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「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告
 
 
脱「国依存」で北海道再生 =リスク受け止める気概を=
宮脇 淳
 
 

 統一地方選まで残すところ1ヵ月足らずとなった。経済低迷、財政危機、市町村合併などさまざまな問題が輻輳(ふくそう)する北海道で、自律的な政策議論とその具体化が今ほど求められている時はない。その実現のため、今後の道政に本質的に求められることが三つある。

「意思決定の分権」必要

第一は、自ら創(つく)り上げる「固有権としての自治」の追求であり、「意思決定の分権」を求める姿勢である。日本も含めた大陸型の地方自治の場合、中央政府が自らの集権的支配構造の一部として地方制度を形成している場合が多い。このため、「与えられた自治」としての認識が強くなる。また、自治と行政の問題が未分離となり、機能や権限、そして財源を国からいかに譲り受けるかについて地域や住民の問題としてではなく、行政の問題として議論されやすい。

北海道もその例外ではない。地方分権の推進には、地方自治体への財源や権限の移譲が不可欠である。しかし、財源や権限の移譲がどんなに進んでも、最終的な意思決定権限などの多くが国に留保されていれば自治は常に不安定とならざるを得ない。

政策評価に基づく公共事業の見直しなども同様の状況にある。地域自らが創り上げる固有権として自治を理解し、地方分権議論、そして日々の政策形成、執行において意思決定の分権を常に志向しなければならない。それにより、国への過度な依存から脱した新たな制度や政策、再生のシナリオを自律的に描き実行する行動が可能となる。

地域の資源を有効活用

第二は、意思決定の分権によって脱「均衡ある国土の発展」を本格化させることである。北海道は大きなステージ変化に直面している。そのステージ変化とは、脱「均衡ある国土の発展」である。均衡ある国土の発展政策による資源の同質化(地域の東京化)ではなく、北海道の異なる資源を重視し、地域価値に根ざした経済社会システムを自ら形成することで北海道は再生する。

均衡ある国土の発展政策は、北海道の経済社会水準を高めてきた。その一方で、多くの北海道の異なる資源を失ってきた。日本全体にとっても異なる地域価値に根ざしたさまざまなシステムが存在することにより、グローバル化によってもたらされる多くのデメリットを克服することができる。地域価値に根ざしたシステムの形成が実現するか否かは、今後1世紀の北海道そして日本の方向性を位置づける問題である。

従来のチャンスは脅威

第三は、以上の自律的政策の形成と実行にあたり北海道庁の官僚としての行動様式を大きく変えることである。右肩上り成長、そして均衡ある国土の発展を前提とした道庁の行動様式は、これまで多くの成果をもたらしてきた。しかし、外部環境が本質的に変化する中で従来のチャンスは脅威となり、脅威はチャンスとなる転換期を迎えている。こうした転換期においては、予算編成や執行、人事など行政組織の統制要素も含め官僚行動システムを大胆に変える必要がある。それにより基礎自治体たる市町村への行政資源の移転、民間とのパートナーシップ、地域に根ざした道政府をはじめて実現することができる。

意思決定の分権とは、自ら意思決定し自ら行動する決意である。しかし、意思決定の分権に大きな壁となるのは、まさに「自由」である。現実には、選択肢を自由に選べる事を望まない体質が根強く存在する。選択肢を自由に選べる状況になると自ら意思決定をしない自由を選ぶ。その結果、「与えられた自治」の体質が深まる。自由な意思決定には常にリスクが存在する、そのリスクを自ら受け止め選択できる体質が固有権の自治そして北海道の再生に不可欠である。

(北海道新聞2003.3.16【 今を読む 】)