対する不満の高まり、さらにはノムヒョン大統領直属の市民団体担当官・市民団体担当秘書室の設置など、市民団体の発展条件がさまざまな点で考察された。
韓国においては、市民団体の発展が、総選挙における候補者落選運動や高官の不正に対する糾弾の全国的規模での高まりにつながるなど社会現象化している。一方で、市民団体の批判的役割に関する議論としては、大統領の改革と連帯する点を強調する改革連帯論と、本来市民団体は政府と緊張関係を持つべきであるという牽制強化論の二つの潮流が論争を繰り返しているという点も合わせて紹介された。 |
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No.31 2005年08月19日掲載 |
学術創成コンファレンス 「Is There a Theory of Governance ?」
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7月7日(木)、ピッツバーグ大学政治学部のガイ・ピータース教授を招き、コンファレンスを開催した。ガイ・ピータース氏は、1986年に雑誌「Governance」を発刊して以来、ガバナンス論の先駆的役割を果たしてきた研究者。今回のコンファレンスでは、“Is There a Theory of Governance?”とのタイトルのもと、ガバナンス概念の定義をめぐる多様な試みを前にして、果たして従来の概念では捉えきれない内容をガバナンス概念がもつのかという問題意識から出発し、これを積極的に認めるべく、国家を中心に据えたガバナンス概念が提示された。ガバナンスには、社会・経済に方向性を示し、一貫性を確保するための紛争解決のメカニズムが必要になると主張され、機能主義的なガバナンス概念の意義が論じられた。このようなガバナンス概念は比較政治学におけるひとつのアプローチであり、分析的にも、ガバナンスの成功・不成功を検討することで、国家がどのような方向性を志向し、なぜ失敗したのかを分析する際にも有用であるとされた。
後半は、コメンテーターの山崎幹根助教授(北大公共政策大学院)から、ピータース教授のガバナンス概念が新制度論で議論される制度や政策コミュニティ概念とどのように異なるのか、またガバナンス概念がどのように説明責任の向上に資するのかといった問題の指摘がなされ、ひきつづき、国家中心アプローチと機能主義の採用の背景、政府(ガバメント)の関与しないガバナンスのあり方などに関して出席者間で活発な論議が行われた。オーディエンスとして参加した大学院生からも多数の発言を得て、有意義な研究会とすることができた。
コーディネーター:山口二郎、遠藤乾。 |
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No.30 2005年08月05日掲載 |
第16回フレームワークセミナー
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「英国における執政府と司法の新しい関係?
−欧州人権条約の国内法への受容と1998年人権法の影響」 |
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高安健将●北海道大学法学研究科講師
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2005年7月25日、2005年度第二回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は高安健将氏(北海道大学法学研究科講師・研究協力者)。
今回の研究報告では、1998年の欧州人権条約国内法化以降さらなる積極化の方向を示す英国司法の執政府に対する監視機構としての役割に注目しつつ、英国内における伝統的な司法の役割をふまえ、1980年代以降司法のあり方の漸進的な変化、98年欧州人権条約国内法化以降の司法の役割の上昇、ブレア政権下で現在議論されている司法改革などを検討し、執政府を監視する司法の役割を明確にし考察がなされた。
質疑においては、「EUに関係している他の加盟国における司法改革の動きと英国内における司法の動きの関連や、比較政治学的な課題としてどのような問題があるのか」「テロ以降の警察を中心とする行政権限が強化された英国において欧州人権条法が国内でどのような意義と限界を持っているのか」などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.29 2005年07月11日掲載 |
片山鳥取県知事講演会 「改革は誰にでもできる」
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7月4日、高等法政教育研究センターとの共催で、片山善博・鳥取県知事による講演会を開催した。講演では、1999年4月の就任以来、情報公開、財政改革、公共事業の見直しなどの課題に次々と取り組んできた鳥取県での実績をもとに、透明性の高い政治の実現に向けて具体的な提言がなされた。また、後半はコーディネーター山口二郎教授(研究代表者)との対談、参加者との質疑応答が行われ、財政難に苦しむ中での地方自治のありかた、道州制の行方などについて、活発な論議が交わされた。
会場には、学生・学内スタッフの他、地方自治体関係者や一般市民など、160名ほどの聴衆が集まり、知事の話に終始熱心に耳を傾けていた。 |
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No.28 2005年07月05日掲載 |
第15回フレームワークセミナー「イギリスの総選挙と社会民主主義の課題」
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山口二郎●北海道大学公共政策大学院教授
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2005年6月30日、標記タイトルにて第15回フレームワークセミナーが開催された。報告者は山口二郎氏(北海道大学公共政策大学院教授・研究代表者)。
