説得力不足
結果的には「無党派」と呼ばれる人々が選挙に行かなかったからだと思います。厳しい言い方かもしれませんが、各候補者の皆さんは「無党派」ではなかったということです。それぞれの舞台で既存の票を集めただけにとどまりました。
長野県知事、横浜市長など、既存政党に立ち向かう無党派層に押し上げられた候補が当選する現象が各地で起きていますが、札幌市では起きませんでした。結論から言えば、無党派の支持を広めるカリスマ性、問題への共通軸を各候補とも持てませんでした。訴えでは、「市役所にスタジオを作ります」という個別政策の技術論、「役所の意識改革」という抽象的なイメージ論ばかりで、双方とも得票に結びつく説得力を持ちませんでした。違いが有権者もわからないため、「誰がなっても」と見られました。
最後のチャンス
札幌市政は今後10年、15年間、今の行政運営を続けても何とかやってゆけます。借金体質の度合いを示す起債制限比率は10.5と、全国12政令指定都市の中でも2番目に余裕があり、道庁と比べ財政の弾力性がはるかにあります。しかも、道内各自治体は過疎化に悩む中で、人口の集中も続き、横浜vs.川崎、京都vs.大阪のような競争関係もなく、独占市場を形成しています。
右肩上がりがまだ続けられる都市ですが、実態は過疎自治体から人を吸い寄せ、成長する「日銭経済」で成り立つ都市。これが札幌の実態と思います。
問題はこうした状況は近く終わるということです。課題は次世代に何を残せるのか、だと思います。そうすると今は改革のラストチャンスではないでしょうか。こうした視点での問題提起と解決の道筋を示すことが、次の選挙に臨む候補者にとって必要と考えます。
政党勝負
今回の選挙結果を受けて「無党派」が動かないという構造が選挙関係者に見えたはずです。また、それぞれの候補のカリスマ性も測れました。そうなると、水面下に隠れていた政党が次の選挙では表面に顔を出す局面が出そうです。
しかし、余り目立っては寝ている無党派を呼び起こすことになるので、知事選挙と似たような戦術を既存政党はとるのではないでしょうか。旧態に戻った少数激戦を予想します。
そうなると、別な意味で「無党派」がまた問われることになるでしょう。行き着く場所がわからず漂流すると、「先祖帰り」という選択が出現します。われわれ行政学者はこれを「逆機能」と呼びます。
今の北海道や札幌市が置かれた政治、経済状況を考えると、「一番まずい選択」と、私は考えています。
(朝日新聞2003.4.15【 なんでだろう? 】)
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