北海道庁は、「新行財政システム改革」を2003年度から3ヵ年計画で実施する。道庁内の意思決定を迅速に行い、仕事の量や質の変化に柔軟に対応できるグループ制などを本格導入することで、組織の効率性や有効性を高めることを目的としている。
危機的状況の道庁財政
道庁の財政は、すでに危機的状況に陥っている。このため、3ヵ年で改革姿勢を示したことは評価に値する。しかし、機構改革はスタートでありまたゴールである。機構改革は、行革にとって不可欠な要素であると同時にそれだけでは何も生み出さない。
スタートとゴールを結びつけ、機構改革に「魂」を注ぎ取り込む取り組みは何か。第一は、道庁内部の意思決定と官僚行動メカニズムを大胆に変革することであり、第二は、道庁を取り囲む既得権構造、そしてマッチポンプ型利益誘導体質を変革することである。
第一の道庁内の意思決定、官僚行動様式の変革は、機構改革の「核」である。
いかなる機構改革を実施しても、道職員の従来の官僚的行動様式が変化しなければ成果を見いだすことはできない。行動様式の変革を伴わない機構改革が従来の行動様式を水面下に追いやり、外部からは分かりづらい中で組織をむしばんだ例は官民を問わず少なくない。
技術系職員が中心担う
三重県、岩手県、高知県など先進的取り組みを展開している自治体は多い。その成果に対する評価は別として、いずれにも共通する点がある。内部改革の核として財政・人事の両部局の変革を軸におき、予算編成・予算執行、人事システムを徹底して見直す取り組みをしていることである。機構を変えても予算や人事という官僚行動を規定してきた大きな存在が従来通りであれば組織はさらに硬直化しかえって非効率、不透明な存在となる。
そして先進自治体の多くで生じた現象は、改革への壁として最後まで存在し続けるのが、改革推進の役割を担うことが多い総務部局自身だという事実である。総務部局は、前例と調整を柱にエリート組織として行政内に大きな影響力を行使してきた。それだけに従来の位置づけと機能を見直す改革とは、本質的にパートナーシップを組みづらい存在である。道庁の改革推進組織も総務部局の下に設置される。
そのことを、改革に対し否定的な姿勢と解するのではなく、道庁の財政や人事も含めた総務部局自身が他の部局に先駆け、自らの行動様式を率先して変革することを表明したものと受け取らざるを得ない。
加えて、注目すべきは高知県や岩手県など改革に一定の成果を生みだした自治体では、改革推進の中心的役割を土木や建設といった技術系職員が担っていることが多いことである。批判されることの多い公共事業関係部局の職員が危機感を持って改革に取り組むとき、成果もより大きなものとなる。
業界・道民意識も課題
第二の道庁を取り囲むさまざまな既得権構造、そしてマッチポンプ型利益誘導体質を変革することは、構造改革の「肝」である。
道庁を批判することは簡単である。しかし、道庁改革は道庁だけでは実現しない。道庁改革と業界・道民意識の改革は、表裏一体の課題である。人件費を含め財政をいくら切りつめても道財政再建はもちろんのこと、道政の効率性や有効性は高まらない。道庁と企業、道民との役割分担を真剣に議論しなければならない。
その際、大きな役割を果たすのは道議会である。知事選を通じて道議会の答弁調整が問題とされた。しかし、問題の本質は答弁調整の是非ではない。答弁調整をやめても予定調和型の質問と答弁を繰り返すことは可能である。そうした手段の是非以上に、前例と調整に拘束されない議会も含めたオープンな政策議論が必要とされる。そうした議論の改革は、道庁そして道民をも動かす要因となる。
道庁改革、それは道民全体に投げかけられた課題であり、改革のために示された3ヵ年を、失われた3年としてはならない。
(北海道新聞2003年5月26日【 今を読む 】)
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