今回の研究報告では、山口氏がイギリス滞在中に行われた2005年の総選挙に注目しつつ、同選挙の結果分析、8年目をむかえるブレア労働党政権の評価とその課題、EU憲法条約批准をめぐる国際政治・社会民主主義の課題といった観点から、イギリスの労働党政権の現状を検討し、イギリスにおける論壇(ガーディアン紙、ニューステーツマン誌、プロスペクト誌など)におけるブレア評価を紹介しつつ課題を明確にし、考察がなされた。また、社会民主主義の国際的な連帯の思想として、「アングロ・ソーシャルモデル」の議論が紹介された。社会民主主義の思想という点では、今後のブレア政権が、97年の際形成を働きかけた広範な支持者層「ビッグテント」に今回選挙で亀裂が生じ、今後は「平等」といったような社会民主主義的な政治議論が労働党内で必要である点などの課題が示された。
質疑においては、「労働党政権の選挙における得票率の低下とマニフェスト選挙の意義をどのように評価するか」「イギリスが国際的に経済的な自立をはかる際の基盤は何か」「ブレア改革の議論に対して左派からの議論は説得力があるのか」などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.27 2005年06月14日掲載 |
研究会「政党と政府―ミッテラン社会党政権の場合(1981-1983年)」
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吉田徹氏●日本学術振興会特別研究員(東京大学大学院法学政治学研究科)
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2005年5月20日、2005年度第一回目の研究会が政治研究会と共催で開催された。報告者は吉田徹氏(日本学術振興会特別研究員・東京大学大学院法学政治学研究科)。
今回の研究報告では、1981年に政権交代を実現したフランス社会党政権の政策転換を対象とした。同報告では政権の政策転換とされる83年の新自由主義への転換点を欧州統合の端緒として位置付け、おもにミッテラン大統領のリーダーシップスタイル・意思決定の特徴と党組織構造を素材として、政策転換せざるを得なかった当時の国内的な事情・国際社会的な背景・政党内の構造などさまざまな点で考察がなされた。
質疑においては、「ミッテラン大統領や社会党政権の政策変化を対象とする政治学上の方法論的意義は何か」「リーダーシップスタイルとしてではなくリーダーシップ論としてミッテランの事例を分析すべきではないか」「ミッテラン個人のリーダーシップの特出・内容をどのように評価するか」などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.26 2005年04月08日掲載 |
2004年度発刊 学術創成プロジェクト企画ブックレット
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学術創成研究プロジェクトでは、当プロジェクトの企画で行った3つのシンポジウムについてとりまとめを行い、法学研究科附属高等法政教育研究センター発行のブックレットとして刊行した。各々の内容は以下のとおり。 |
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ACADEMIA JURIS BOOKLET
No.13 「グローバル化とマルティラテラリズム−新しいリンケージ」
前デンマーク首相 ポール・ニューロップ・ラスムッセン著
※2003年10月11〜15日開催の国際会議「東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者フォーラム2003」より記念講演の内容を収録。 |
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No.14 「メディアと権力」 魚住昭著
※2004年11月4日開催「魚住昭氏講演会・メディアと権力」の内容を収録。 |
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No.16 「帝国/グローバル化時代のデモクラシー」
ロナルド・ドーア、田中秀征、ゲーリー・ガーストル、中村研一、遠藤乾(編)
※2004年2月7日開催のシンポジウム「21世紀はデモクラシーの世紀か−帝国/グローバル化時代のデモクラシー−」の内容を収録。 |
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いずれも学術創成事務局(北大法学研究科303室)にて配布中。
学外でご希望の方は、切手を貼付した返信用封筒を同封し、郵便にて下記事務局までお申し込みください。
各号の重さはNo.13/60g、No.14/110g、No.16/190gです。 |
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No.25 2005年01月28日掲載 |
第14回フレームワークセミナー「世界標準形成の国際政治学」
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宮本融●北海道大学大学院法学研究科特任助教授
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2005年1月11日、2004年度第5回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は宮本融氏(北大法学研究科特任助教授・研究分担者)。
今回の研究報告では、会計基準や環境規制などの世界標準「グローバル・スタンダード」の形成を、グローバル・ガバナンスの一形態と位置づけ,これまで経済史や技術史の分野で研究されてきた先行研究を批判的に検討し、世界標準形成の過程を国際政治学的な視点で分析した。さらに、これまでの研究の前提となってきた標準の二元論的理解(de facto/de jure)とその段階的移行論(de factoで成立したものがde jureとして法的安定性と正統性を得る)に対し、米国におけるハイビジョン・テレビの標準形成や自動車関連環境基準、ヨーロッパにおける統計機関であるユーロスタットなどの事例から、両要素の動的な相互規定性に注目する必要性を指摘した。
