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「大都市圏と地方における政治意識」世論調査報告
 
 
03・乱立選挙--政策理念の違い見えず
宮脇 淳
 
 

■ 旧来型は限界

地域のニーズを吸い上げ、実現を目指す旧来型政治の限界が、財政危機などで誰の目にも見えて来ました。そこで、既成政党による秩序立った候補者選びも通用しなくなったのが乱立の要因だと思います。

また、97年の拓銀破綻以降、雪印食品の偽装牛肉事件、BSEの発生、北海道開発局をめぐる鈴木宗男・衆議院議員の受託収賄事件など、「北海道ブランド」が次々と崩れました。体制が壊れた終戦直後に似た社会状況にあるのかも知れません。事実、戦後初の公選の知事選(47年)では6人による乱立選挙となりました。

■ 物差しはなし

政策理念の違いが残念ながら見えません。道政や市政に対する各候補の「物差し」が違うのかと言えば、濃淡はあるものの基本的には「ない」と思います。

たとえば公約で雇用の確保など具体的な数値を挙げます。それは政策理論ではなく、希望的理論ではないのか。実現性のある公約を示すなら、器(財政規模)はもう増えないため「何をやめるか」をまず提示しなければなりません。

その決断が無理なら道民や市民に新たな負担を求めるほかありません。そうした訴えが公約の担保になる。選挙戦の当事者からは「きれいごと」と言われるかもしれませんが、選択軸が示されない中では有権者に違いは見えて来ません。

■ 見直しの引き金を

行政改革の視点から「官から民へ」との言葉もよく聞きます。しかし、職員の行動様式を変

えない限り、行政は何も変わりません。私は道の政策評価にかかわっていますが、事業の見直しを指摘する一方で、行政側は将来見直しが必要となりそうな事業を平気で立ち上げます。

行革を本気で進めるなら、システム全体の見直しを射抜くトリガー(引き金)を有権者に明示することが肝要だと思います。これからは有権者や議会にすり寄るのではなく、きちっとした物差しを示し、質のいいプロセスを共有するなどして、政策の是非についての論議を進める姿勢が不可欠と考えています。

■ 選ばない自由

最近言われる「無党派」「脱政党」が何なのかは正直分かりません。ただ言えるのは、「脱政党、無党派は何か」が今回の選挙で問われると思います。

北海道の場合は知事選でも市長選でも過去は選ぶ人が限定されていました。今回のように「自由に選んでください、選択肢もたくさんあります」と言われた瞬間に、「選ばない自由を選んでしまう」という事態が起きかねません。そうなれば民主主義の危機です。

(朝日新聞2003.4.3【 なんでだろう? 】)