昨年秋以降、道州制先行実施の議論が北海道の大きな政治的テーマとなっている。高橋知事は、昨年12月19日の経済財政諮問会議で道州制に対する基本的考え方を提示した。この日を境に、先行実施は自民党のマニフェスト(政権公約)から政府全体の課題へと位置づけを高めた。それから2ヶ月弱、先行実施の議論は、さらに新たな段階を迎えつつある。
先行実施を考える際に次の三点が重要となる。第一は、道州制と道州制特区の関係を明確にすることである。
将来を見据えた戦略で
日本全体への道州制導入の是非やその姿については、すでにさまざまな検討がはじまっている。その中で、北海道に今必要な点は、将来の道州制の姿を見据えるとともに、広い面積を有する北海道での、新たな地域ネットワークを形成する特区プログラムをまず提示することである。
道州制特区は、地域再生を含めた他の特区とは異なる独立した構想であり、三位一体と地域活性化を結びつける包括的位置づけにある。百億円の補助金見直しは重要である。しかし、その数字に矮小(わいしょう)化することなく、最終的な理想を実現するためのメリハリある戦略を北海道自らが描き出すことである。予算編成、計画策定等に向け、特区構想の提示では、今年4月ごろに第一段階の大きなヤマ場を迎える。
第二は、目的の明確化である。道州制特区の本質的目的は、北海道の活性化にある。広い面積、異なる自然を有する北海道では、本州の狭い都府県を前提とした規制や補助金、行政執行の形態は必ずしも適していない。
広い面積に適した行政
この見直しを行い、広い面積を前提とする道州の地域生活・経済活動に適した新たなネットワークを将来的に形成する。規制や補助金の機能を見直すことは、その執行を支えてきた行政の機能を見直すことにも結びつく。
道州制議論では、道庁と開発局の統合など二重行政問題が常に先行する。しかし、行政組織を統合しても、それだけでは地域生活・経済活動の活性化は実現しない。地域の活性化を通じて北海道の力強いブランドが形成されなければ、税財源移譲などの三位一体議論においても北海道は常にデメリットを受ける。このデメリットを跳ねのけるチャンスでもある。
第三は、道内分権の具体化である。道州制特区は、北海道内の規制、補助金、行政執行について地域における選択の自由度を高めるものである。その自由度は自動的に与えられるものではない。補助金の一括交付化を実現しても、道内の各地域や事業に対していかなる理念と基準で配分するか、北海道自らが検討し設定しなければならない。
道内地域ごとに活性化
加えて、道州制特区が札幌一極集中を加速させるのではなく、道内地域ごとの活性化に資するものでなければならない。それには、道内分権の姿を道州制議論と同時に具体的に描く必要がある。
北海道では「自立」が叫ばれて久しい。自立とは、自ら判断し決め行動することである。リスクを伴わない自立はない。リスクを自らコントロールする体力が必要となる。
道州制、道州制特区議論に対し、北海道特例枠の縮減・廃止、小泉政権の余命など多くのリスクが指摘される。この指摘は、正しい。しかし、こうしたリスクをいかに克服するかが戦略である。リスクを克服できないところに自立は訪れない。
また、道庁だけでなく政令指定都市たる札幌市、市町村、経済界、そして道民も含め地域全体としての政策力が立証できる機会でもある。
そして、道州制特区は、北海道だけの特権ではない。北東北三県が合併し「道」となる方向性を示せば、同じような特区構想の活用が可能となる。その時に、北海道も具体的提案とその実行を通じて北東北と連携的競争が展開できることで地方分権は力強いものになる。
(北海道新聞2004年02月15日【 今を読む 】)
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