質疑においては、「いわゆるコンスピラシー・セオリーとなる可能性はないか」「de factな標準を形成する民間組織の中でも中間団体的な業界組織と企業との関係を分析すべきではないか」「伝統的政治学の中核である権力の契機やヘゲモニー的な分析視覚も必要ではないか」などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.24 2004年12月09日掲載 |
「戦後アジア秩序の模索と日本 ―「海のアジア」の戦後史 1957〜1966」発刊
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本プロジェクト研究メンバーである宮城大蔵氏(北大法学研究科リサーチフェロー)の著作『戦後アジア秩序の模索と日本 ―「海のアジア」の戦後史 1957〜1966』が、このほど創文社より発刊された。
アジアの国際政治において戦後日本とは何であったのか?日本のアジアへの関与が「経済進出」として語られることの多いなか、冷戦や脱植民地化といった国際政治の潮流にしめる日本の位置づけを探る本書は、「海域アジア」の要、インドネシアをめぐる1950年代から60年代中盤の攻防にその答えの鍵を見出す。ベトナム戦争へと収斂していくアメリカの冷戦政策、東南アジアにおけるイギリス帝国の解体、中国の急進化、そしてナショナリズムや革命から開発の時代へというアジアを覆った巨大な変容のなかで、日本は何を目指し、どのように振る舞ったのか、各国の思惑と駆け引きが渦巻く多国間関係史を立体的に描き出す。
なお、本書の詳細については下記の頁も参照されたい。
<出版物>
<関連エッセイ>宮城大蔵:「「海のアジア」の中の戦後日本」(『創文』No.469. 2004.10) |
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No.23 2004年11月24日掲載 |
「年金改革の比較政治学」発刊
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2004年10月、ミネルヴァ書房より新川敏光/ジュリアーノ・ボノーリ編著、新川敏光監訳による「年金改革の比較政治学−経路依存性と非難回避」が発刊された。この本は、当プロジェクトを基盤とする共同研究の成果をまとめるものとして企画された『ガヴァナンス叢書 全5巻』の第1巻にあたるものである。
各国の異なる問題状況や多様な制度構造の下、年金改革はガヴァナンス問題のなかでも、とりわけその緊急性を増している。本書は、世界各国の年金制度、高齢化問題、年金改革を比較分析し、年金政治の共通性と多様性を規定する要因とその効果を浮き彫りにすることを目的として編まれた。各章では、広く欧州と東アジアにわたり、政治過程および制度の両面から明確な枠組みのもとで国際比較を行っている。
なお、この巻の執筆には、2003年2月に当プロジェクトが主催した国際ワークショップ「グローバル化時代における高齢化への社会政策の対応」(コーディネータ/新川敏光)の参加メンバーが中心となってあたった。 |
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No.22 2004年11月19日掲載 |
魚住昭氏講演会「メディアと権力」の報告
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11月4日、高等法政教育研究センターとのタイ・アップ企画として、魚住昭氏による講演会「メディアと権力」が開催された。
魚住氏は、共同通信社記者として司法・検察分野の取材を担当、現在はフリーで活動するジャーナリスト。講演では、小泉改革により、田中角栄政権の発足以来続いてきた日本型社民主義が、日本経済の強化を主眼とする新自由主義へと転換してきていること、またもう一つの軸としてナショナリズムの強化が進む一方で、マスメディアが官僚の情報操作にのり、判断力・批判性を失いつつあることへの危惧が指摘された。
会場には学生・学内スタッフの他、一般市民やマスコミ関係者ら150名ほどの聴衆が集まり、講演会後半では、客席との活発な質疑応答が行われた。 |
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No.21 2004年10月29日掲載 |
第13回フレームワークセミナー
「政党が変わるとき‐ブレア政権下の職業教育・訓練政策からのアプローチ」 |
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今井貴子●北海道大学大学院法学研究科リサーチフェロー
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10月21日、2004年度第4回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は今井貴子氏(北大法学研究科研究支援員・研究分担者)。
今回の研究報告では、97年に発足したブレア政権下での職業訓練を事例に、前保守党政権からの構造を基本的に引き継ぎつつ政権交代を行った「ニュー・レーバー」の環境的制約に対する適応と、労働党としての原則の「粘着性」の有無に焦点をあてて報告がなされた。報告では、前政権との差異化と社民主義政党としての粘着性及びその読み替えが集約的に現われた「社会的排除」というブレア政権下の政策課題を取り上げ、その政策的実践である職業訓練政策の概要が報告された。その政策の特徴として、コミュニティー重視、「新しい介入主義」、社会的連帯の実践、という点が挙げられ事例にそくして検討された。
質疑においては、「ニュー・レーバー」と以前の労働党の異同を判断するメルクマールは何なのか、「政党の粘着性」をどう定義するか、改革を裏付ける政党内での原動力は何か、などの点につき討議が行われ、論点が深められた。 |
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No.20 2004年10月29日掲載 |
「人獣共通感染症のリスク管理とグローバルガバナンス」の報告
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10月5日、6日の両日、北海道大学クラーク会館講堂において、国際シンポジウム「人獣共通感染症のリスク管理とグローバルガバナンス」が行われた。
会場には50人ほどの研究者・実務家が集まり、活発な論議を繰り広げた。WHOのSARS政策を客観的にレヴューした押谷仁氏(WHO西太平洋地域事務所・マニラ)による報告は、公衆衛生の分野における国際機関のあり方を主権原理の問題との関連で、端的に示した。また空港・港湾、検疫所、保健所、病院、大学ラボ、政府系研究所、中央官庁などの多元多層にわたった官民諸主体によるマネジメントに関しては、シンガポール総合病院のKwai Peng Chan女史が同国の国をあげての取り組みを丹念に紹介した。一方、Deane Neubauerハワイ大教授報告に示された、グローバルな感染症の時代における新たな監視権力の誕生への敏感さにも、我々は留意を払うべきであろう。
シンポ全般をとおし、自然科学者と社会科学者、研究者と実務家双方が一堂に会して論議をつくした今回の試みは、大変意義深いものであったといえる。
なお、このシンポジウムは、21世紀COEプログラム「人獣共通感染症制圧のための研究開発」(獣医学研究科・高島郁夫教授)、人文・社会科学振興のためのプロジェクト研究事業「グローバルガバナンスに向けた知の再編」との共催にて行われ、6日午前の部では、当プロジェクト研究分担者・遠藤乾助教授がコーディネーターを務めた。
(本シンポの概要は『科学』(岩波,2004年12月号)にて紹介される予定である。) |
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No.19 2004年10月26日掲載 |
第3回日韓フォーラム「韓国におけるニューガバナンスと市民社会」
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10月18日(月)、日韓フォーラム・シンポジウムシリーズの3回目として、韓国から廉載鎬(ヨム・ジェホ)高麗大学行政学科教授を招き、公開シンポジウムを行った。
廉氏は、盧武鉉政権の誕生以降、市民団体が審議会などを通じて政策決定過程に急速に関与してきている事実を紹介し、そのような市民団体の参与の拡大が新たなガバナンスとして定着するかどうか注目する必要があると語った。また同時に、韓国の市民団体が欧米日本のような草の根運動体というよりエリート中心の中央集権的な構造をもつという特徴を指摘し、この点に関しても変化が起きるかどうかにも注目していると語った。
引き続いて行われた後半の質疑応答では、コメンテーターの川島真北海道大学法学研究科助教授から、市民団体の力の源泉、遷都の影響、市民団体の働きかけの対象としての政党と大統領府との関係、メディアの問題等に関するコメントと質問が寄せられた。また、もう一人のコメンテーターの清水敏行札幌学院大学法学部教授からは、市民団体の資源の乏しさと反比例するような大きな影響力を説明する政府側の政治戦略についての指摘や、市民団体のリーダーになることが国会議員へのステップと認識される現状について言及した。廉氏からは、数多く出されたそれぞれ論点について、丁寧な応答があった。
コーディネーターは魚住弘久北海学園大学法学部助教授(本プロジェクト研究分担者)。 |
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No.18 2004年10月15日掲載 |
学術創成プロジェクト コンファレンス「スコットランド分権改革(デヴォリューション)の検証」の報告
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9月28日(火)、イギリス・スコットランドのアバディーン大学から、グランド・ジョーダン教授(政治・国際関係学部長・イギリス現代政治)、ポール・キァーニ講師(スコットランド政治)を招き、スコットランド分権改革に関する研究会を開催した。コーディネーターは、山口二郎氏(北大法学研究科教授・研究代表者)。午前の部では、キァーニ講師から、99年に設立されたスコットランド議会の現状と課題についての報告が行われた。その中で、比例代表制や強力な委員会制度など、新しい制度が導入されたものの、全体的には立法部と行政部との関係は、UK政府の「ウェストミンスター・モデル」とは大きくは異なっていない現状が指摘されるとともに、UK政府とスコットランド政府との間で生じる公共政策の差異も比較的小規模なものに止まっており、分権改革は漸進的な過程をたどっていることが明らかにされた。午後の部では、ジョーダン教授が、スコットランド分権改革運動をデモクラーシー論の観点から批判的に再検討した。その中で、分権改革運動の中で強調された「民主主義の改革」、特に、政策決定過程に直接的な市民参加を求める主張においては、スコットランド政府に対する過大な期待が寄せられていたと指摘し、むしろ、議会制に基づいた代表民主制を活性化させる必要性を強調した。なお、本研究会には、ディスカッサントとして、廣瀬克哉教授(法政大学法学部)、坂本治也氏(大阪大学大学院)を招き、活発な討論が展開された。
続けて、9月29日(水)にはジョーダン教授によって「利益集団政治研究と合理的選択論」に関する報告が行われた。コーディネーターは、山口二郎北大法学研究科教授。その中で、市民が近年の環境保護団体に参加をするか否かの態度決定を実証的に分析すると、市民が、合理的選択論の代表的論者であるオルソンが主張するようなフリー・ライダーとしての行動を、必ずしも指向するわけではなく、環境保護を支持するような態度と行動を示していることが明らかにされた。また、利益集団の側が、メンバーを獲得する場合の働きかけや戦略の重要性も合わせて指摘された。報告と討論では、結論の一般化可能性や、現代民主制における利益集団の役割を中心に熱心な議論が展開された。 |
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No.17 2004年09月15日掲載 |
第12回フレームワークセミナー
「広域地方政府のガバナンス―スコットランド分権改革(Scottish Devolution)をてがかりに」 |
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山崎幹根●北海道大学大学院法学研究科助教授
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9月8日、2004年度第3回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は山崎幹根氏(北大法学研究科助教授・研究分担者)。
今回の研究報告では、99年の分権改革によってスコットランド政府が設置された背景、スコットランド政府の構造、スコットランド政府の課題について報告が行なわれた。報告の中では、スコットランド政府が中央政府との間で、依然として公式的、非公式的な調整を行ないながら活動している現状、また、スコットランド選出の国会議員の影響力や、UK政府から財政資源を配分する制度がスコットランドを優遇しているのではないかという批判など、現行制度の見直しの圧力が高まっている政治状況も確認された。また、スコットランド政府が地方政府や他の公的機関に政策の執行を依存せざるをえない状況や、近年の政策課題において民間の諸団体の役割の比重が高まっていることなどから、スコットランドにおけるガバナンスは複雑さを増している一方、スコットランド政府がいかにアカウンタビリティ・レスポンシビリイティを確保するか、「ガバナンスの失敗」にどのように対応するかが課題であることが指摘された。
質疑においては、スコットランド議会での多党化の現状や、労働党政権における分権構想の意味、今後の研究の見通しなどが議論された。 |
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No.16 2004年09月09日掲載 |
「戦後東アジアにおける行政文書公開状況の概要 −日本・韓国・台湾−」Webページの公開
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プロジェクトニュースNo.9(2004年3月24日掲載)でも触れたように、「東アジアにおける行政文書公開の現状と行政研究の展望」企画チームは、日本・韓国・台湾などの行政文書公開状況を整理し、本科研Webサイト上で公表すべく作業を進めてまいりました。このたび1980年代以降の台湾部分が完成しましたので、公開いたします。
この企画の趣旨については、本Webページ(http://www.juris.hokudai.ac.jp/global-g/eastasia/)内の「プロジェクトの骨子」をご覧ください。今後、1970年代以前の台湾、日本(中央政府・北海道・札幌市など)、韓国、中国(上海・香港など)についても作業が終了し次第、順次、公開していく予定でおります。
本Webページは、ガバナンスの変容を歴史的に考察するための基礎的データの提供にとどまらず、日本を含めた東アジア研究の一層の促進を目指して作られています。 |
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No.15 2004年09月06日掲載 |
グローバリゼーション研究ネットワーク設立大会の報告
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8月18日から21日まで、イギリスのウォーリック大学においてグローバリゼーション研究ネットワーク設立大会が開催され、本プロジェクトから山口、遠藤、ミドルトンの3名が参加した。このネットワークは、昨年9月にカナダ、オタワで準備会が開かれ、本プロジェクトはその段階から参加してきた。
設立大会には、およそ世界60カ国から200名が参加した。参加者の多くは大学の研究者であるが、ILO、IMF、世界銀行、NGOなど様々な実務の分野からも多くの人々が参加しており、理論、実践の両面にわたる議論が繰り広げられた。また、アフリカ、ラテンアメリカなどからも多くの研究者が集まった。日本からは、本プロジェクトの3名の他、東京大学の城山英明氏が参加した。
このネットワークは、世界各国の大学、シンクタンク、政府機関、NGOでグローバリゼーションを研究している研究者、研究センターを網羅し、世界的な協力や相互交流のネットワークを構築することを目指すものである。設立大会では、それぞれの研究センターやプロジェクトが具体的にどのような研究活動を行っているかについて、自己紹介風の報告を行った。参加者は、政治学、国際関係、社会学、経済学など専門を異にしていたが、市場原理の浸透や不平等の拡大という意味でのグローバル化に対抗し、人間の尊厳ある生存、環境など非市場的価値の擁護をいかにして推進するかという共通の関心から出発していた。我々も、今まで2年あまりの研究活動について紹介し、その幅広く精力的な活動に対して、高い評価を得た。また、今後の研究活動の展開の中で、多様な協力の可能性が議論された。実際、これから国際的な共同研究を進めていくべきパートナーを多数見つけた思いである。
なお、このネットワークの運営に関して、山口がアジア地域代表の理事(member of steering committee)に就任した。次回の大会は、来年8月末に、セネガルのダカールで開催される。 |
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No.14 2004年08月03日掲載 |
11回フレームワークセミナー「首相と政権党の関係の日英比較: .
1970年代における石油危機への諸対応を事例として」
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高安健将●北海道大学大学院法学研究科リサーチフェロー
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7月22日、2004年度第3回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は高安健将氏(北大法学研究科リサーチフェロー)。
今回の研究報告では、70年代の石油危機における日英政府の政策対応策を素材として、両国の首相の政策評価が「なぜ正反対の評価を受けているのか」という問いを主題に議院内閣制の政策決定力に関しての比較分析が行われた。分析においては、首相の権力資源に注目した権力資源分析と、首相の政策を支援・拘束する存在としての政党を対象とした政党制分析に眼目がおかれた。また高安氏の報告では、政党と首相をひとつの委任関係としてとらえ、その関係をPA理論(Principal -Agent理論)によって執行府内の政策決定ゲームを検討した。報告では、PA理論によって、首相の政策決定過程を、首相が執行府内の政策選考に自身の政策意見を資源動因により介入・反映させる過程を「最適行動」とした。70年代の石油危機期における両国政府の対応政策を、対外政策・財政政策・国内石油政策の政策に注目しそれらの政策における首相の府内での最適行動を比較・分析した。
これらの分析により、両国の権力資源の比較や情報を巡る執行府内の権力構造、などの違いが確認された。分析対象となった政権は、英国がE.ヒース首相、Jキャラハン首相、日本では田中首相、大平首相の時代のものであった。これらの分析で、両国の首相と政党の関係で、政党が首相選考に基準を持っているかどうか、政党が持つ政府内をめぐる組織関係、政党内の組織構造、などの点で両国政府の政権党に違いがあることが確認された。
質疑においては、報告が議院内閣制における首相のリーダーシップ論を科学的に検討する実証研究として重要である点が確認され、議院内閣制の内在的批判として、同時代の他の政策など政策評価をどう見るか、PA理論の意義と限界について、レジティマシーの違いの比較や党組織の問題をどのように分析するか等いくつかの論点が参加者により確認された。 |
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No.12 2004年06月04日掲載 |
第10回フレームワークセミナー「ガバナンス・インデックス―ガバナンスの国際比較」
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井上久志●北海道大学大学院経済学研究科教授
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5月27日、2004年度第2回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は井上久志北大経済学研究科教授(研究分担者)。
今回の研究報告では、世界銀行が1996年から2002年まで隔年でまとめた「ガバナンス・インデックス」を素材として、世界銀行のガバナンス・インデックスの妥当性、インデックスの構成要素である変数の検証、世界銀行の定義するガバナンスの政治的な側面の解明などを、報告者の計数分析やクラスター分析により検証した。また報告者の論点として、各国ごとのガバナンスの分析ではなく、グローバル化する過程の中でトランス・ナショナルなレベルで展開されるグローバル・ガバナンスの層は、世界銀行のガバナンス・インデックスからは明確に分析できないこと、またガバナンス・インデックスはアメリカのODAの被援助国の基準として採用されており政治的な判断材料として機能している点などが報告された。これらの論点は、参加者の質疑を通し今後の課題に関する検討を行った。 |
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No.11 2004年05月21日掲載 |
学術創成研究プロジェクト企画シンポジウムの抄録
ACADEMIA JURIS BOOKLET No.9, No.11発刊
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2003年に学術創成研究プロジェクト主催で行った2つのシンポジウムの記録が、法学研究科附属高等法政教育研究センター発行のブックレット(A5版・非売品)として発刊された。残部に余裕のある間は、学外の方にも配布可。ご希望の方は、切手を貼付した返信用封筒を同封のうえ、郵送にて学術創成事務局までお申し込みください。 |
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ACADEMIA JURIS BOOKLET |
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No.9 「環境と市民ガバナンス」 今泉みね子、姫野雅義、宮本融、森哲郎、小野有五(編)
※2003年1月31日開催のシンポジウム「市民の環境ガバナンスと環境教育」の模様を収録。 |
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No.11 「先住民族のガバナンス−自治権と自然環境の管理をめぐって−」 アイザック・ビシャラ、マーセリーン・ノートン、ロジャー・スカーヴィック、小野有五(編)
※2003年8月3日開催、同タイトルのシンポジウムの模様を収録。 |
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なお、切手代は1冊の場合200円、2冊の場合は240円になります。 |
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No.10 2004年04月22日掲載 |
第9回フレームワークセミナー「2003年度フレームワーク・セミナーのまとめとガバナンス概念
−Jon Pierre and B.Guy Peters, Governance, Politics and the State の枠組みを手がかりに」
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宮本太郎●北海道大学大学院法学研究科教授
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4月8日、2004年度第1回目のフレームワーク・セミナーが開催された。報告者は宮本太郎北大法学研究科教授(研究分担者)。
今回の研究報告では、これまでのフレームワーク・セミナーのまとめとして、北欧の論客であるJon Pierre, Guy Petersや、フィンランドのシンクタンクであるオーボア・アカデミーのガバナンス論に立脚しつつ、今まで議論されてきた「ガバナンス概念」の論点の整理を試みた。主な論点は、過去8回のセミナーの中でとりあげられたRhodes, Kooimann, Cohen and Rogersらの様々なガバナンス論は、「ガバナンス概念の捉え方(歴史局面に立脚した概念か、あるいは普遍的概念か)」や「ガバナンス概念の位相(構造・過程・分析枠組み)」に照らしてみたとき、どのように整理・統一されるのか。またガバナンス論をめぐる3つのシナリオ<「国家のコントロール維持再編」「他のレジームへの統治委譲」「個人の影響力増大」>を考えたとき、プロジェクトとして今後どのようなスタンスをとるべきか、等である。後半は、参加者の質疑を通しこれらの課題に関する検討を行った。
尚、今回のセミナーより、本プロジェクトでは新しい研究支援員3名をメンバーとして迎えいれた。詳しくは、メンバープロフィールページを参照されたい。 |
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No.9 2004年03月24日掲載 |
「東アジアにおける行政文書公開の現状と行政研究の展望」企画出張報告
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当プロジェクトの一企画、「東アジアにおける行政文書公開の現状と行政研究の展望」のメンバーである、魚住弘久(北海学園大学法学部助教授・当プロジェクト研究分担者)、川島真(北海道大学法学研究科助教授)、清水敏行(札幌学院大学法学部教授)、寺田英司(当プロジェクト支援員)らは、2004年3月16日〜21日にかけて行政文書公開に関する調査と関連ワークショップへの参加のため、台湾出張を行った。メンバーは、滞在中、台北の国史館本館、国民党中央党部党史館、中央研究院近代史研究所档案館、南投県中興新村の国史館台湾文献館などを視察し、各文書館の担当者から、档案(文書)の保存と公開について説明を受けるとともに、国家的プロジェクトとして進められつつある档案のデジタル化作業を見学した。また、3月19日には中央研究院近代史研究所で開催された、北海道大学法学部と台湾の各大学の大学院生によるワークショップ「新史料與新解釋―數位(デジタル化)時代的史学研究」に出席し、史料のデジタル化によってもたらされる研究上の長所と短所について知見を深めた。今回の調査成果は、本HP上で近日公開される予定のコンテンツ「台湾の行政文書アーカイブ(仮称)」に活かされる。また、当企画では、この台湾を第1弾として今後も日本を含む東アジア研究に役立つコンテンツを作成していく予定である。 |
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No.8 2004年02月19日掲載 |
公開シンポジウム「韓国政治の変貌を読み解く―盧武鉉政権誕生の背景と政治課題―」
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2月17日(火)、日韓フォーラム・シンポジウムシリーズの2回目として、韓国から金萬欽(キム・マンフム)カトリック大学教授を招き、公開シンポジウムを行った。
金教授の報告では、盧武鉉政権が誕生した要因や現在直面する危機についての分析に続き、氏自身も関与した参与連帯を含む韓国市民運動についての言及がなされた。
後半の質疑応答では、宮本太郎北海道大学法学研究科教授(本プロジェクト研究分担者)が比較政治の観点から、清水敏行札幌学院大学法学部教授が韓国政治の観点からコメントを述べ、議論を交わした。
コーディネーターは魚住弘久北海学園大学法学部助教授(本プロジェクト研究分担者)。 |
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No.7 2004年02月16日掲載 |
公開シンポジウム「帝国/グローバル化時代のデモクラシー」報告
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「21世紀はデモクラシーの世紀かU―帝国・グローバル化時代のデモクラシー―」と題されたシンポジウムが、2004年2月7日札幌コンベンションセンター特別会議場にて行われた。会場には150名を超える聴衆が集まった。
シンポジウムでは、遠藤乾・北大法学研究科助教授(本プロジェクト研究分担者)の趣旨説明に続き、ロナルド・ドーア氏(ロンドン大学名誉教授)による「グローバル化する世界における民主主義への脅威」と題された基調講演が行われた。また田中秀征氏(元経済企画庁長官)により、「<グローバル化/帝国>の中の日本の集団安全保障」と題し、最近のイラク派兵の問題を中心とした、日本の安全保障政策を基にした民主主義の課題が報告された。ガーストル氏(米国メリーランド大学教授)からは、「グローバリゼーションとアメリカン・ヘゲモニーの時代における民主主義への脅威」と題した報告が、中村研一氏(北大法学研究科教授・研究分担者)からは、「帝国を抱きしめて−世界権力と民主主義の将来」と題する報告がなされた。
上の報告をもとに、ディスカッサントの川崎修氏(立教大学教授)、遠藤誠治氏(成蹊大学教授)、山崎望氏(日本学術振興会研究員)と会場からの質疑を交え、円卓討論が行われた。 |
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No.6 2004年02月12日掲載 |
ドーア文庫開設
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北大附属図書館本館書庫・西4階の大型コレクション室に、このほど「ロナルド・ドーア文庫」が開設された。ドーア氏は現在ロンドン大学名誉教授で、海外における日本研究の第一人者として知られており、2月7日に本プロジェクトで開催したシンポジウム「帝国/グローバル化時代のデモクラシー」にも基調報告者として参加いただいている。
文庫は、ドーア氏の蔵書のうち、日本研究に関連した書籍401点を学術創成研究関連の資料収集の一環として譲り受けたもので、2月9日には、図書館職員・当プロジェクト関係者等立ち会いのもと、オープニングセレモニーが行われた。(写真は左より、研究代表者・山口二郎、ロナルド・ドーア氏、井上芳郎附属図書館長)
※この文庫の資料は、学内関係者には貸し出し可、一般市民は館内閲覧可となっています(詳しくは附属図書館にお問い合せください)。
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No.4 2004年01月29日掲載 |
第8回フレームワークセミナー「グローバル・ガバナンスにおける部分共同体の形成権力」
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中村研一●北海道大学大学院法学研究科教授
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本プロジェクトでは、1月27日午後6時より、第8回フレームワークセミナー(プロジェクトメンバー中心の研究会)を行った。報告者は研究分担者の中村研一教授、タイトルは「グローバル・ガバナンスにおける部分共同体の形成権力」。
報告では、グローバル・ガバナンスの概念を整理し、主権国家のフロンティアで生じる新たな権威空間に認識象徴としてのガバナンスを見て取ったあと、そこでの共同体形成権力の主体について3つのシナリオが示された。また、その空間を生じさせた主権国家の側から、その現実体としての軍事力とそれが担保したシティズンシップ(とそれを剥奪された難民)についての議論がなされた。 |
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No.3 2003年12月22日掲載 |
国際シンポジウム「いま国連の役割を考える−歴史との対話」報告
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12月20日(土)、21日(日)の両日にわたり、当プロジェクト研究分担者・半澤朝彦(北大法学部専任講師)コーディネートによる国際シンポジウム「いま国連役割を考える−歴史との対話」が開催された。
会場の北大学術交流会館には国内外から招かれた22名のパネリストをはじめ、約80名の国際政治学者・実務家らが集まり、5つのセッションを重ねる中で、国際政治史における国連の位置づけの再検討を試みた。
また、20日のスペシャルセッションには、600人をこえる市民や学生もつめかけ、緒方貞子氏(前国連難民高等弁務官)、サー・マラック・グールディング(元国連事務次長)による基調講演に熱心に聞き入った。 |
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No.2 2003年12月02日掲載 |
国際シンポジウム「The Role of the United Nations in International Politics」開催のお知らせ
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来る12月20日(土)、21日(日)の2日間、北海道大学学術交流会館において標記の国際シンポジウムを行います。この会議では、国内外より第一線の論客を多数お招きし、国際政治学的に国連史を検討する予定です。緊迫した現在の国際情勢を考える上でも、多くの示唆を得る機会になると思われますので、さまざまな研究関心を持つ皆様のご参加をお待ちしています。
※なお、国際シンポジウムの各セッションは英語で行われます。
また、この国際会議の一環として、12月20日には緒方貞子氏(前国連難民高等弁務官)、サー・マラック・グールディング(元国連事務次長)による講演会を開催しますので、一般の皆様もぜひふるってご来場ください。
※緒方氏(写真左)の講演は日本語で行われ、グールディング卿(写真右)の講演については和訳テキストが配付されます。 |
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12月20日(土)の16:00〜18:45の講演会の模様をインターネットLIVE中継致します。 |
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No.1 2003年11月21日掲載 |
●2003/11/8 公開シンポジウムの報告
本プロジェクトでは、11月8日午後2時より札幌市白石区東札幌の札幌コンベンションセンター特別会議場にて、公開シンポジウム「21世紀はデモクラシーの世紀か −ポスト戦後日本とデモクラシー−」を開催した。
シンポジウムでは、米国コーネル大学アジア研究科教授の酒井直樹氏、オーストラリア国立大学教授・国際基督教大学客員教授のガバン・マコーマック氏、法政大学法学部教授の杉田敦氏をパネリストに迎え、代表民主主義の空洞化や市民社会の成熟が交錯する「戦後日本」の民主主義の方向性について、3時間半にわたり、報告・討論を行った。
会場には、一般市民、学生ら120名ほどの聴衆がつめかけ、日本思想史、歴史学、政治理論等、広範な視角からの提言に熱心に耳を傾けていた。 |
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コーディネーター:研究代表者 山口二郎
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